6話 おにぎり弁当の日
三つ子にアラームが聞こえない内に起きて部屋を抜け出し身仕度を整える。
炊飯ジャーに一升二合の米を仕掛け予約炊きする。鮭の切り身に塩をふり、グリルで焼く。
夜の間に解けたミンチをみじん切りにした玉ねぎとフライパンで炒める。砂糖で味付け。茹でたじゃがいもを皮と芽を取り除き潰して砂糖で味付けしたミンチと玉ねぎと混ぜて塩コショウを利かせて味見。
「ほんのり甘くて美味しい……」
小判型に成形して小麦粉⇨溶き卵⇨パン粉の順番で付けて油で揚げる。そう、肉コロッケだ。最初はハンバーグの段取りだった安達さんはミンチの量がそんなにないのを聞くなり肉コロッケにシフトチェンジしたのだ。
それに、揚げ物に自信がない僕でもIHコンロに温度管理してもらって、きつね色になったら揚げるのを止めたら良いんだから、簡単に出来る。こうして15個のコロッケが出来た!
グリルに焼くのを任せていた鮭の切り身を全部出して身をほぐす。タラコはそのまま焼いて生じゃなくなったら、O.K.。ぶつ切りしてナイロン手袋して炊き立てのご飯を握る。
「あ、っち!痛え!ちょっと待った!」
まだ形になってないご飯と具をちょっとだけ皿の上に置く。
携帯で安達さんのメールを見る。
「ご飯はよく混ぜて手に水⇨塩の順番に付けて熱いご飯を手のひらに載せ、真ん中に具を起き包み込むように握り、具が真ん中に来たと感じたら、三角形になるように軽く回転させながら握る?回転?ま、いっか。三角形までやってみよう!」
……なるほど。握ってたらわかった。三角形にするのには、ちょっとしたコツがいる。熱いから素早く握ってたら水車が回転するようにおにぎりが回る。ん?優しく握れ?形のキープが難しいよ!軍曹殿!!
子供用の丸いおにぎりはラップでキュッと包んでたくさん作った。
昨日の朝ごはんにしたおにぎりは食べ汚しが無くお支度が楽だった。
今日もそうする。
三角形のおにぎりを縦長に切った焼き海苔で包むと、それなりに見えて来た!
自分がコンビニおにぎり作ったなんて!ちょっと感動。大きなおにぎりを4種類各一つづつ入れて、卵焼きに挑戦する。
味付けは砂糖と天つゆ。刻みネギをたっぷり入れて薄焼き卵をひたすら巻く、流し込んで巻く、焼く、乾かない内に巻く。
何個か焦がして失敗して、ようやく焼き色が付いたけど食べられる物が出来た。
あ、洗濯機かけなきゃ。
一旦、キッチンから離脱。洗濯機を回してから、再びキッチンへ。真ん中が膨らんで美味しそうなコロッケを3つづつレタスの敷き布団の上に載せミニトマトと切った卵焼きを一本づつ入れたら、大貴兄のお弁当以外はパンパンだ。もう冷めているのでフタをする。
大貴兄のお弁当にはおかずの空き地にタラコスパゲティを1人前作って入れた。良かろう!
大貴兄が起きて来て、焦がした卵焼きをつまみ食いしてた。
「割と美味い!出汁巻きみたいだ。これ、朝ごはんで食おう!おっほ!弁当超美味そう!三つ子起こして来るな!」
今日はよく眠れたらしい大貴兄は、超ご機嫌で僕と三つ子の部屋に入って行った。
今日は花麩のみそ汁。凛々がスーパーでこれが欲しいとダダをこねたのだ。
母さんがみそ汁にワカメと一緒に入れてた思い出の品。
2週間もみそ汁作ってたら、味噌の量もわかるようになった。
今では普通のみそ汁が作れる。
レタス千切って胡麻ドレッシングかけてサラダ。飲み物は麦茶。プラスチックのマグカップにストローをつけて出来上がり。
お弁当の麦茶を三つ子たちの水筒に入れて大人のお弁当に付ける。
大人用の水筒は今日買って来る!
お弁当袋も三つ子用で申し訳ないが、いきなり言われた事だから仕方ない。ガマンして!
三つ子たちの着替えを手伝い、3人とも、お気に入りの服に着替えさせると、次は、顔を洗い、髪をくしけずり、ごはんだ。
「「こげてる!たべられない」」
「うん、ごめんね、焦がしちゃった」
真琴は何も言わずに口にして、卵焼きの乗った皿を自分の前に引き寄せた。そしてすごい勢いで食べ始めた。
「おいおい、真琴。俺にも恵んでくれよ」
すると食べられないと断言した寧々と凛々が焦げた卵焼きに視線を送っている。
大貴兄と真琴は、それを無視して食べる。結果、寧々と凛々が泣き始める。
「真琴、お願い、寧々と凛々に卵焼きを分けてあげて?」
真琴はニコッと笑う。
「い、や!たべられない、いったもん!たっくんにごめんなさいしないとあげないよ!」
「僕が焦がしちゃったのは、ホントだから、いいんだよ?」
「ダ、メ!これはしつけなの!」
そう言ってる間にも減っていく焦げた卵焼き。
困って大貴兄を見ると大貴兄も真琴と同意見のようで、泣きわめく寧々と凛々を放置している。
寧々と凛々は泣いてるだけじゃ手に入らないとわかったらしい、涙と鼻水まみれの顔で僕に「ごめんなさい」と言った。
最後の2切れが寧々と凛々の前に置かれた。
寧々と凛々は泣き止むとソレを食べた。
「「ママのたまごやきだ!」」
安達さんは、僕にどんな味の卵焼きを食べてたか聞き出すと、砂糖をたくさん入れた天つゆ入りの卵焼きを提案してくれたのだった。
ネギは彩りに入れた。嫌いなはずのネギも真琴は文句も言わずに食べた。
3つ子にコロッケを一つづつ出してあげたら、初コロッケだったらしく味わって食べていた。
「母さん揚げ物苦手だったから、全部レンジでチン出来るヤツだったんだぞ。コロッケはレンジでチン出来るヤツが無かったから、俺も手作りコロッケ初めて!楽しみ!」
責任重大じゃない?!僕。
寧々と凛々が夕食に卵焼きとコロッケのリクエスト。お!気に入ったみたいだ。
「真琴は?リクエスト無いのか?」
「ん?かんがえとくね!」
「俺もリクエスト!肉巻き野菜をお弁当で食べたい!」
「わかった!善処する!」
三つ子たちを歯磨きさせて送り出すと洗濯物を干す。
「今日も良い天気!」
◆○◆○◆マクロ医大の昼休み
「「「オオ!これが普通の家庭のお弁当!」」」
「料理初めて2週間だから、お前らの家のコックとは、比較するなよ?」
どことなく上品に大食いする友人達に釘を刺すが、心配いらなかった。
「コロッケ超美味い!!卵焼きはもうちょっと砂糖控えめで。おにぎり具が大きくてホロホロ崩れてちょうど良い握り具合だった!混ぜご飯って美味しいのな!」
「明日もよろしく!ポテトサラダ食べたい!」
3人の中でも無口な吉川は、空になったお弁当箱をジッと見つめている。
「吉川は?どうだった?」
「足りない。狩野と同じお弁当箱にしてくれ。月5万支払うから」
「飲み物の希望聞くぞ」
「「「麦茶でいい!美味しい」」」
スタイリッシュ男、日村がアニメキャラの水筒で麦茶を飲んでいるのに、噴き出しそうになるのを堪えてタラコスパゲティを食べていると視線を感じた。
新田がタラコスパゲティを食べたそうにしている。でも、やらない!
「俺も5万支払うから、狩野と同じお弁当がいい!」
「毎度あり!」
洸、お兄ちゃん大口の受注獲ったどーー!
初めまして榛名ののです。
うっかりご挨拶を忘れてました!
申し訳ございませんm(__)m