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たっくんのお弁当  作者: 榛名のの(春夏冬)
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32話 作詞と英単語と真琴

「thereはこう!最後のeが抜けてる!」


「申し訳ございません!吉川さん」


「ここまで、英語苦手なら、来年の春に入学延ばした方がいいかも、しれないね。ひと月で何かしながら教えるのは無理。……ちょっと方法を変えて見ようか」


「といいますと?」


「聞き流しする英会話CDがあるから、まず、ネイティブな発音に慣れようか?確か去年林檎が使ってたから、持って来るよ!来週の日曜日にね。聞いてる内に勝手に話せるようになる人もいるから、物は試しだよ」


「ありがたくお借りします!」


「じゃ、今日はこれで。お昼ご飯ごちそうさま。林檎!帰るよ」


「れんちゃん、もうちょっと…」


「ダメだ。櫓さんのご飯食べない気か?ダメだぞ」


そういうと吉川さんは問答無用で林檎くんを小脇に抱え帰って行った。


ダイニングテーブルの上を片付け、夕飯の支度をしてると真琴が足に抱き付いて来た。


「どうした?」


「おひるごはんのシューファルシー、リンゴくん、スゴくおいしかったって!ばんごはんもたべたかったみたいなんだけど、つれてかえられちゃった。リンゴくんかわいそう」


「リンゴくんにも、ご飯作って待ってる人がいるから、勝手なことしちゃダメだろ?吉川さんだって食べたいの我慢して帰ったんだよ、きっと」


「おとなって、かわいそう」


「そうだな。吉川さんは我慢強い人みたいだから、ちょっと心配だな」


「たっくん、よしかわさんをにがしちゃダメだよ!よしかわさん、ピアニストになりたかったんだって!スゴくじょうずだって、リンゴくんがいってたよ。たっくんががっきできなくっても、よしかわさんがいればだいじょうぶ!」


「コラ!真琴!何でもかんでも周りを巻き込まないの!たっくんは、真琴のそういうところがキライだ!」


真琴の体が硬直した。


「たっくんが、……ぼくのこと、キライ、だって、……うわぁああああん」


大号泣した真琴のご機嫌取りに夕飯はタラコスパゲッティになった。

食べながら泣いていたが、何でもかんでも周りそこら中を巻き込んではいけない!


例え、占いでも、だ。

もうあんまり占いさせるのはやめよう!


お風呂に入って真琴を泡あわにして洗っていると、真琴がまた泣き始めた。


「さっきはごめん。真琴。……でもね、真琴の占いに皆が頼るようになると、真琴がツラくなる日が来る。真琴がイヤだって言っても無理矢理占いさせられて当たらなかったら、八つ当たりされる。たっくんは、そんな真琴見たくない!」


「たっくん……すき、だいすき!でもね、うらないはかぞくのためにしかしないよ。それは、けいちゃんとやくそくしたから。ありがとう、いろいろかんがえてくれて」


「吉川さんの事は吉川さんが決めるから、吉川さんを巻き込むような事を本人に言ったらダメだよ?真琴」


「うん!たっくんがそういうならいわない!」


「ごめんな。さんざん助けてもらっておいて、こんな事言う僕は最低だ」


「たっくんは、ぼくのことかんがえてくれてただけだよ!たっくんもアワアワにしてあげる!」


真琴は一生懸命僕の体を洗ってくれた。そのせいか、疲れて湯船で眠ってしまって焦った。

 くにゃくにゃの真琴をバスタオルで拭き上げて下着とパジャマを着せて寝室に移動する。真琴と一緒にベッドに入りうつ伏せて寝そべり作詞する。


僕にキライと言われて涙した君。

 愛しくてすぐに撤回したくなる。

それじゃダメだ。魅力的な君のワガママで男達は言うがまま。


シャーペンを走らせていたのを一旦止める。


「僕の歌う歌か。どんなのだろう?」


英語苦手な僕の事を歌詞にしたら、Blackstarの二番煎じみたいになってしまった。

くしゃくしゃに丸めてゴミ箱に投げ込む。


その後【僕だけ見つめて】という歌詞を書いたがこれは、多分僕の曲になると確信できた。

後はノリで5~6曲作詞して就寝。

2:00に爽やかに目が覚める。作詞した落書き帳は真琴が手が届かない場所に隠す。


仕事場に出勤すると、由美さんが来てない。

 マキで仕事を梶さんと進める。


「体調崩したんでしょうか?心配ですね」


「たっくんも夜遅くまで起きてたろう?体は大切にな!」


「はい!」


その日は大学への納品がお昼になり、お弁当を出品してると囲まれた。


「お弁当、君が作ってるの?」


「はい、何時もお買い上げいただきありがとうございます!」


「高校生?」


答える必要はない!


「どうぞ!お待たせ致しました!」


ジェルミさんと僕は必死で囲いを突破して車にたどり着いた。


「大変な目に遭いました!」


「早く帰ろう!ジェルミさん」


「仕入れしないといけないネ。フラワーガーデン行きマス」


ああ、そうだった!早く作詞終わらせたくて気が急いてたけど、一番大事なのは毎日のルーティン。落ち着け、僕!


久しぶりの仕入れの量にドン引きしながら、買い物を終えて自宅に帰る。


帰ったら、洗濯。残ってるお惣菜にみそ汁を作って皆で昼ご飯。


昼ご飯が終わったら僕はお菓子作り。梶さんは、肉や魚の下処理。この二つが結構時間がかかる。


「由美さん大丈夫かなぁ?」


「あ、それな。とうとう息子さんにアルバイトがバレたんだと」


エー?!ヤバーい!!


「明日から来ないのかなぁ。由美さん」


「明日からも来るってさ!今日は、休んで悪かったって、言ってた。監禁されてたんだと」


「え?監禁!?やり過ぎじゃない!由美さんの息子さん」


「たっくんが帰って来るまで何のかんのと管巻いてたから、ちょっと脅してやったら、逃げた!奈良さん夫妻笑ってたな」


「脅して大丈夫なの?梶さんは」


「ちょっと裏でオイタしてるから、それを指摘してやっただけ。訴えて痛い目見るのはアッチだから、心配ない」


「よくそれを知ってたね?梶さん」


「こんな時の為にキヨちゃんが調べてくれてたんだよ」


「キヨちゃんへのお中元、何にしよう?」


話してる間にも作業は進む。


「たっくんにリボンを結んで贈れば?」


結んでる最中で真琴が取って行きそう。


「よし!大貴兄のポスターにしよう!」


「あんな兄ちゃんがいて、大変だな、たっくん」


「人ごみに紛れたらね!大貴兄に自分から近寄れる女の人なんていないよ」


「ああ、確かに鑑賞するには持って来いだが、声かけるのには勇気がいるな。ものすごく」


アイスボックスクッキーを切ってクッキングシートを敷き、天板に並べて余熱したオーブンに入れる。焼成してる間に詰め合わせのお菓子、マフィンを作る。

マフィンは簡単でお腹いっぱいになるステキなお菓子だ。

 一度、真琴に朝ごはん代わりに食べさせたら「あしたからもずっと、マフィンがいい!」って言ったのには参った。

お菓子だからいっぱい食べるのはダメ、って言ったときの真琴のスゴく悲しそうな顔。今も鮮明に思い出せる。

 そのマフィンを作って焼き上がったクッキーと交代してオーブンに入れる。

クッキーを網に乗せ、ラックに挿して冷めるのを待つ。袋詰めも結構大変で数が200個からなかなか増やせない。

 夏休みに梶さんが増やしたら、その後どうしよう?


16:00に明日の下ごしらえが終わり、洗濯物を取り入れようと触れて見れば梅雨時期のお日様の見えない中ではいくらわサンルームと言えど、乾いてない。乾燥機代わりのエアコンの風で乾かす。


「たっくん!ただいま!」


「お帰りなさい。真琴。今晩のご飯何にしようか?」


「タラコディップがいい!それとね、にくじゃが!とりさんのがたべたい!」


「何かもう一つ無い?」


「オニオングラタンスープがいい!」


チグハグだが、食べられない事もない。


「じゃ、それね」


「ごちそうだ!ごちそうだ!」


タラコディップはタラコを薄皮を取ってマヨネーズで和えるだけ。後は、キュウリやニンジン、セロリをスティック状に切ってグラスに立てて盛り付ける。それを食べる時に自分の好きな量、タラコディップを付けて食べるのだ。

 ニンジンがあんまり好きじゃない真琴に食べさせる良いおかずになっている。

 あとはササミのアッサリ肉じゃが。牛は高いし、豚は飽きた時に作る我が家の救世主。

煮汁をあまり残さない粉吹きいも風に作るのがポイント。スナックエンドウを茹でて添えると彩がいい。

オニオングラタンスープは、ガーリックトーストをコンソメスープの中に入れて、チーズを振り掛けてオーブンでチーズに焼き色が付くまで焼いたら出来上がりの簡単でゴージャスなレシピ。

 今日も晩ご飯作る時は生配信中。

んー、ガーリックトースト多めに焼いとくか。

うちのガーリックトーストの作り方は、簡単。オリーブオイルにニンニクのみじん切りを漬けて作ったガーリックオイルをバケットの断面に塗ってオーブンでトーストするだけ。


玄関のベルが鳴る。配信を切って、玄関のドアを開けるとアズール・クラーロのカンさんがギターケース背負ってニコニコ笑顔で立っていた。


「メシ食わせて~」


「ハイ!どうぞ!」


リビングに通すと真琴が絵を描くのを止めて、カンさんをガン見している。


「真琴、アズール・クラーロのカンさんだよ?ご挨拶は?」


真琴は僕の後ろに隠れて足の間からカンさんを覗き見している。


「すみません。いつもはこうじゃ無いんですけど。アズール・クラーロのファンなんで、緊張してるのかも……真琴、お願い、覗き見しなくてもカンさんは逃げないから、キチンとご挨拶して」


カンさんは、僕の後ろに回り込み真琴を抱っこしてあやし始めた。

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