70話 戦況報告
地上の影響かは定かではないが、
空は太陽が隠され暗く、まるで世界の終わりを告げるような雰囲気を表している。
ポツポツと弱い雨が降り、そして止むことを繰り返している。
地上では雷のような光と轟音が絶え間無く続き、そして、光と同等の暗闇が動いていた。
施設の中にある指令所では各手の空いた者からカイルへの被害報告がなされていた。
その報告を受けカイルは頭を抱え、天井を見上げていた。
エミリーの報告によると死者、行方不明者が全体の5割に達し、負傷者も残りの7割に達している。
これはもはや戦略上での敗北を意味していた。
各国代表の指揮官が生き残っているのがせめてもの救いだが、そのうち1人は重傷で動けない状態である。
「撤退と被害もわかったが、再突入までとの位かかるんだ?」
エミリーは目を丸くしてカイルを見つめていた。
「・・・」
「・・・」
しばらく2人は見つめあいカイルのため息とともにその静寂にも幕が下りた。
「失礼しました。再突入までの時間ですが・・・現状7割以上の被害が出ており、このまま再度攻勢にでるには・・・・・・難しいと思われます。」
エミリーは若干言葉を振るえさせながら答えていた
「だが・・・この山の光を見ろ・・・あいつ等は今も戦ってるんだ」
カイルのモニターに映っている画像をエミリーにみせた、無論エミリーもそんなことはすでに理解の範囲内にある。
しかし、7割以上の損害の今再度攻勢に出たところで犬死は目に見えている。
本国の援軍を待ち、再び再編成をし、万全の状態で挑むべきだが・・・そんな時間が果たして残されているのかエミリーにはわからなかった。
返事のないエミリーを見て、カイルは何かを決意したかのように席を立った。
「現時間より1時間の後、有志を募り彼らへ援軍を編成する!」
「将軍!それは・・・あまりにも無謀な・・・」
「俺らが・・・行った所で足手まといにしかならないかも知れん・・・だが!・・・彼らの盾になってやることならできるかもしれんだろ」
「・・・」
エミリーは目を閉じ、了解しましたと足早に指令所から出て行った。
早朝から始まった作戦からすでに8時間を経過しており、山麓には大きなテントが幾つも作られ、
撤退を余儀無くされた兵士と魔術師達が休養と治療を受けている。
重傷の者は赤いタグがつけられ治療の順番をまっている。
レイスはその状況を確認しながら深いため息をついていた。
「改めて確認すると被害状況は相当ひどいですね」
「再度頂上に送れる援軍を再編していますが・・・ほとんどの者は魔力を使い果たした状態でもう少し時間を要します~。レイスさんも一度お休みになってください~。」
補佐官であるリーネ自身も休みなく働いていた。
「あの子達に全部任せねばならない自分が悔しいですよ」
冷静なレイスが拳を強く握りしめていた。
リーネはそんなレイスを見るのは初めてであった。
いつも冷静沈着で何事にも動じず、そんな彼を見てきたリーネは驚きを隠せないと同時に同じ思いをいだいているのは、レイスや他の指揮官や兵士、魔術師だけじゃなく自分もその悔しさを感じていた。
撤退の最中には、子供達だけ置き去りにするのに大声を張り上げて反対するものもいたくらいだ。
誰もが悔しくしかし自分達がそこにとどまったとしても彼らの足手まといにしかならないことも同時に理解もしていた。
明らかに指揮官クラスの魔術師と比べてもあの子達は桁が違うと。
彼らならやってくれると心の底で期待もしていたのだ。
「どうか無事で・・・」
リーネは祈るようにその言葉を紡いでいた。
テントの中の1つに最上位召喚を使い重傷を負ったアリッサをレイラが見舞いにきていた。
アリッサはレイラがくると起き上がろうとしたが、レイラはそれを手で制止してそのまま寝ていてと促した。
「アリッサ具合はどう?みた感じは酷くやられてるけど」
「あら、、、珍しく心配してくれるのかしら」
レイラは苦笑いしながらアリッサの手をとりさすっていた。
「ロック君のダメージもアンタが引き受けたね?」
アリッサはテントの窓の外から見える山をみて目を閉じていた。
「あら・・・そんな大層なことじゃないわ。ただあの子達はこの戦いの要ですものあそこ終わらせるわけにはいかないでしょ」
「アンタはホントに・・・。」
「あら・・・そんなことより戦局はどうなってるの?」
レイラはいまの状況を端的に話し悔しそうな顔を話の所々に出していた。
「あら・・・私達もやれることやったわ。あとは元気でもどってくることを祈りましょ。ただ1つの心配はあの子ね・・・。・・・ちゃんと戻ってくるのよ。」
「それとね・・・アンタには言うなと言われていたんだけど、あと30分後には決死隊が再編され、戦場に投入される予定になってるわ」
アリッサはレイラを睨みつけ悔しそうな表情をみせたあと、深く深呼吸をし、自分を落ち着かせていた。
2人はそのまま無言で少しの間外の山をみていた。
山からは未だ激しい音が聞こえており、尚也達の戦いが今もまだ続いているのがわかった。
「あら・・・そのメンバーに私は入ってないのかしら?」
「アンタは動けないでしょうが!」
「あら・・・あなたが私を背負って行けば召喚の1つや2つ出来るわよ」
「あとはアタイ達に任せなって!ちゃんと連れてもどってくるわよ」
アリッサは目を瞑り何かを考えた後、腕から腕輪を外し、レイラの手にそっと乗せた。
「この子を渡しておくわ。どうしようもないときに投げなさい。きっと助けになるわ」
「これは?」
イタズラをする子どものような顔で秘密と口の前に人差し指をかざした。
「アリッサ・・・ 口癖のあらってのがぬけてるわよ」
「あら・・・」
2人はクスクスと笑だしていた。
一通り笑終えた後に、レイラはいってくると言い、テントを出て行った。
そして、その後ろ姿を見送ったあとアリッサの瞳から幾つもの雫が流れ落ちていた。
憤りや悔しさそして悲しさが彼女の中に渦巻いていた。
その30分後には有志で集まった魔術師や兵士が恐らくは帰ってこれないだろう戦いにその身を投じた。




