23話 親子丼の日
夜中からザアザアと強い雨が降っている。
心配してた家事、育児はジェルミさんの従姉妹が家政婦さんとして大貴兄をフォローしてくれてるようで、ホッと一安心だ。
大貴兄たちがあちらのお国に行ってもう1カ月が経つ。
お弁当はその間も売れ続けて、今では500個作って医大内のグルメ市場に出品している。
メッセージ付き熨斗紙で興味を引き、味付けがエモいと、大学内の電子伝言板SMSで評判になってるらしく、毎日売り切れのメールがグルメ市場のスタッフさんから届く。
今晩は、賞味期限が今日の鶏の胸肉があるので、親子丼と豆腐とわかめのお味噌汁だ!
鶏肉を真琴が食べやすいくらいの大きさに切る。水を鍋に張り切った肉を入れて弱火でコトコト煮る。そうすると柔らかく煮えるって、キヨちゃんが言ってた。
そうそう、キヨちゃんのモデルだけどMチューブで動画再生回数がハンパないから、スポンサーさんがつきました!
紅茶の老舗ブランドフラッシュが、休憩中に飲んでるお茶をウチのにしてくれと、いろんな紅茶の入れ方と一緒に茶葉を山ほどくれたので、紅茶の入れ方を教える動画もオマケで作ってみたら、そっちの再生回数もハンパない事になった。
バリエーションが無くなるまでやろう、とキヨちゃんと誓うのだった。
ソレはともかく親子丼の進捗状況は、のんびりです。
「タマネギをスライスして肉に火が通るのを待ちます。味付けはキヨちゃんレシピは濃い醤油を使います。醤油5、砂糖3~4、みりん1。甘い方がよければ砂糖をもう1杯加えて見て下さい。これはたくさん作る時用なので、3~4人なら中さじにして同じ分量入れて見てね。もちろん顆粒だしを分量分入れますよ!最初から入れてて大丈夫です」
何て事を固定カメラに言いながら晩ご飯の支度をする僕。
今日から、お料理の動画の生配信もするとキヨちゃんが張り切っているのだ。
だから、着てる服はお仕事着。
豆腐とワカメのみそ汁も解説しながら作り、親子丼にタマネギのスライスと、ニンジンを型抜きで抜いたものをほんの少しの水と一緒にレンジでチンして爪楊枝がスッと通るようになったら、沸騰させた親子丼の中に入れてタマネギが透き通ったら溶き卵を回しかけフタをする。
丼にご飯を盛り付けて親子丼の具を載せて出来上がり。
「また、明日ね!」
カメラのスイッチを切る。
ダイニングテーブル前には真琴、ジェルミさん、梶さんが座ってご飯を待っている。
フラワーガーデンのデリカ担当の責任者、梶さんが何で狩野家にいるのかというと、作った商品の中に髪の毛が入っていたらしい。
それを買ったのがたまたま、学園都市のお偉方で、梶さんが責任を取り辞めさせられたのだ。
梶さんは、別れた奥さんと娘さんに年間1200万仕送りしているらしくて、事情を知るキヨちゃんがウチにお弁当要員として連れて来たのだった。
さすがにお弁当500個を由美さんと2人で作るのは辛かったので、喜んで契約した。
そして業務用台所ももう一棟増やした!
おかげで、仮設住宅屋さんには、ペットを買ってないことがバレた。
しかし、商魂たくましい仮設住宅屋さんは、僕達がお弁当を作ってるのを撮影し、何の家電がどこに置いてあるかも確認してギラギラした目付きで帰った。
後日、【プライベートキッチン】という見習いコック向けの仮設住宅が販売されたとか。
まあ、それより、2棟目の業務用台所が出来た理由は、3人だと狭いし、お弁当を広げる台もあった方が良いし、何よりお菓子作りを家のキッチンでやってるのが、ダメ!と梶さんに怒られて反省した。
こうして業務用のオーブンとミキサーは業務用台所その2に引っ越しした。
梶さんにも、お菓子作りを手伝ってもらうようになり、グンと楽になった。
明日からは業○用スーパーの隣りにある直売所にお弁当を卸すから気合い入れてかなきゃ!
「たっくん」
「ん?どうした。真琴」
「あたらしいおみせには、すこしづつもっていって。……それでもいっぱいのこるけど、ちゃんとみてくれてるひとたちはいるから、くじけないで!」
「ありがとう真琴。たっくん負けないよ!」
「あとね、だいがくにも、あたらしいおみせにも、ごひゃくえんくらいのおかしおいたらスゴくうれるよ!」
ごはんを食べてる真琴の頭を撫でて頰にチュウするときゃあきゃあ言って照れてる。
和む。可愛いな、真琴。
でも、両性具有の真琴に何で男の僕がお嫁さんに貰われるのかが謎だ。頼りないからかな?
ま、子供の言うことだから、大人になったら黒歴史になってるだろう。はは、その時はからかい倒してやろう!
翌朝2:00から仕事場に行き550個のお弁当を作る。3人とも無言でマシンみたいに動いている。
真琴に正規の占い料金を払って占ってもらったら、朝早くが一番売れると告げられたので開店時間の7:00までに種類いろいろで熨斗紙は付けずに50個と500円の手作りお菓子の詰め合わせ50個をジェルミさんに持って行ってもらう。
朝、真琴とご飯を久しぶりに食べると真琴がとても嬉しそうだ。
「ごめんね、真琴。淋しかったね」
「えへ、ちょっと、だけだよ!」
真琴がいろいろ話してくれて、保育園での様子が垣間見える。
真琴は、随分期待されている。
今も大作を描いていてそれに予約が入ってるらしい。
「おー、真琴先生だな!」
「いずれは、ね。まだ、はずかしいよ。そんなよびかた」
恥じらう真琴が可愛くてついつい、構ってしまう。10分後、拗ねた真琴が出来上がっていた。菓子作りで軽く焼き過ぎたB品のクッキーを保育園のカバンに詰めると真琴がニコニコになる。
集中して絵を描くとお腹が減って仕方ないらしい。先生に何か食べていいか聞いたら、お友達に見つからないようにならいいと言われたという。
「たっくん、だいすき!」
「たっくんも真琴が大好き!」
好き好き合戦をしてると、ジェルミさんが帰って来て真琴を抱っこして保育園に連れて行った。
僕はお弁当作りに戻り無事、お弁当は出来上がり、手作りお菓子の袋詰めに、1時間ほど掛かった。途中から帰って来たジェルミさんも手伝ってくれた。
車にお弁当とお菓子の詰め合わせを積み込みジェルミさんと梶さんに大学に配達してもらう。
僕はその間に家事をする。
洗濯機を回してる間に朝ごはんの洗い物の始末と、リビングダイニングの掃除。
寧々と凛々がいないから食べこぼしもないのですぐに終わる。
洗濯物を干して昼ご飯の支度を整えるとついでに仕入れして帰って来てくれた梶さんとジェルミさんが、レシートを僕に渡す。
20万円。はいはい。上限キッチリ買って来たんだね?
「平アジの塩焼きとニラ玉、朝の残りのミョウガのお味噌汁です。ご飯はたくさんあるから、お替わり自由にどうぞ!」
「美味そうだ!いただきます」
梶さんは、練りワサビのチューブを冷蔵庫から出して、小皿に少し取ると醤油で溶いてワサビ醤油にして平アジの塩焼きを無言で食べ始める。
それを真似したジェルミさんがワサビの加減を間違えて「オウ!」とか「フウー!」とか言いながら食べていた。
ちなみに僕は危険な冒険はしない。
梶さんはお昼ご飯を3杯もお替わりした!珍しい。よっぽど好きなんだなあ。焼き魚。
明日のオヤツは、ガトーショコラ。
コスパ悪いけど、たまにはゴージャスリッチなオヤツをお返し。
実はあのキヨちゃんのお店フラワーガーデンショッピングモールは、派遣社員の買い物の為のショッピングモールで、富裕層は絶対行かないらしい。
だから、僕達家族は目立っていて僕にキヨちゃんが声を掛けたのだそうな。
ちなみに梶さんをクビにした学園都市のお偉方は1年に1回の「視察」に訪れたのだという。タイミング、悪かったね。梶さん。
髪の毛も衛生帽で覆ってるのに何で混入したのかな?クビにするより原因探す方が先だよね、絶対。
よろしかったら評価、ブックマークなどお願いします!
あと、せっかくブックマークしてくださったのに、期待はずれな私ですみませんでした。
短い間でしたが、楽しかったです。ありがとうございました。




