61話 叫声
シーンっとした教室に教師の声とチョークの音が響き渡り
水槽の金魚が優雅に泳いていた。
居眠りをする者、外の景色を見ている者、欠伸をしている者、
多くの者は勉強に集中してるだろう。
しかし、その中に魔術書を読み耽っている異質な存在が3名もいる。
少しの間だが、体験学習と称しいる海外から学生である。
教師はカツカツとヒールの良い音を立て、3名の学生を通り越して
1人の学生の元に赴く…。
「あのね…。私今授業してるんだよねー」
「紀子ちゃん…俺に言わないで本人達に言ってよ」
「新堂君がリーダーでしょ?何とかしてよ」
尚也は面倒な顔をしつつも、周囲にいる魔術書をひたすら読んでいる者達に
声を掛ける。
「お前ら紀子ちゃんが泣いちゃうだろ?」
「今いいところなのよ!」
「も…もう少し読ませて」
「ふむ…これは興味深いな」
尚也は紀子を見てお手上げのジェスチャーをし、諦めの表情をしていた。
紀子は私の授業はそんなにつまらないのかなどと言っていたが、
尚也が魔術書を読んでいることを説明すると更にプリプリしだし…。
「やっぱり新堂君のせいじゃんー」
「アハハ かもしれないね…」
「もう!」
「――――――――――――――――――――――――――――――――――」
突如強烈な悲鳴が頭の中を掛け廻った。
音が鳴りやむと学校で混乱が生じていた。
中には涙を流し泣き続け、あるものは気絶していた。
「クッ…みんな平気か?」
「何とかね…」
「なおやー頭痛いよー…ぅぅ…」
ユウが尚也に擦り寄り頭を右手で抑えていた。
ユウの頭を撫でながら状態をスキャンするが問題は見つからなかったが治癒の魔術をかけた。
教室の生徒は皆頭を押さえたり何が起こったのかわからない表情をしている。
泣いている者もいるが錯乱している感じでは無さそうだった。
「…これはキツイな」
「一体何が起こったのよ!」
「すごい悲鳴みたいなのが頭に響いたよね…」
シェラ達もすぐに立ち直り、現状の確認へと思考を巡らしていた。
「シェラ・紗菜・ロック…それに紀子ちゃん!
とりあえず、混乱を避けるために各教室を回って大丈夫か
確認をとってくれ!これは本格的にヤバいかもしれないな」
その言葉に3人は何が危険なのかを素早くキャッチしていた。
解いた封印に何らかの動きが生じたことに。
「俺は放送室に行く!美咲ーユウ一緒に」
「うん…ユウちゃんこっちに」
「あーい♪みさきちゃん」
尚也のその指示を受けた者達は素早く動き始めた。
今自分達がやらないといけないことを実行するために。
シェラ達が各フロア別に回ることを決め、紀子は職員室へ
向かうことを決めていた。
尚也達もダッシュで走り、階段を下り放送室へと向かった。
ガチャ
急いで校内放送を流す準備をする。
≪キーーーーーーン≫
≪全員そのまま少しきいてくれ!ユウ自分の好きな歌を歌ってごらん≫
≪好きな歌でいいのー(^^)
♪♪♪~♪♪~♪♪♪♪~♪♪♪♪♪~~~♪♪~♪♪♪♪♪ ♪≫
その歌声の可愛らしさにさっきまで混乱していた生徒や教師は徐々に
放送に耳を傾け歌に引き付けられていた。
そして、歌が終わった時のセリフに全校生徒全職員が違う意味で
発狂していた…。
そのおかげ収束を向かえ、教師が各所に問い合わせたところ、
全世界でその出来事が生じたことがわかり、学校は休校を決め全生徒は
帰宅と決められ、以後政府の判断に任されていた。
尚也達面々は教室に残り出来事について話し合っていた。
「えへへ♪カラオケみたいだったね」
「ユウちゃん上手だったよ」
「えへへ♪撫で撫でして♪」
ユウは美咲の膝の上に乗って頭を撫でてもらっている。
美咲の他の友人は多少の頭痛を訴え帰宅していった。
「まさか全世界へ影響させるなんて途方もないわね」
「戦地で異変があったと見るべきじゃない?」
「俺は現地に行ってないが状況はひどいのか?」
シェラ達3人が情報交換をしているのをみて尚也はあまり
時間が残されてないことを実感せざる終えなかった。
そして、窓の下に黒塗りの高級外車が何台か止まっていた。
シェラが戦場の状況をロックに説明している途中に教室の
ドアが開き紀子が大勢のスーツを着た人物を率いてやってきた。
「新堂君…お客さんよ!色々な知り合いがいるのね」
「知り合いじゃなく初対面ですけどね」
黒のスーツを纏った人物には見覚えがある…
現日本の内閣総理大臣斉藤首相だった。
他にも防衛大臣や内閣危機管理室といったよくわからない
部署の連中も一緒に来ていた。
「新堂尚也君と各国魔術学院の2つ名持ちの方ですね」
「何の用かは大体見当は付いていますよ」
そして具体的な内容に入っていく。
日本は救援を出した時に、調査をある程度行っており尚也が
どの程度今回の作戦に関わっているかを入手していた。
合衆国からも救援をだしてもらう代わりと大分情報公開も
各首脳部には伝達していた。
「今救援の第2陣を送った…尚也君…君達にも協力してほしい」
「合衆国の方にも言ったんですが、少し条件があります。
今回は日本や各国は被害者と言ってもおかしくはありません。
ただ、俺達も戦い終わったあとの安全がほしい!
きっと合衆国の連中は詳細を知っている者を生かしておかないでしょう。
金銭的な事は合衆国に約束させますが…
日本には俺達を国の代表として送り出してほしい。
TVでの放送でアピールしてください」
もちろんそれだけで安全の保証がされるわけではないが保険は
いくつも掛けておくにこしたことはないのだ。
合衆国には合衆国のやり方で保証はさせてやる算段もある。
そしていくつか約束し、斉藤首相達は尚也達と握手をし帰って行った。
「忙しくなってきたな…さて俺達も帰るか」
美咲は不安そうな顔をしてユウを連れだって帰宅した。
シェラ達は尚也の家の近くのビジネスホテルに泊まっているらしく
途中まで一緒に帰るのだった。
「尚也…合衆国に行くんだな」
「ああ…近いうちに戦いになる」
「私達はずっと一緒だからね」
シェラは尚也の手を握り胸の前で両手で包み込んだ。
紗菜とロックも気持ちは同じだとその上から手を重ねた…。
4人を夕日が照らしていた…それは何かの誓いみたいに…。




