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たっくんのお弁当  作者: 榛名のの(春夏冬)
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28話 将来の話し合い②

シュウさんにボイストレーニングを2時間みっちり受けた。

 シュウさんとノリさんの正気じゃない感じの目が怖かった!

 

「クシュン!」


「ごめん!シャワー浴びて来て。風邪なんかひかせたらキヨにブチ殺される!」


キヨちゃんつよつよ!最強!


熱めのシャワーを浴びて洗面所に出るとキヨちゃんが待ってた。慌てて前を隠す。

 無言でトランクスを渡されて素早く履く。用意された服はいつもの大人クールな感じの服ではなく、中高生達がうらやましがるブランドのカジュアルカッコいい服でアクセサリーまで男の子物。キヨちゃんは路線変えたのだろうか?

 キヨちゃんは目を座らせて僕を抱きしめた。


「ああ、もったいない!」


洗面所のドアがせっかちにノックされる。


「キヨ!早く!俺たちもヒマが無いの!」


俺にバスケットシューズを履かせると2人で洗面所を出た。


「髪の毛くらい乾かしてやれよ。何拗ねてんだよ!キヨ」


キヨちゃんは、ドライヤーで僕の髪をサッと乾かしてブローするとやっと、いつもの仕事大好きキヨちゃんに戻った。今日はメイクはしないらしい。


「カメラに向かって自己紹介して曲流すから踊れ。曲が途切れたら何でも好きな歌をアカペラで歌え!チャンスは1度きり頑張れ少年」


自己紹介?!ん?名前、年齢、特技?かな。


スタジオの真ん中に立ちキヨちゃん達が見つめているのを感じながら一礼して自己紹介を始めた。


「狩野洸、16才、特技は料理です。高校に行きながら仕事続けたくて芸能活動しようと決意しました。よろしくお願いします!」


曲が流れ出す。さっき踊った中で1番激しいダンスナンバー。ヤケクソになって踊ったら、途中から楽しくなって踊り終えたら笑ってる自分に気付いた。

 息を深呼吸して整えて、歌い出したのは本庄莉奈の大ヒットバラード曲「雪月花」。

 僕は男にしては声が高い。髪を整えると必ず女の子と間違えられたりするので、わざとボサボサにしてた。まさか、顔のせいとは思わなかったから、今になって身だしなみをちゃんとしたらよかったと後悔してる。

 そう、低音の歌姫のバラードは家族で行ったカラオケボックスで廊下で立ち聞きするお客様がいるくらい、評判がよかった!

 キヨちゃんに聞かせるつもりで歌ったら歌い終えて1拍すると3人が駆け寄って来て僕をハグした。


「「必ず、仕事を取って来る!」」


「金曜日の昼から土曜日の夜までで、終わる仕事でお願いします!」


「イベント系だな、ライブとかか?他の日はよ?何とかならないか?」


「んー、夏休みなら、なんとかなると思います!」


大学でお弁当売れないし、青空市場直売所のお弁当とお菓子の数なら、由美さんと梶さんに任せて大丈夫だよね。


「「ヨシ、任せろ!」」


「たっくん、時間大丈夫かしら?Mチューブでも歌ってみましょうね、服は違うのに着替えて」


お着替えした服はやはり大人クール路線。

モダンなマイクスタンドが置かれてノリノリになった僕はマイクスタンドを愛撫するように両手を行き来させ、昭和の歌姫のバラードを歌い上げた。


「……たっくんまで大ちゃん化しなくていいのよ?色気はほどほどで!もう1曲なんか爽やかなのお願い」


平成の歌姫のJーPOPを爽やかに歌う。青空の自由さを歌った名曲は小学校の卒業式で人気に火がついた曲で、この曲を歌うとちい兄がうっとりと聞き入っているのが、好きだった。


撮影が終わってキヨちゃんの隣りに行くと泣いてる!


「ごめんなさい、あんまりにも透明でステキな歌声に感動したの。急いで編集して配信するわ!」


「キヨちゃん、今から歌えるだけ歌うから撮影して編集してちょっとずつ更新してくれない?明日は大貴兄が帰ってきたり、お昼に夏休みの家庭教師を雇ったり忙しいから来られないから」


「そうねえ、毎日配信した方がいいし、メイキング映像があった方が【たっくんモデル中】の再生回数増えるからありがたい。じゃ、着替えたら、早速撮影開始します」


キヨちゃんは骨の髄までスタイリストだった。梶さんにお菓子作りを今日だけ頼むと由美さんが匡史さんと手伝ってくれてるから心配するなとのお達し。

 ジェルミさんには悪いけど夜中に迎えに来てとムリを言った。

2~3曲歌ったら着替え、を繰り返しているとキヨちゃんのリクエストで歌った日本とフランスの架け橋、7オクターブの歌声を持つ人気アーティスト【アズール・クラーロ】のボーカル彩の超高いキーが掠れて出なくてキレた。


「麻人のバカァアアア!人間が歌う歌作れよ!」


「いいねぇ!そのキレっぷり!惚れ惚れするよ!」


ちなみに麻人は、【アズール・クラーロ】の作曲担当のピアノ弾きである。自分も歌うがバリトンボーカルである。もう一人いるカンは、作詞とベースギターの担当で魅惑のテナーボーカルである。

 フランスではアーティストとして日本ではバラエティアイドルグループとして活動している。まあ、飛び抜けて若いのは彩だけだが、麻人とカンは伝説のアカペラボーカルグループ【無限】のメンバーで、コアなファンを抱えているのでも、有名で…


「あ、キヨちゃん!今のナシだからね!カット!このチャンネルが炎上するよ?!それに僕は見知らぬ麻人ファンに刺されたくないから!」


「ぷっ、何だかね!この子は。はいはい。ご飯にしようか」


キヨちゃんちのコックさんが張り切って作ってくれたディナーは、カメラが回っているのを忘れるくらい美味しかった!

キヨちゃんは晩酌してご機嫌になってるし、もうこれで撮影終了だよね。

 キヨちゃんは英語でお終いの挨拶っぽい事を言ってるし、僕はカメラに向かって手を振る。ペチリと軽いビンタをされて、まだ終わりじゃないのかと、気合いを入れる。


「ほら、終わったよ!着替えて帰るんだね!」


「何でビンタしたのさ?」


「私の気持ち何かよく分かってないのに、呑気にカメラに手を振ってるからこう、メラッとね!」


「ごめんなさい、ワガママ言ってるし、僕本意で申し訳無いんですけど頼れるのがキヨちゃんしかいないんです!」


「たっくん以外が言ったら、あざといからね?たっくんは、あんまり、ペコペコしないの」


「はあ?」


「ほら、帰ってお弁当つくるんだろ?頑張りな!」


「ハイ!」


玄関ホールの前に白いワゴン車が止まっている。梶さんが助手席に乗ってるから、後部座席に乗ったら真琴がパジャマ姿にブランケットをマントのように背負って抱き付いて来た。


「たっくん、おかえりなさい」


「ただいま!ねむいのに、お迎えありがとう真琴」


「おかおよくみせて!」


真琴はどう考えたって、眠気に勝ててない。ふらつく体を抱き寄せて頰にキスすればトロンとしたお目々は瞼をストンと落とした。


ジェルミさんが申し訳なさそうに、言う。


「寝かしつけたはずが、迎えに行こうとしたら起きて来たんですよ。ゾンビみたいでした」


「梶さんは?」


「タバコを買うついでだ。それに真琴くんが、新しい熨斗紙作ったから、知ってる印刷屋に頼んで来た」


「ありがとうございます!梶さん、ジェルミさん」



また、新しい一日が始まる。

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