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たっくんのお弁当  作者: 榛名のの(春夏冬)
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35話 初舞台の日

サラダバーの前でワアワア彩さんと騒いでるとカンさんが来た。


「また、サラダばっかり食ってる!」


「だって!サラダしか残って無いんだもの!遠近シェフもう何も無いって言ってたし!」


「朝の食パン残ってるから、たっくんにフレンチトースト作って貰えよ」


キラキラした目で彩さんに見つめられて根負けした僕は朝仲良くなったロケ弁係のADさんに卵とミルクと砂糖の買い出しを頼んだらコンビニに配達を頼んだようで、あんまり待たずに入手出来た。

 それもそのはず、夢道館内にあるコンビニらしい。

カンさんに3人前、彩さんに3人前、僕に2人前作ってこっそりキッチンで食べた。

 片付けしてた小柄なコックさんが、イチゴのコンフィチュールをくれたので皆で掛けて食べた。……うっとりするくらい美味かった!

無糖で作ってるらしい。作り方ネットで検索してみよう!


客が入り始めたから、もうステージでのリハーサルは出来ない。

 

「本番同様に歌って踊って見て、恋、聞いて覚えて」


吉川さんとアズール・クラーロ様ご一行の前での披露。良く踊れたし声も出た。


「曲が合わない」


麻人さんの言葉にショックを受ける。


「だから、言ったろ!?チグハグだって!テメェがこれが良いって決めたんじゃねえか!!今更ダメ出しするな!」


「2人共止めて!たっくんが困ってる」


ハッとした表情を浮かべると麻人さんとカンさんは僕に頭を下げた。


「「ごめん!!今日は出場を無かったことにして欲しい!ちゃんとたっくんに合う曲を作らせてくれ!」」


「わかりました!ありがとうございます!」


僕、ちゃんと笑えてるかな?


皆本番で居なくなった控え室ですっかり力が入らなくなった体を動かし、真琴に電話した。


『たっくん!でばんおわったの?!どうだった?』


真琴の声を聞いたらホッとして涙がこぼれた。


『たっくん?ないてるの?だれがいじめたの?ぼくがのろってあげる!』


「そんな、コワイ真琴は、イヤ、だよ。たっくんの力不足のせいなんだから、悔しいけど仕方ないの!」


仕方ないんだよ。真琴。


『そんなことでなかないもん!たっくんは!なにがあったか、せつめいしなさい!』


その言い方が大人みたいで思わず噴き出してしまったら、電話の向こうで激オコになった真琴に一言言う。


「ありがとう真琴。真琴が心配してくれたからたっくん元気になった!」


『ホント?!……よかった!たっくんがげんきじゃないと、みんなげんきじゃなくなるから、ハッピーでげんきになってね!』


「真琴、大好きだよ。また、明日ね!」


『ぼくもたっくんがだいすき!あしたもおでんわまってる!あしたね!』


携帯の通話を切って、とりあえず気分転換にシャワーを浴びて顔を念入りに洗う。

顔のケアをしながらウオーキングマンで英語の聞き流し学習を2時間近くしてると、ロケ弁係のADの多田さんが、急いでカレーを作って欲しいと僕に土下座をした。

慌てて立たせて2人でキッチンに行く。

 買ってきてたのはA5ランクの和牛肉の切り落としとニンジンとタマネギと何故かシシトウ。ニンジンとタマネギはみじん切りしてレンジでチンして鍋で牛肉の切り落としと一緒に炒めコンソメキューブで煮る。コンソメキューブが溶けたら火を止め刻んだカレールーを入れて溶けるまで混ぜて、再び火に掛けて10分程度とろ火で煮る。さあ、シシトウだ!

シシトウは油で素揚げして塩コショウをパラリとかけてご飯とカレーの横に盛り付けたら出来上がりだ。


キッチンは会場に近いから、会場からわぁああああ、という歓声が聞こえる。


「運ぶの手伝って貰えますか?」


「いいですよ。熱いから気を付けて下さいね」


盛り付けた20皿のカレーライスはなんとステージから客席の中央へと続くランウェイのテーブルまで運ばされて、明らかに客席から引っ張り上げられたファン達に給仕させられた。えらい目に遭った!

ステージの袖に急いで戻るとアズール・クラーロの3人がステージの端から端まで走ってファンサービスしていたのがチラリと見えた。


21:00に終わった夢道館コンサートはあと2日続く。

ぐったり疲れた吉川さんと僕は今日ばかりは贅沢してオーシャンブルー東京のエグゼクティブスィートに2人して泊まった。

 吉川さんがお風呂から出て来ないので生存確認に行けば、やっぱりジャグジーの中で寝てた!起こしても起きないので、しっかりメイクしてる顔を洗顔フォームで洗顔していれば、息苦しかったのか、やっと起きた。


「ああ、メイクを?ありがとう。さすがにメイク落としなんて持って無かったから助かるよ。……マネージャー出来なくなったね」


「僕は大丈夫。渡会さんが明日から付いてくれるから。スケジュールの引き継ぎお願いします」


「…泣きながら電話してたね。ごめん。実はあの部屋隠しカメラがあって会場から覗けたんだ」


僕は顔が真っ赤になるのを自覚した。


「それでね、アズール・クラーロの3人がファンにさすがにやりすぎだってブーイング受けてね、元気にさせようって、カレーの企画が持ち上がったんだ。材料はサイコロで選んだからさんざんな物だっただろうけど。アズール・クラーロのファンって、基本的には優しいね」


そうだったんだ。人の優しさに思わず涙があふれた。吉川さんは見ないフリでジャグジーから出て行った。

 僕も泣いてなんかいられない。

曲が合わないなら、自分で作ればいい。


そういう訳で早く寝て、早く起きて作詞作曲して見た。五線譜に起こせないから、ハミングで口ずさんでると、吉川さんが4:00頃に起きて持って来ていた五線譜にサラサラと写譜ペンでメロディを書いてくれた。

 そして「行くよ」と言い夢道館のステージに置いてあるグランドピアノで何回か弾くと編曲して僕に歌わせた。芸能人にファンが多いシンガーソングライターの秋原織行あきはらおりゆきさん風のアレンジは歌いやすくて僕は初めて自分で作った曲を歌えた満足感で、充実していた。

 ステージの袖で突っ立っている麻人さんとカンさんに気付いた。


「「なるほど、こういう曲が合うのか」」


2人はとてもへこんでいた。


「せっかく曲をくださったのに申し訳ありませんでした」


「「イメージと違ってたってわかったから、いいんだよ」」


麻人さんとカンさんは僕の頭を撫でると舞台袖に消えた。

 ごめんなさい。2人共。


6:00朝ごはんの炊き出しが始まった。

 今日は、11:00からの昼公演と、18:00からの夜公演の、2公演なのだ。


昨日の夜サラダバーとフレンチトーストしか、食べられ無かった僕はスタートダッシュを決めて見事フワフワのオムレツとカリカリのベーコン、鶏ガラから炊いたコンソメスープ、ややハードめの焼き立てパン3個をgetして控え室で食べた。吉川さんも同じく確保して控え室で一緒に食べている。


「おっはよう!2人共疲れは取れた?」


控え室のドアを元気に開けてやって来たのは彩さんだった。僕たちは慌てて立ち上がり一礼して彩さんの座る折りたたみイスを広げるのだった。

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