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たっくんのお弁当  作者: 榛名のの(春夏冬)
34/41

34話 夏休み最初の日

自分の自由になる時間をほぼ、撮影されて僕のプライバシーは0になった。

 お弁当屋さんの仕事も撮影したいというので、撮影されてあげたら、梶さんと由美さんがノリノリだった!


 そして夏休み最初の日前日の夜やって来た大荷物のリンゴくんと旅支度の吉川さんに、目を丸くしていたら、吉川さんが夏休みの間リンゴくんがウチに泊まりに来てくれるという。真琴はジェルミさん達に相談済みだったらしく、狼狽えてるのは僕だけ。

 梶さんが僕に買った覚えの無い空色のスーツケースを渡す。


「キヨちゃんから、旅先で着る服と化粧品だってさ!頑張れよ」


キヨちゃん…ありがとう!


「ありがとう梶さん!真琴とリンゴくんをよろしくお願いします。ジェルミさん迷惑かけますけど家事をお願いします。リンゴくん、真琴と楽しく遊んでね?」


「ハイ!たっくん、れんちゃん、いってらっしゃい!」


いってらっしゃい?って、今から行くんかい?!

 

 用意された服に着替えて、ジェルミさんの運転で学園都市国際空港へ。国内便の搭乗手続きをして、いざ空の旅へ。

 1時間後、東京に到着。

タクシーでアズール・クラーロとの待ち合わせ場所のレクタングル・ミュージックエンタテインメントの事務所に行く。

 この時判明したのだが、吉川さんタクシー初体験。メーターのグングン上がってゆく運賃を見て「サギか?」とつぶやきドライバーさんを怒らせた。吉川さん!!ちょっと黙ってて!

 事務所はこじんまりとしたビルの2階にやはりこじんまりとあった。

撮影隊が待ち構えていて若いADくんが事務所まで案内してくれた。

ドアを開けるとど迫力の大貴兄とは違う系統の大人のフェロモンをばら撒くイケオジが立ちふさがっていた。


「ほう、お前が麻人に人間が歌う曲を作れと言った小僧か?なかなかのツラ構えしてんじゃねぇか?」


「初めまして!こんばんは。狩野洸です!今日からよろしくお願いします!」


体を二つに折る勢いでお辞儀するとやっと観察するのを止めてくれた。


「入れよ。麻人達が待ってる」


事務所内に招き入れられると大変緊張した様子のアズール・クラーロの3人と俳優さんらしき美形の30才くらいの男性2人が応接間のソファーに座っていた。


「ジンさん、彼、どうでしたか?」


ジンさんと呼ばれたホストクラブの帝王並みのフェロモン魔神は、色気漂う笑みをふっと浮かべる。


「キャラが彩と被るからラップが入った調子の良い曲歌わせろ。たまに、シリアスな曲作って歌わせてやってたら上手いこと行くだろ」


「「「アドバイスありがとうございます!」」」


「後はお前らが責任持ってやれ。俺は知らん」


そう言って事務所の奥の扉に入って行った。

 ジンさんが居なくなるとアズール・クラーロの3人は虚脱状態で口を開くのも億劫そうだった。

 美形俳優さんのクールビューティーの方が名刺を吉川さんに渡していた。


「アズール・クラーロのマネージャーを勤めて居ます矢田部と申します。よろしくお願いします」


「貴方が矢田部さんですか!てっきり事務所所属の俳優さんかと思ってました。大学生の吉川 れんと申します!よろしくお願いします!…ところで麻人さん、左手の人差し指をどうかなさったのですか?」


室内が痛いくらい静かになった。

確かに人差し指と手の甲を覆うように包帯が巻かれている。

 麻人さんは目を伏せて、自嘲しながら口を開いた。


「内緒なんだけど、ケガしてるんだ。ちょっと急いでいるのに意識取られちゃってね、車のドアを思いっ切り閉めたら、指先挟んで血がドバッと出て大騒ぎさ。矢田部には怒られるし、ジンさんには呆れられるし骨折は幸いしなかったけど、指先が内出血で黒くなってて、感覚が無いから明日のコンサートの代役のピアニストを探してるんだけど、どいつもこいつも気に入らなくて難航中」


思わず吉川さんを見てしまった僕はウカツだった。


「「「「「ほう~、まず試してみようか?吉川くん」」」」」


「……たっくん、貸しだから、ね?」


「ごめんなさい、吉川さん!」


こうして、事務所内に置いてあるアップライトのピアノの前に座った吉川さんは、僕が思ってたより数十倍情熱的な演奏で奥の扉に入って行ったジンさんまで引っ張り出した。

 アズール・クラーロの曲もほぼ完璧に弾けて麻人さんのレッスンを朝まで受けて、そのままコンサート会場の聖地、夢道館へ。


 まずは朝ごはんを作り皆さんに提供。サンドイッチくらい毎朝作ってら!任せとけ!

腹持ちを良くする為にパンの耳を落とさず提供。大学生のアルバイトさん達にゆで卵の殻剥きやらみじん切りを手伝ってもらう。

 ロケ弁係の5人のADさんと仲良くなった。ADさんの仕事は雑用が主な仕事で、走り回って帳尻合わせるのが精一杯らしい。

 アズール・クラーロのコンサートのお弁当は炊き出しが基本で今朝はコックさん達が渋滞に巻き込まれて遅れてしまったらしい。まともな、料理が出来る学生さんに名乗り上げてもらうのにも時間ぎりぎりで困ってたという。そこに僕が通りかかる。予定通りサンドイッチ作って食べる。←今ココ

 アズール・クラーロの3人がよく食べるので、シューファルシーもキャベツ2玉分作ったら吉川さんがただトーストしただけのバケットと一緒に食べてた。結構お腹いっぱい食べたね?シャツの上からでもお腹が出てるのが解る。コックさん家族が到着。僕の役目果たせた!


「そんじゃ、新曲のダンスから覚える!ハイ!」


振付師さんが振り付けたダンスをただトレースするだけの簡単な作業です!

 シュウさんみたいな激しいダンスじゃないからつまんない。不満が顔に出てたんだろう。


「あんまり激しいと歌いながら踊れないから加減してるんだよ。歌いながら踊れてから文句言って」


「ハイ!わかりました!歌のレッスンお願いします!」


キレた振付師さんがカンさんを連れて来た。

 カンさんは困った子を見る目で僕を見ると1曲ギターをかき鳴らしながら、アップテンポなJーPOPを歌い始めた。


【止めて、誰を見てるの♬僕だけだって、言ったじゃない♬余所見しちゃヤだ♬僕だけをみつーめてー!♬】


「ってことで、麻人が気に入ったから、採用された【僕だけ見つめて】。要所要所子供らしくして、ラップ部分は俺が考えたから、死ぬ気で夕方までに覚えろ!」


カンさんは1曲ギターで伴奏して歌って録音した音源をウオーキングマンというイヤフォンで音楽が聞ける手のひらサイズの機械に入れて僕に渡してリハーサルに復帰した。

僕は与えられた控え室でダンスしながら歌いまくった!

 結果、昨日の夜から着てた服は汗みずくになり、僕はシャワールームに入って汗を流すとスーツケースの中に入ってる衣装に着替えた。

配信のと路線が違う衣装を謎に思いつつ、でも曲とは合うからいいや、と脱いだ服を片付けて、控え室から出るとばったり吉川さんと会う。

 吉川さんも汗みずくだ。


「吉川さん、控え室にシャワールームあるよ?入れば?」


「入る!たっくんは、ご飯食べて来なさい。大会議室で今皆食べてる。私も食べた!」


大会議室に急いで行くと、ワインとお肉の香りが漂っていた。取り放題のサラダバーはものすごく残っている。

 ありがたく確保して食べてると、隣りに彩さんが来た。


「リハーサル終わりました?」


「うん!恋くんが頑張ったから、何とかなりそう。マネージャー盗っちゃうから、渡会さんをトレードするね!」


渡会さんとは矢田部さんと一緒にいた超絶美形の彩さん専属のマネージャーさんだ。

 しゃべると江戸っ子な感じが随所に感じられる気安い人だった。庶民的金銭感覚が一番似ていてあっという間に打ち解けられたが矢田部さんに耳打ちされた強烈な一言が頭から離れない。


 私の、ですからね?


……そういう意味だろう事は2人の間に流れる甘い雰囲気から、想像できる。

 だから、彩さんにこう返した。


「矢田部さんに殺されます!」


「大丈夫、僕も生きてるから!」

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