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血溜まりと木箱

「ほら、お母さんは買い物にでも行ったんだよ」


 ノドカの言う通りだ。

 リビングに入ったけど、荒らされた感じもないし血の跡もない……


「はぁ……よかった……喉が乾いた……水をもらってもいいかな?」


「うん。まったく……お母さんが帰ってきたら、ちゃんと謝ってよ? まるで木箱に引きずり込まれたみたいに言ったんだからね?」


「……そうだな。安心した……」


 リビングをカウンターで仕切っている形のキッチンに入る。


 どうかしてた……

 疲れてるのか?

 全部勘違い……

 ……え?


 キッチンの床にこんなラグ敷いてあったか?

 赤黒い……

 ラグじゃない……?

 液体?

 床からゆっくり上に視線を向けると……


 ……!?

 木箱!?


「うわあぁぁぁぁぁっ!」


 ラグじゃない!

 血だ……

 しかも大量の……

 まさか……

 本当にお義母さんが……


「もう! タカちゃん! 変な声出さないでよ!」


「ほら! 木箱がある!」


「また木箱? もうやめてよ……」


 呆れた表情のノドカが、カウンター越しに覗き込んだ。


「本当にあるんだ!」


「もう! また変な事……え?」


 ノドカの瞳が見開いてそのまま表情が固まっている?


「ノドカ? 木箱が見えるのか?」


「木箱なんてないよ! 何それ……床にこぼれてる液体は……」


「え? 液体? そうか。木箱は見えなくても血は見えるのか……」


「木箱……まさか……液体の真ん中に四角く床が見えるのは……木箱があるから?」


「……警察! 警察を呼ばないと!」


「……お母さん……嘘でしょ? 本当に木箱に……いやああぁぁっ!」


 ノドカが座り込んだまま震えている。

 スマホ……

 警察に電話……

 ダメだ。

 指が震えて番号を押せない……


 タクシー……

 まだいるか?

 運転手に電話をかけてもらおう……


 震える足でなんとか外に出ると、もうタクシーがいなくなっている。


 あぁ……

 待っててもらえばよかった……

 立っていられずに座り込むと背後のアスファルトを踏む音が聞こえる……


 ……まさか

 木箱……?

 ダメだ……

 恐ろしくて振り向けない……

 

 お義母さんの次に引きずり込まれるのは……

 俺……?




「あの……大丈夫ですか?」


 ……中年の女性の声?

 木箱じゃないのか?

 ゆっくり振り向くと……

 数人の中年の男女が集まって俺を見つめている。

 

「あ……あの……警察……警察を……呼んで欲しくて……」


 ダメだ。

 上手く息が吸えない……


「警察なら呼びましたよ。すごい悲鳴が聞こえましたから……」


「あ……ありがとう……ござ……あの……中に……妻が……」


「妻? もしかしてノドカちゃんの旦那さん?」


「あ……はい……あ! しまった!」


 ノドカを木箱と二人きりに……


「ノドカ! ノドカ!」


 もつれて上手く走れない足をなんとか前に進めると、やっとの思いで玄関に入る。


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