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66話 少女の情動

尚也達が合衆国へと飛び立った日、空港の屋上に1人の少女が佇んでいた。


本当なら顔を見て見送らなければならない位置にいて、常に彼を支えてきた少女…。

自分が臆病で卑怯で…それを彼に見抜かれたくなくて、彼を突き放すことしかできなかった。


私は、彼の周囲の状況に、一人置いて行かれていることに気づいてしまった。

この2年近く、私は一番近くで彼と共に過ごしてきた。

いまはどう…。

あの人の傍にはシェラ・紗菜がいる…。

彼女達は、私と同じ年齢なのに魔術学園に通い、尚也の幼馴染であり戦友でもある。

そして、見ていればわかる…彼女達は尚也に友以上の好意を持ってもいる。


私は一体どうすればいいんだろうか…。

一体どうしたらいいんだろうか…。

私には魔力もない…まして一緒に戦うことなんてできやしない。

笑顔で送る?

私に、友達がそんなことを言っていたが、そんなのってあり得ないよね?

学校の侵入者の時だって、紗菜が来なかったら死んでたんだよ…。

力を戻したからって、多くの魔術師が手も足も出ない戦地に送られる。

私は…何もできない…もう尚也君には必要とされない…。


昨日まで首に掛かっていたはずのネックレスのことを思い出し、胸に手を置きプレゼントしてくれた時の

事を思い出していた。


あの時の彼は、本当に嬉しそうに私にくれた…今までの感謝も込めてと…

嬉しかった…でも心の底で何かが訴えていた。

私は彼に感謝されるべき存在なのだろうか…中学に入って孤独に身を置く彼に惹かれた…

それは本当に同情とは別な感情だっただろうか…。

私は彼が好き。

彼の周りに人が集まりだした時、自分の立ち位置がおかしくなってきた。

私は常に嫉妬していたのだろうか…。

ユウちゃんが消えた時…私は尚也君よりユウちゃんに帰ってきてほしいと心から願ってしまった。

きっと…。気付かれたから…あんな問いを受けたんだと思う。

なんて罪深いのだろうか…。

尚也君よりユウちゃんを選んだのに…まだ尚也君を独占したい自分がいる。

そして、周りに嫉妬し、尚也へとそれをぶつけた…。

私は、その場にいられなくなり逃げたが、それを追い掛けてきた尚也にネックレスを投げつけた。

彼の顔を見た時、私はしてはならない一線だったんだなっと気付かされた…。


本当に私は一体何をやっているんだろうか…。


「みさきちゃん…何で?どうして?」


不意に声を掛けられ振り返った。


「ユウちゃんか…クスッ」


ユウちゃんが心配そうに近づいてくる。

その手には、私が尚也君に投げつけたネックレスが握られているのを確認できた。

それを見て私は、何故か鼻で笑ってしまった…。

ユウが持って来てくれたことに安心してしまった自分にだ。

滑稽と言うのだろうか…自分の惨めさに…。


「みさきちゃん…」

「ユウちゃん、ありがとう…でもいいの。私が悪いのはわかってはいるの…

 でもね、私も今は、どうしていいかわからなくなっちゃった」


美咲は空高く見上げ…そして、頬を涙が伝っていた。


「ゴメンね。わたしはあまり力になれないかもしれないけど、

 これみさきちゃんに渡しておくね」

「尚也君が私に返せって?」

「ううん。なおやはわたしにあげるって言ってたけど…

 これはみさきちゃんのために作ったものだからね…だから受け取ってね」

「ありがとう…」

「みさきちゃん…それを一生大事にしてね…」


ユウは、その言葉を紡ぐと同時に涙を流していた。

そして、振り返り…駆け足でその場から立ち去ってしまった。


漠然とだが、美咲はユウがこれから何が起るのかをわかってる様に思えた。

いつも明るいユウが、あんな顔するのは以前尚也の話をした時以来だったからだ。


美咲は、ネックレスを再び首に掛け、その花言葉を思い出す。


「睡蓮の花だったよね…花言葉は純粋な心…優しさ…信頼…だっけ」



再び、空に視線を移し、自分の心を思い返してみる。


尚也君は、変わりゆく周囲の変化の中でもいつも私を見ていてくれた。

私はそれに、気づこうともせず、彼に酷いことをやってしまった。


尚也が帰ってきたら今までの事を謝ろうと決心していた。

…謝っても許してはもらえないかもしれないけれどと…。


そんな美咲の心を清めるか如く…空は雲一つない青空だった。






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