63話 決戦の朝
陽が昇り朝を迎えようとしているが地響きは止らず前線では戦いを続けている。
今回の突入作戦で人員を多く投入するのでその分今の戦力は減っていた。
山を大きく切り崩しその天辺近くに円柱状の深さ20㍍の穴が開いていて、
まるで台形の様な形に見えている。
後ろ側は絶壁となっているためγ(ガンマ)と守護者は司令部の方へと
自然に下ってくる。
穴の螺旋通路を登ったとこくらいに黒き球体が10㍍の高さで浮いている状態だ。
その球体からボトボトとこぼれ落ちているモノがγ(ガンマ)や守護者と呼ばれる
者達が産れ出でているのか召喚されているのか定かではない。
今回の作戦は軍部と魔術師が一丸となり行われる。
まず軍が一機戦闘機で特殊な液体を上空から散布する…そしてもう一機の戦闘機がもう一つの
特殊な液体を散布すると化学反応を起こし凝固反応が起る。
それを何度か繰り返したら魔術師の出番である。以前にもやった作戦だが溢れ出す敵に対処
出来なかったため中止せざるを得なかったものを規模を大きくして実行するのだ。
魔術師は凝固して動けない対象達を駆逐しながら球体に向かいそれを撃破する。
戦法的には簡単だがγ(ガンマ)や守護者達も前より数段強化されている。
苦戦するのは必然とも言える。
大勢の軍隊が整列し魔術師も並び各小隊に別れて作戦の概要を再確認している。
尚也は各小隊を指揮している魔術師が集まってる天幕に向かう。
大きめのテントの中には6人の各国を代表した魔術師達とシェラ達が尚也を向かえた。
「お!貴方が神に選ばれし子ですか?」
「え?神ですか?」
彼はフランス代表の魔術師・フランスの部隊を指揮する。
マティス・オリオル 46歳 階級・ワイズマン
光の魔術を得意としその信仰心も半端ではない。
2つ名 正義と呼ばれている。
「あら…可愛い子じゃない!淋しくなったら私のとこにいらっしゃい」
彼女はイギリス代表の魔術師・イギリスの部隊を指揮する。
アリッサ・マーフィー 36歳 階級・セイジ
世界で唯一召喚魔術を行使する天才魔術師
2つ名を魔術書と呼ばれている。
「アリッサ、アンタ、ショタだったのー?」
「あら…可愛い子には年齢なんて関係ないのよ」
アリッサと呼んだ彼女はロシア代表の魔術師・ロシアの部隊を指揮する。
レイラ・アソチャコフ 38歳 階級・セイジ
水と氷の魔術を得意としロシアの氷の魔女と畏れられている。
2つ名を氷結極限と呼ばれている
「皆さん尚也君がお困りの様ですよ。そのくらいにして…尚也君こちらに」
「レイスさんありがと、皆さんもはじめまして、おはようございます」
レイスが助け船をだし尚也はレイスに導かれるまま隣の席に着く。
そして各紹介をレイスがする。
「各位判り易い様に細かい事は資料にしてありますから名前だけ呼びます」
そして名前が順に呼ばれ軽い挨拶と共に自己紹介は終わった。
「レイスさん彼がいくら強くても今回の作戦大丈夫なんですか?」
心配そうに聞いたのは合衆国代表の魔術師・合衆国の部隊を指揮する。
アンソニー・ネルソン 35歳 階級・ワイズマン
滅多にいない無属性の魔術を得意し攻めより補助を重宝する。
2つ名を隠者と呼ばれている。
「うちの水の乙女が認めてるんだ大丈夫だろう!」
ドイツ代表の魔術師・ドイツの部隊を指揮をする。
クリストファー・アルベルト 56歳 階級・ワイズマン
最高難易度の闇の魔術を得意とする。
2つ名を闇術師と呼ばれている。
「14、5才の子供の事を信じてるのですか?あり得ないですよ」
「彼女は君より強いかも知れないがな」
「聞き捨てならない言葉ですね!それは」
周囲はまた始まったと思い知らぬ顔をしている。
アリッサとレイラはそれを無視して尚也に近づき頭を撫でたり色々可愛がっている。
シェラと紗菜はその様子に落ち着かない雰囲気だった。
「アンソニーやめなさい。尚也君は1度アレを封印しているんですよ。
君にそれが出来ると言えますか?」
「レイスさんそれは…出来ませんけど…」
「では少し自重してください。シェラさん達もまだ魔術学園の生徒ですが
既に2つ名を与えられるほどです。今回は全員の協力が必要なのです。
まだ公式発表されていませんが…合衆国のエレンとレイド、日本の東雲殿の
2つ名持ちの魔術師達が還らぬ人となっているのです」
「あら…エレンが逝ってしまったのね…」
「日本の東雲もか…惜しい人物を無くしてしまったな」
アリッサとクリストファーは友人を惜しみ目を瞑り黙祷を捧げていた。
「日本の部隊は私の指揮下に入れます…。
尚也君は単独部隊として少数ですがシェラさん達を加えます。
どの部隊も協力して球体の内部にいる存在の撃破を目的としてください」
レイスは一瞬全員を見渡す…。
「では質問がなければ解散とします。各自開始の合図があるまで各部隊でしっかり
ミーティングをしておいて下さい。…では私達が笑顔でまた会える事を願って解散!」
順番に天幕から外に出て行く、レイスはまだ調整があるといい、補佐官を呼んで
何やら難しい顔をしていた。
尚也はシェラ達と外に出ると2人の女性が待ち構えていた。
「アリッサさん、レイラさんどうしたんですか?」
「あら…もう名前で呼んでくれるのね。お姉さんは嬉しいわ」
「ククッ アリッサ…もうオバサンじゃなくて?」
「あら…ナオヤ、レイラがオバサンて呼んでほしいそうよ」
何ですって!とレイラが食って掛かるがアリッサのが年齢は下なのだが一枚上手なのがわかる。
そんなレイラを押しのけてアリッサは尚也の前まで来て両手で顔を挟みこんだ。
「あら…ナオヤ、貴方は頭が良い子だけどちょっと要領が悪いわね。
いい?貴方しか出来ないかもしれないけど…命は大切にしなさい。
私もそこのチビっ子達も悲しむから…」
「こらアリッサ、なんでアタイを含まないんだよ」
アリッサは何か尚也が考えていると漠然とした不安として読み取っていた。
だから敢えて忠告をしておこうと思った。
自分は子供ができない身体になってしまったからこそ…まだ年端もいかない子たちを
戦場で無くすなんて事は絶対にしてはならないと。
そして、強く優しく抱きしめるのだった。
レイラもそれを汲み取り尚也の頭を同じように撫でていた。
尚也は苦しそうにモゾモゾしていた。
「あら…ホント可愛くてお持ち帰りしたいわね」
「アリッサ…ナオヤ窒息するから!」
あら…と口癖を吐きアリッサはレイラに引きづられて部隊の方へと歩いて行った。
後ろではチビッ子と呼ばれた女の子2人がすごく機嫌が悪そうな視線が尚也を射抜いていた。
「尚也…アリッサさんの大きかったな…」
「おいぃぃぃぃいいいいいいい」
ロックの一言にシェラと紗菜は顔を真っ赤にして尚也に手を振り上げて追いかけて行った。
戦場の緊迫した雰囲気の中、各部隊はそれを見て笑っていた。




