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65話 女神の降臨

魔術を行使する守護者の一団が大挙として押し寄せていた。


広範囲の攻撃魔術のおかげで、当初の動きを止めていたγ(ガンマ)や守護者達は一掃できた。

そして不思議とγ(ガンマ)の沸きのみになり、戦線を推し進めることに成功していたのだが、γ(ガンマ)の次に守護者の一団が、凄まじい勢いで沸き始めている。


「レイスさん!報告に上がってた魔術を行使する守護者ガーディアンが、

 大群で降りてきています。魔術障壁を張りなおすように全軍に通達してください!」


レイスは即座にリーネに通達を指示し、所々で障壁の張り直しが行われていた。

そのとき、第2部隊が前線に入れ替わりで到着したのだった。


「あら…まだ中腹よ!ナオヤー私達が攻勢をかけるから球体に向かいなさい」

「アリッサさん…考えてることがわかりますか?」

「あら…お姉さんを見くびってはダメよ!但しちゃんと戻ってくることいいわね」

「…はい」


アリッサは尚也に声をかけると第2部隊に全面攻勢の指示を出した。

守護者の一団が降りてくるところを見計らい、クリストファーが闇の魔術で守護者の影から下半身を拘束する帯状の物を巻き付け相手の動きを封じる。

そして、マティオは光の十字セイドリッククロスを前方の敵に向けて放ち、尚也達のために道を築く。


「あら…私の出番ね!また暴れてきなさい!ーーーー氷幻狼(フェンリル)ーーーー」


遠吠えをしながら築いた道に這い出てくる守護者の攻撃を受けながら突き進む、尚也達はそれを追うように築かれた道を登っていく。


「アリッサ譲ちゃん!儂らも、子供達の後追う!後方は任せたぞ」

「あら…おじいちゃんなんだがら無理せずマティオに任せてもいいのよ」

「ふん!儂がまだ若いところを見せてやるわい」


マティオは会話をせず、尚也達と共にフランスの部隊と突入していた。

その後にクリストファーが続き、築かれた道をしっかり確保しながら進んでいる。



最前線にいる尚也達はまさに激戦であった。

前方からくる魔術を防ぎつつ、応戦し頂上を目指さなければならない。

フェンリルが守護者ガーディアンの頭を噛みちぎり、爪で切り裂き、吹き飛ばしているが、フェンリル自体も氷の柱が腹に突き刺さり頭や所々から血が流れ満身創痍の状態である。

そして、フェンリルはその場に倒れ緑色の光を発しながら塵の様に消えていく。


マティスはクリストファーの部隊と連携をとり、一定の時間クリストファーの部隊が後方から攻撃し、

マティスの部隊は登り一定の距離を移動したら、クリストファーの部隊が今度は進撃し、徐々にだが速やかに戦闘の拠点を頂上に向けて進ませていた。

態勢を整えた1部隊も合流し戦闘に参加していたが、フェンリルがやられたことにより、前線への負担が大きくなり、守護者ガーディアンの魔術でやられていく魔術師が増えて行くのだった。


「うわーーーー!身体が…助け…て…」

「嫌―――」

「ハァハァ…もう帰りたいよ…え?…バンッ」


顔をあげた瞬間氷の矢が頭を貫通した。

次々と守護者ガーディアンの魔術が魔術師達を切り裂き、ある者は燃やされていく…。

その光景はまさに地獄のようなものだった。

しかし、徐々にだが頂上が見え始め、守護者の数も思った以上に減らすことが出来ていた。


ロックは今が機と考えていた、敵が減り頂上も見えている。


(だが、どうする?各国の魔術師も今の状況を維持するのに手一杯だし…

 この状況を長く維持すれば疲労でこっちの勝ちは厳しい…

 尚也を…頂上に行かせることができれば勝機が見えるか…

 …アレをやるか…)


ロックは急いでアリッサの居る所まで駆けだした。


「アリッサさん手を貸してください!」

「あら…ロック君だったわねっ!どうしたの?」

「ちょっとした召喚を手伝ってほしいんですが、俺には召喚魔術はできないので手をかしてください!」

「あら…面白そうね」


ニヤリとアリッサは不敵な笑みを浮かべ、ロックに近づき詳細を聞くと目を見開くと、ロックにもう1度確認をし頷いていた。

そしてアリッサはレイスの所に急いで向かった。


「あら…全く…あの子たちは信じられないわね。レイス!アンソニー!マティス!

 クリストファー!今から道を開くから貴方達もあの子達と行きなさい!ここはレイラが引き受けるわ!」

「え?アタイが?」

「おい…急になにいってる?」

「問答している暇はありません…アリッサに従いましょう!」

「レイスさん…わかりました」


アリッサの言葉に周囲の魔術師達も各隊長に、行ってください!ここは我々が死守します!と声をあげていた。

ロックは尚也達の元に駆け寄るといまから行う作戦を伝えていた。


「尚也!ここは俺が全力で頂上まで送り届ける!シェラ!紗菜!尚也を頼む!」

「ロックどうするつもりだ?」

「最上位の召喚を行うから…その隙に頂上にいってくれ!」

「ロックお前…」

「あんた後からちゃんと来なさいよね」

「レンちゃんも待ってるから」


そして、ロックはすぐにアリッサの隣に向かうと、その周囲をアリッサの部隊が囲むように守り、

今から行う召喚を成功させるために身を呈していることがわかった。


「あら…早いのね。ロック君本当にいいのね…一歩間違えばあなたも死ぬわよ」

「俺はレンに会うまで死ねないから」

「あら…惚れちゃいそうね♪いいわ!ならあなたの望む通りに!」


アリッサとロックは恋人の様に両手をつなぎ、向かいあい目を瞑り膝を祈る様に曲げ、

予め地面に書いておいた魔術陣に魔力を送り、そして、自分達のありったけの魔力を込め言葉を紡いでいく。

周囲の魔術師は飛んできた魔術に1人また1人と倒れていたが、気にしてはいられない。


「―――世界の光を我らは願う!万物を創造し、人たる我らの母よ、その偉大なる力で生きとし生ける者を正しく導きたまえ!そして、我が身の移りて天も地をも破壊させる、正義の審判を彼もの達に与えたまえ!―――」


「ーーーー降臨(フュージョン)ーーーー、ーーーー女神(イシュタル)ーーーー」


ロックとアリッサは魔術陣と一緒にそのまま空中に浮遊し、まばゆい光が彼らを呑みこみ天からの光を受けた。

その姿は女性をかたどってはいるが、背中には光の翼が生え、体からはまばゆい光が発光しており、詳細にみることはできなかった。

そして、その女神が動いたかと思った瞬間、尚也達の目の前に一瞬で現れ、手には青く光る槍を持ち守護者ガーディアンがいる場所へとそれを物凄い勢いで放った。

槍は前面に広がっていた守護者ガーディアンを一瞬で灰にしていき、そのまま天を貫く如く消えて行った。

イシュタルはそのまま敵陣に光の剣を持ち切り込んでいく、尚也達もそれを確認し一緒に頂上を目指した。

しばらくはイシュタルの無双が続いたが、イシュタルの動きが止ったと同時に光が爆散し、ロックとアリッサはそのまま最前線の戦場に倒れ込んだ。


その2人を追っていた7人と数名の部下が直ぐに駆け寄り、安否を確認していた。


「アリッサさん!ロック!大丈夫か?」

「ロック…」

「ゥ……ゥ…尚…也……」

「ロック!しっかりしろ!」

「……」


ロックは辛うじて意識はあったがアリッサの方は意識を失っていた。

2人とも体中に傷を負って、その身に降ろすことの凄まじさをものがたっていた。


「これは酷い…リーネ!部下連れて2人を後方に運びすぐ治療を!」

「はい!」


リーネは直ぐに、2人を部下におぶらせ後方に退却をしていった。

尚也が振り返ると、そこはもう既に頂上付近であり、少し前には球体が浮かび尚也達を今かと今かと待っているような雰囲気を纏っていた。



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