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54話 惜別の時

シェラと紗菜の体操服は美咲が予め用意していた為、

着替えてグラウンドに向かった。

グラウンドに着いた途端、ユウが美咲に倒れ掛かりそれを見た

彩見が急いで抱きとめていた。


「ユウちゃん!」

「…ぅぅ…」

「どうしたの?気分でも悪くなった?」

「癒しよーーーー治癒(ヒール)ーーーー」


ユウが少し苦しそうに呻きをあげるとみんな心配そうに見つめていた。

そこにすかさずヒールの魔術で治癒をする紗菜…。

しかし、ユウの体は魔術を拒絶するかのように紗菜の魔術を弾いていた。

1人クラスの生徒が先生に事の次第を伝えにいった。


「え?魔術が効かない?」

「どういうことなのよ?」

「ユウちゃん…」

「みさきちゃん…少しこのままにさせて…」


そしてまるで意識を失うように目を閉じたがそれは一瞬でしかなかった。

しかし、ユウにとっては尚也との交信でありその短時間でも意図を

受け取るに短い時間ではなかった。

再び目が開くと、もう大丈夫だからと言って立ち上った。


「…あのね…みんな…そろそろお別れの時間がきちゃったみたい」

「「「「「え?」」」」」


何を言い出したか判らないと全員目を見開いている。


「急でごめんね…なおやから準備ができたよって」

「元に…戻るの?」

「…うん」


ユウの体から少しずつ白い光がでてきていた。

美咲はユウが以前一週間くらいだよと言っていたことを思い出していた。

あれからそのくらいの時間は経過していた。

あまりにも楽しく、幸せな時間であったから過ぎゆく時を忘れてしまって

いたのだ。

ユウはシェラと紗菜に視線を向け…。


「しぇらちゃん、さなちゃんありがとうね。

 わたしは1度も会ったことなかったけど…2人のことはずっと見ていたんだよ。

 これからきっとなおやは危険なこといっぱいしちゃうと思うから助けてあげてね。

 わたしはもう一緒にいてあげれないから」

「ユウ…」

「ユウちゃん…」


ユウはホントに幸せそうな顔をしていた。

そんな顔をされては何も言えないじゃないかとシェラと紗菜は思った。

でも力強く頷き、2人は精一杯ユウを抱きしめた。

そして、彩見と鈴に近づき…。


「お友達もいっぱいできたよ!あやみちゃんとりんちゃんは

 特に仲良くしてくれてホント嬉しかったんだよ」

「…ユウ…」

「ユウちゃん…ダメ…だよ」


彩見はなんでか悔しさで唇を噛んでいた。

もうずっと友達で過ごすものだと思っていた。それがもうお別れと

言いだす、会ってまだ一週間だがその存在は思っていた以上に大きかった。


鈴の目には涙が一杯に溜まっていた。いつも甘えても文句一つ言わず、

抱きついても嫌がらず、いつも嬉しそうに笑ってくれていたこの子を

鈴はどれだけユウのことを好きだったか。


「みさきちゃん…」

「ユウちゃん…ダメだよ…こんなのってないよ…」

「笑って見送ってほしいな。

 いつもみさきちゃんには迷惑かけちゃってごめんね。

 クラスのみんなもアリガトーすごい楽しかったよ。

 ユウジーなおやをよろしくねー」

「ユウちゃん…マジかよ…」


クラス生徒がみんな思い思いの言葉をかけてくれていた。

校舎からはユウが倒れたと聞き先生や生徒が続々とあつまり

授業なんかほったらかしてきていた。

ユウは自分がどれだけ大切にされていたか思うと自然に

瞳から一筋の涙が流れた。

それがキッカケでそこにいた全ての人が涙を流した。

そしてユウの体が強く光だし、別れの時がもうすぐそこまできている

ことを示していた。


「みさきちゃんごめんね。最後までこんな形になっちゃって

 ホントならもっとちゃんとお別れをしたかったのに…」

「待ってよ…ホントにどうにもならないの?

 ユウちゃんーあなただけ消えるなんて…そんなの無いよ…」

「わたしは本来いないの…でもなおやが短い時間だけどくれた。

 わたしはすごい幸せだったよ。――――ありがとう――――」


そのありがとうはそこにいた人全員の心を貫いた。

見送らねばならない人たちの悲しさが心を締めつけていた。

だが、美咲はそんなこと受け入れられなかった。


「ダメ……勝手に出てきて勝手に消えないでよ…

 いつもそばにいてくれたじゃない。一緒に寝て起きて…

 一週間だけどあなたとの時間は何ものにも変えられない…

 私にはかけがえのない時間だったの…お願いだよ…

 戻ってきてよ…」


美咲は涙を流しながらユウへの思いをありったけの言葉にして叫んだ。

ユウは天使の様な微笑みを最後に残し光の中へ消えて行った。


「行かないでよ!ユウーーーーーーーー」


 

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