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たっくんのお弁当  作者: 榛名のの(春夏冬)
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5話 タラコスパゲッティの日

お弁当が実は白いごはんを持って来るだけだったとわかった午前中。

 へこみながらも受けたバイクのテストは合格で、早速免許を発行してもらい、大貴兄のお迎えを待っていると後ろから子供に足に抱き付かれた。


「たっくんだいすき!およめさんにしてあげる!」


「真琴かあ。びっくりしたぞ、どうした?」


「おべんとう、ありがとう!だいすき!」


「真琴はリ○とガ○パール大好きだもんな?よかった!ヨイショ。車はどこに止めてある?」


真琴を子供抱っこして指差す方に連れて行く。

 大貴兄達が車の前にいた。寧々と凛々にわがままを言われているのか、顔色が悪い。


「そんなこと言ってもなぁ?」


「「ママのタラコスパゲティがたべたい!!うわあああああん、ママァアア」」


真琴が僕に耳打ちする。


「おべんとう、すきなキャラじゃなかったから、むちゃぶりしてるの」


「ち○かわじゃないなら、何が好きなんだ?」


「○フィ」


「そういやあ、日曜の朝見てたな。……母さんのタラコスパゲティか。タラコスパゲティ自体の作り方を知らないから安達さんに聞くか」


「キヨちゃん?」


「そう、キヨちゃん」


携帯で連絡すれば安達さんは簡単に作り方を教えてくれた。


『薄皮に包丁で切れ目を入れて薄皮を引っ張りながらタラコを包丁でこそげ取るの。そこまでは問題ないけど、どこまでお母さんが手間をかけてたかね!』


「というと?」


どういうことだろう?


『パスタを茹でて、湯切りします。バターを絡めたのか、バターでパスタを炒めたのか、はたまたオリーブオイルだったのか、たっくんの記憶にかかってるわ。それから、タラコを和えるだけだから、簡単に作れるわよ。ファイト!』


通話が途切れた音を聞きながら僕は、サァーッと自分の顔から血の気が引くのを感じた。

 これは、タラコスパに限った事じゃない。

自分の記憶力との戦いが今始まった!


 とりあえず安達さんに聞いたことを実践した。タラコスパは狩野家では人気メニューだったので何種類か作って大丈夫だろう。 

買い物カゴにタラコを買い占める勢いで入れた。パスタは大容量のを買おうとしたら、大貴兄が茹で時間5分の一人前づつ結束してある奴を3袋買い物カゴに入れた。

 あと、味付けのりのパックに入ったのを買う。


「良く、お使い行ってたからな。タラコスパゲティにはこの海苔が千切って乗ってた。バターなんか使ってたか、どうだかわからないぞ。母さんだからな!」


「オリーブオイルは?」


「そういや、時々買ってたな」


オイル売り場に行きオリーブオイルの値段を見て僕と大貴兄は目を合わしてソッとその場から去る。高すぎるんだよ!アウトだ、アウト!


家に帰ってから皆からお弁当箱を回収する。寧々と凛々がテンション低めで食べにくかったとクレームをつける。

大貴兄が、寧々達の頰を摘まんでお説教する。


「たっくんがアレ作るのに、どれだけ大変だったか、わからないのか?!優しい気持ちが無い子はよその子になるか?!」


「だって!○フィがよかったんだもん!なんでち○かわなの!まこちゃんはちゃんとすきなのだったのに!アタシとりりちゃんはテキトーなの!!」


うわあああああん。


ああ、カオスだ。

 大貴兄と選手交代して寧々と凛々を抱きしめた。


「ごめんなさい。ち○かわは僕が好きだったから、大好きな寧々と凛々に食べて欲しくて作ったの。今度は○フィのキャラ弁作るね」


「そ、っか、たっくん、がすきなのだったの」


「……しかたないなあ、たっくんは!こんどはちゃんとつくってね!」


指切りして手打ちになった。ハー、女の子はわからないよね?

 騒動してる間に大貴兄が、パスタを茹でてくれてた。3分の1バターとタラコを絡めて、3分の1パスタをバターで炒めてからタラコを和える。残りの3分の1はタラコを和えるだけ。

結果は、どれでも無いという、まさかの結果だった。


「「「あのね、おいしすぎるの!」」」


「「ええ?」」


湯切りしたパスタにバターとタラコをただ絡めただけのものが三つ子のお眼鏡にかなったらしい。争奪戦になっていた。


「美味しかったら、いいだろう?」


「だいちゃんはおんなごころがわからないのよね!これだから、モテないのよ!」


スパゲティを噴く僕。

大貴兄は目が死んでた。


「寧々、幼児に女心を語られてもなあ…」


「やだ、サイテイ!デリカシーがないわ」


「凛々、そのお前らの知識は何処から持って来た?」


「「おとめのひみつよ!」」


かしましい寧々と凛々とは違って、真琴はタラコだけ和えてるのを食べてから、小首をかしげて考え込んでる。

 僕は噴き出したパスタを片付けながら、真琴に声をかける。


「どうした?真琴」


「めんがもうちょっとちゃいろかったよ」


さすが未来のアーティスト!目の付け所が違う!

カツオダシ3倍のめんつゆの出番だ!

タラコだけ和えてるパスタに回しかけて混ぜる。


「「「「この味だよ!!!」」」」


大貴兄が涙ぐむ。


「あ、忘れてた。お弁当うまかったけど、弁当箱デカすぎだから、2段になってるの買って来た。一つにごはん詰めて、もう一つにおかず詰めて」


うっ、おかずのレパートリー増やさないと!


しかしながら、出された新しいお弁当箱は4つ。どういうこと?


「いやあ、友達がさあ、一人1カ月3万円やるから作ってって。いいアルバイトになるだろ?」


「いいけど…その人達好き嫌い無いの?」


「なんかさ、手作りお弁当に憧れてるみたいでさ、とにかく作ってって!」


「わかった!飲み物は、麦茶でいい?あと、男の人だけなの?」


「おう!男ばっかだから、ボリューム重視でよろしく頼む!」


もう、ショッピングモール閉まっちゃったよね?お肉がミンチしかない。解凍して、安達さんに相談してみよう!

 あと、卵と、今日買ったタラコと昨日買った鮭の切り身、カマボコが少し。


安達さんはまだ、起きてた。


『野菜は何があるんだい?』


野菜室を覗きながら返事する。


「玉ねぎ2つと、レタスが半分、ミニトマトが8つ、ネギが5本、じゃがいもが6個です!」


『全部使うつもりで作るんだね!いいかい、焼き海苔はまだあるかい?あと食パンは残ってるかい?』


「はい、あります!」


『コンビニのおにぎり食べたことことある?』


「はい!あ、それで焼き海苔!!」


『焼きタラコと塩鮭と混ぜご飯のおにぎりが出来るだろ?焼き海苔は大きいから3分の1くらいにキッチンばさみで切って使う。あとは・・・だよ。詳しい作り方はメールするね』


「はい!ありがとうございます!軍曹殿」


メールはすぐに送られて来てそれに従って下拵えして明日は3時に起きるように目覚まし時計のアラームのセットをした。


今日はいろいろ大変だったけど、小さい子の話はよくよく聞いてあげないとえらい目に合うという典型的な例だった。

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