3話 封印の綻び
勇敢な教師がいた。
生徒からも尊敬される今時珍しい教師だ。
「君!今は朝礼中だぞ。不法侵入なら警察を呼ぶ!
そのふざけた格好は何だ?早々に出て行きなさい…
聞こえているのかっ!!」
大きな怒声が体育館に響き渡り生徒に一時の安心を
与えたが…それも一時のことに過ぎなかった。
「おい!!君は…え?」
教師の頭上に斧が振りかぶっている状態であった。
「ドゴーンゥゥゥゥ」
「にげてー」
「キャー」
「やばくね あれ…」
斧を振り下ろすと教師は紙きれのように
吹き飛んで行った。
生徒達が恐怖で叫び声をあげている。
吹き飛ばされて教師はピクリともせず倒れていた。
シーン
静かになった体育館に突如バーンバーンと
扉の閉まる音がこだまする。
閉まった扉を近くの教師が開けようとしたが
ビクともしなかった。
「扉が開かない、どうして…」
叫ぶ教師にいよいよ閉じ込められたという
恐怖が全員の心を支配し始めた。
「怖いよー」
「逃げないとやばくない?」
「どこへ逃げるのよ!」
「家に帰りたいよ」
悲痛な叫びが続く中、
侵入者は生徒達のいるほうに動き出した。
「ドン ドン ドン ドン」
侵入者が迫る
「ちょっとこっちに来るぞ…
おいおいマジでやばいぞ」
泣き出す者も何人もいた。
静観していた尚也が美咲と勇二に話をしだした。
「美咲・勇二、今の俺じゃ無理かもしれないけど
ちょっと努力してみるよ」
「え?尚也君行ったら危ないよ?」
「尚也?何を言って?」
1人の少年が侵入者の前に歩きだした。
絶望という名の戦いに身を投じるために。
侵入者は1人の少年が歩いてくるのを確認すると
そこで動きを止めた。
尚也はやれやれという態度で前にでて相対した。
「お前は5年前の復讐…
いや、守護者といったところか?俺はお前らを永久に
封印したはずだったが…破られたらしいな」
侵入者は尚也の言葉に耳を傾けていた。
「我の目的は我らを封印したものを殺し、
再度の封印を阻止するが目的」
「俺を殺しに来たというわけか…困ったな」
「半身を捨てての封印術だったというのに5年で
封印が破られるとはね。あと10年は平和がほしかったよ」
「封印はまだ完全には破れてはおらぬが、間もなく完全に
解けよう。我はただ目的を果たすための綻びにすぎぬ。」
尚也は考えていた。
敵の戦闘力はかなり高い、以前の自分ならいざ知らず
今の自分の戦闘力はほぼ普通の人間と言って変わりない。
さっきの教師を吹っ飛ばした力をみても一撃受けたら致命傷は確実だ。
どうする…
アレを使うしかないか。
多少の無理は生き残るためには仕方のないことだろう。
「グアァァァー」
守護者は叫ぶと同時に戦闘を仕掛けてきた。
「くっ 思ったより速いな」
回避はしたが服に斧が当たりビリーっと大きな音を
立てて破れた。
そのまま破れた服を守護者の目元に巻きつけ顔から胴へ
思い切り殴りつけた。
うずくまったところを最後に踵落としで決めて距離をとった。
しかし、殴ったのが効いてうずくまったと思ったのだが、
服で見えない敵を探すためにうずくまっただけであって踵落とし自体も
全く効いていない状態だった。
守護者は捲き付けられた服を破り捨てると再び斧を
振り上げて向かってくるのであった。
「尚也君にげて!」
「尚也―!」
友人たちの叫ぶ声が聞こえていた。