48話 その一瞬を
世界はこんなにも綺麗で楽しいのに…
わたしは限りある生を普通に謳歌することもできない。
人は限りある命だからこそ精一杯生きるんだと…
自分に残された時間…優しくしてくれる人達…
最後のとき私はどんな思いでここを去っていくのだろう。
オデコに何かが触れる感触がし、ユウは目を覚ました。
その瞳からは何故か涙が一滴流れていた。
目の前にいる少女はそれを見ると驚いた顔をし
心配そうに優しい微笑みを向けてくる。
「ユウちゃんどうしたの?」
「ううん 大丈夫だよ」
カーテンの間から木漏れ日が差す。
ユウは目を擦り夢で見ていたことを思い出し、
いまこの時間…一緒にいてくれる存在がいることの
大きさに嬉しくなりそのまま美咲へと抱きつき
唸り声をあげていた。
「おはよう。ユウちゃんくすぐったいよ。」
「あぅ…おはよう」
美咲はそんなユウに可愛い妹ができたような感覚に
囚われていた。
しかし、彼女は言っていた…時間には限りがあると。
そう…ユウの時間はすでに終わっている。
そんな感情も心の奥にありユウに対して美咲は尚也
と同じくらいの愛情で接していた。
「ほら~起きて学校いくよ!」
美咲はいつものように布団をガバッ開きユウの手を引き
顔を洗い、朝食のできている居間に向かった。
「2人ともおはよう!ご飯出来てるから食べちゃいなさい。
…それにしてもユウちゃんは可愛すぎるわね。
そのままうちの娘にしたいわ。」
「あぅ…」
居間に来たユウを抱きしめながら、
美咲の母、水嶋伊織はユウに美咲と同じ微笑みと
安らぎを与えていた。
「お母さん、いい加減にしないと遅刻するよ
あと昨日話したんだけどユウちゃんは尚也君
なんだからベタベタしないでよね」
「あら、だったら尚更いいじゃない。
尚也君はうちのお婿さんなんだから」
伊織は美咲の話を聞き何も言わず、ユウを置いてくれる
ことを了承していた。
美咲の瞳をジッとみてユウを見たあと、ユウへの確認をすると
笑顔で自分の家の様に過ごしていいからと快く受け入れていた。
「美咲のお古で悪いんだけど制服も用意したから一緒に学校にいきなさい」
「ガッコウ…わたしも通えるの?」
「うん~なんかね…
校長が可愛い子は待遇が違うのだよ!とか言ってたらしいよ?」
あれから1日も経ってないのによくそんなことが決められた
ものだと感心しながらあえて追及はしなかった。
美咲としてはユウと学校に通えることが嬉しかった。
無論尚也のことを忘れてはいないが、その尚也が
送り出してきたこの子を大切にしたいと。
制服を着て、長い髪に大きめのリボンをし、お弁当を
渡され登校していく。
「気をつけていってらっしゃい~)
「いってきまーす」
「…い…いってきます」
ユウはややぎこちない感じで挨拶を返し、美咲と共に
まるで姉妹の様に優しい朝の光に溶け込んでいった。
登校の途中…ユウの天使の様な可愛らしさに誰もが
立ち止り、振り返りユウを凝視していた。
そんなことを気にせずユウは学校にいけることが楽しくて
しょうがない様で満面の笑みを浮かべながら歩いていた。
「ユウちゃん 尚也君とは双子なんだよね?」
「うん?そうだよ。」
「言い方は悪いけどユウちゃんと尚也君て似てないよね?」
急にユウは美咲に目線を移し人差し指を立てたポーズをとった。
「それはね。いままでわたしとなおやは2:8くらいの差で
力や能力がわたしにきてたんだよ」
「今までの尚也君で2割なんだ」
「うん。容姿とか身体的なことも含めてね
だからホントのなおやはいまのわたしと似ているよ。
双子だから! えへへ(^^)」
同等の分身を作る魔法だったが尚也が力を送り込み
過ぎてしまった結果、ほぼユウに流れ込んでしまい
尚也のほうは劣化版になってしまった。
尚也の話を嬉しそうにするユウをみて美咲は
次会う時の尚也はどんなだろうと思いを馳せ学校へと入って行く。
「ガッコウきたよぉ――――」
学校を抱きしめる勢いでユウは腕をいっぱいに広げ大きな声で
叫んでいた。
周りの生徒は驚いた顔をしていたが、ユウの無邪気な顔をみると
優しい微笑みをユウに投げかけていた。
「ほらいくよー」
下駄箱から美咲が呼ぶ。
「みさきちゃん今いくよー」
美咲に呼ばれ校舎にはいる途中でユウは
短い期間だが自分らしく精一杯この瞬間を心に体に
自分の全てに刻むことを…誓っていたのだった…。




