夕立
「あっちゃー、ふられちゃったねー」
私の横で杠葉が呟いた。
それは、眺めていたクラスメイトの告白のことなのか、はたまたこの頃よくある夕立のことなのかわからない。
杠葉は私の幼馴染だ。容姿端麗で成績優秀、部活は私と同じく吹奏楽部に所属している。
学校のマドンナ、憧れの的という感じだろうか。
「自分は告白されるの嫌いなくせして、人の恋愛みるの好きだよね。告白OKしたら選び放題だろうに。」
私はあえて少しきつい言い方をする。
「こらー!そんな言い方しない!それにやっぱ私は好きな人いるしね、他の人に告られるのもなんか。でも恋愛自体は大好物なので!!」
杠葉が胸を張っている。そこ多分ドヤるとこじゃない……
ふと時計を見ると、もう5時を回っていた。
「そろそろ帰る?うちら今日塾だし。」
「そうじゃん!!八木セン会えるの楽しみー!!」
八木セン、本名八木隆年、z世代とは思えない古風ネームだ。大学生。それが彼女の今の好きな人で、塾講師だ。塾講師と生徒が付き合うって言うのは割とある話らしいし、何より杠葉なら心配ないだろう。
「にしてもすごい雨だよねー、制服ぬれたんですけど!これだから夏は。」
「冬は夏が1番好きっていってたくせに。」
気持ちはわかるけど。
「だって学校がないんだよ!?私たちが解放される束の間の期間、それが夏休みじゃあないか、夕架くん。」
夕架、私の名前だ。久しぶりに杠葉の口から聞いた。
「まあ確かに。これで部活さえなければ最高なんですけどねー、そうはいかないよねー」
私は素直になれなくて、また憎まれ口を叩く。
そのとき私は、向かいの横断歩道に見覚えのある人物を見つけた。
「あれ、八木センじゃない?」
杠葉の空気がパッと明るくなって、こちらに寄ってきた。
「え!?マジじゃん!ちょっと話しかけてくる!」
「いってら」
杠葉は積極的だ。相手が誰だろうが仲良くなりたい人とは仲良くなれるし、好きと言う気持ちをきちんと出している。
現に今も、3歳はうえであろう八木センと対等に話し、会話を弾ませている。
私もそうなれればよかったのに。
冗談でも、ちゃんと好きって伝えられたらよかったのに。あんな大学生より、私の方がずっと、十数年一緒にいるのに。何がちがったんだろう。身長?顔?性格?それとも、性別?
しばらくして、視界に2人が入らなくなった頃、杠葉からLINEが来た。
『置いてっちゃってごめん!!八木センと一緒に塾まで行くことになった❤️先行ってるね☺️』
あーあ。またとられちゃった。
雨粒が落ちた。
液晶が三原色にわかれてみえる。
私はどこにも属せないから、
いっそ夕立に溶けて消えてしまえたらよかったのに。
るるるるるるあです!
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