52話 混迷の戦場
エミリー達が日本に降り立つ数日前…。
連日の首脳部との会議…基地での会議…
何も定まらないままいらぬ時が過ぎて行く。
首脳部では弾薬が効かないのに核を撃ったとしても効果が
期待できないのでは撃ってもしょうがないという結果だ。
施設の司令部の一室で報告書を机の上に投げ出し、頭を抱えている。
部屋は静かだが少し遠方の方から地響きが聞こえてきていた。
武器弾薬は殆ど効かず、魔術による攻撃をメインに切り替えもした。
各国への要請をだし、緊急招集までして集めた…。
しかしまだ、そんなものでは足りない状況にあった。
コンコン
「失礼します。将軍…お疲れの様ですが大丈夫ですか?」
「前線が戦っているのに休んでもいられん」
「指揮官は休むのも仕事です」
エミリーは判っているだろうがあえて口添えをしていた。
「エミリー君には苦労をかけるな」
「カイル…友人としての忠告です。少し休んでください」
カイルと呼ばれ将軍とも言われているこの人物。
カイル・サンダース
合衆国軍の階級は大将。
「…毎日魔術師に交代で穴から出てくるγ(ガンマ)の処理を
してもらってはいるが…日に日に押されているな」
「はい。何らかの策を講じないと…
そして敵が出現している中心がゆっくりですが前進しています。
はっきり申し上げて対処の仕様がありません」
「…策か…魔術師達にも限界はある。現状としてウォーロック
からの魔術師の招集を再度嘆願しようと思うが…」
実際の問題…すべては魔術師への期待なのだが現時点で
各国からの魔術師もかなりの数が集まっている…
にも関わらず日に日に押されている現実。
もっと魔術師を増員したところで勝てるのだろうかと
カイルの心に不安が溜まっていた。
そして、魔術師の死者も少なからずでている…
何か決定的な物がないかと考えていた。
大統領はカイルに全権を与えすべてを了承することを
約束してくれていたが、カイルにはそんな手段などなかった。
…確か報告では封印をした者の力は失っている。
しかし、我々が封印を解いた…禁呪の分身はどうなったのか?
「…将軍?…」
「エミリー中佐!確か報告では禁呪の分身が封印をしたらしい、
するとその分身は一体どこへ行ったと君は考える?」
「封印を解いた際…六芒星らしき物が上空に消えましたが…
しかし、あの禁呪を使った者に分身が戻ったと報告例は1件ありませんでした」
「例えばだ、その六芒星が消えずに飛んでいった…どこに向かうか…」
「……それは…」
ガタッと椅子を跳ね除け、分身の報告書を手に取り舐めるように
再度読むとカイルはこれだと言わんばかりにエミリーに報告書を渡す。
「エミリー中佐、これは私の推測の域をでない話だ。
しかし、いまの状況では魔術師を増員したところで何の解決にも
ならないジリ貧だ。可能性の1つとして賭けてみたい。
ナオヤシンドウに再び会い、力が戻っている様なら再度
協力を申し出てくれ。アレを封印したのは彼なのだから!」
「しかし…私は…」
「これは命令だ。我々は封印はおろか…押し戻すことすらできないのだよ…」
歯切れの悪いエミリーにカイルは強い口調で命令を発した。
その表情にエミリーはもうその手段しか自分達には残されて
いないことに気づき慌てて敬礼と返事をした。
「これより日本に向かいナオヤシンドウに再度接触を図ります」
「頼んだぞ」
出て行ったドアをカイルはしばらく眺めた後、
どうか期待通りであってくれと神に祈り、
再び報告書に目を通し…
「ナオヤシンドウ…
力を失わなければ立派な魔術師になっていただろうに…」
命令を受けたエミリーは早速支度をしその日の内に出発したが
その顔に戸惑いの色が表れていた。
そして日本に行く前に一人の少年に会いにいった。
旅立った後、戦場に変化が訪れようとしていた。
今までが序章であるかのように…。




