6話 癒しの少女
入口に人影が現れ、いきなり声を発した。
「こちらで大きな魔力を感知しました。何か知っている方はおられますか?」
全員一瞬身を竦ませたが聞きなれた言葉に安心感を抱いた。
1人の教師に話しかけ事情を聴いているようだ。
生徒が集まっているところを見ると、2人の男女が杖を持ちこちらに走ってきている。
集まっていた生徒達がモーセの十戒のように道を開けていく。
「どいて 怪我人がいるそうですが?ここね え…?まさかなおやくんなの?
これは…ひどいね いますぐ治してあげるから待ってて」
尚也が生存していると確認すると少女はおもむろに尚也の上に杖をかざしそして
「聖なる力 彼の者を癒す 聖光とならん ーーーー上級治癒ーーーー」
パーっと光輝き尚也は光に包まれた。その光は神々しく見る者を魅了するかのごとく
光を放っている。
少女は治癒の魔術を使いながら泣いていた。どうしてこうなる前に気付けなかったのか、
もっと早く来ていれば彼にこんな酷い怪我をさせずに済んだかもしれないのにと。
「綺麗…」「すごい!」
少女の魔術に感動する声がいくつも上がっていたが、少女にとってそれは
嬉しいものではなかった。光がなくなり、血だらけで瀕死だった尚也の傷も綺麗に無くなっていた。美咲・勇二や教師やほかの生徒も何が起こったかまだ理解できない様子で
杖を持った少女と少年を見つめていた。
「これでひとまず命は取り留めましたが、肉体を回復させたに過ぎません。
疲労した精神や失った血などは魔術では回復出来ませんから絶対安静でお願
いしますね」
「尚也君を救ってくれてありがとうございます」
「いえ、なおやくんを戦わせてしまったのは私どもにも責任はありますから…
病院に行く必要はありませんが安静と食事はしっかりとってくださいね」
少女と少年は尚也の安否をもう一度確かめてから岐路についた。
尚也は保健室に運ばれ美咲と校医の看護を受けて今もまだ眠っている。
ちなみに最初に飛ばされた熱血教師も重傷ではあったが
回復魔術で完治してもらっていた。