43話 予兆
合衆国軍が撤退を余儀なくされているとき
日本ではそんなことを知る由もなく
静かで平穏な夜を過ごしている。
少年は夢を見ていた。
何も無い暗闇から青い光が生まれ人の様な輪郭を
模り、優しい微笑みを浮かべているように見える。
少年の周りをフワフワ浮きながら回っていた。
何やら懐かしい様な気がしてくる。
そして、少年に近づき、
(わたしはきみであって、きみはわたし…わたしときみは1つであって2つにもなった。
何の心配もいらないよ、きみがわたしを待っているようにわたしもきみを
待ってるんだから…)
少年はその青い光に触れようとするが
再び優しい笑顔になると伸ばした手から逃げるように
遠ざかっていくのであった。
少年は夢の中で何度も待ってくれと叫んだがその声は
暗闇にへと沈んでいった。
すーっと暗闇の中、頭が覚醒を促し目を開ける。
そして冷静に夢に出てきたことの詳細を思い出し
夢の言葉の意味を探る。
「…1つで2つになったか…」
まさか分身の思念とでも言うのだろうか。
分身ではないとすると…封印が解除された…。
封印の魔術は解かれたときにそれが判ると文献にあった。
虫の知らせとでもいう現象が尚也に降りかかっていた。
翌朝、昨夜の夢が何もなかった様に日は昇り朝が来た。
美咲が迎えにきて、特に変ったこともなくいつも通り登校する。
登校する際、美咲に夢の話をしもしかしたら封印が解かれた
かもしれないことを報告した。それと同時に紗菜とシェラにも
メールで知らせていた。
「それで尚也君はどうするの?」
「ん?別に何もしないけど…」
「もう危ないことはしないでね」
「……」
尚也はそれに返事をするか迷ったが無言で通していた。
封印が解けて何かしらのアクションが起きたら自分は
動かざる得ないだろうと。
しかし、封印が解けたかもしれないが何にも起ってはいないので
別段何かするわけでもなく…何もできないのである。
「合衆国軍がどうなったとかニュースでも何もなかったしね」
「実際危険なことが起きたら放送はできないけどな
とりあえずは今日のプールが楽しみだ」
「エッチ!」
「エロくない男はいない!」
フハハと謎の笑いを振り撒きながら学校へ入っていく…
その横で一緒になって笑っていた人物がいつの間にか存在した。
肩を組み合い同士よ!といい教室に消えて行った。
無論その人物は有田勇二その人だ。
そして待ちに待ったプールの授業…
しかし、プールの授業は男子だけであり…女子は身体測定であった。
「おぃいいいいいい」
尚也の叫びがプ―ルに響き渡り、バタッと勇二が倒れていた。
男子生徒も始まるまでみなぎっていた力を吐き出すことができず、
マッチョな水泳指導の先生を見ると涙を流し逃げて行った生徒も
いたらしい。
そんな日常が続いている中、合衆国では軍や魔術師が懸命に
敵を食い止めようと夜通し戦っていたのであった。
そして尚也の平穏もまた終りへと………。




