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たっくんのお弁当  作者: 榛名のの(春夏冬)
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2話 天国からの喝!

スクリーンに映し出された、ちい兄はいつも通り冷たい笑顔で大貴兄を攻撃し始めた。


『たっくんに私たちがどうなったか、説明させてるそこのクズ!大きなクセに根性ナシ!木偶の坊!役立たず!』


「啓介…俺だってダメージ受けてんだよ!」


ボロボロ泣いてる大貴兄。

三つ子は真剣な顔でスクリーンのちい兄を観てる。

ちい兄は柔らかな笑顔で三つ子の名を呼ぶ。


『寧々、たっくんの事が好きならあんまり困らせちゃ駄目!それは、逆効果だよ』


「うん、わかった!」


『凛々、けいちゃんはずっとお空から皆を観てるから!ホントはそこの背中越しに観てるけどね!でも、けいちゃん達はもう皆の目に見えなくなってるから、そういうことにしといて!』


「しとく!」


『真琴、真琴はお家を継ぐこととか考えなくていいから、好きな人について行きなさい!少し見えたくらいじゃ、街の占い師にも勝てないよ?私みたいに百発百中でも天命には勝てない。お願いだから、暴走しないで。もしも暴走したら、たっくんが巻き添え食うのでその覚悟があるならたっくん達に相談してからにしなさい』


「うん、ぼく、たっくんのことまもるからね!」


「いやいや、僕を守らなくていいから、危ないことしないで。真琴」


『最後にたっくん。頑張り過ぎないように!一人でパパとママとけいちゃんの真似は出来ないんだから!そこの木偶の坊を上手く使って楽しなさい!……木偶の坊!わかってるんだろうな!?』


「わかってる、って!!これでも長男だぜ!ドンと任せておけ!」


『それから、私たちの遺産だけど、君たちのこれからの生活の為に使いました。君らには家も服もお金も何にもないはず。私たちは被害者ですが、この事件による収入はビタ一文ないでしょう!

 そこで幼稚園から医大まで何でも揃う学園都市マクレーン財閥開発機構、通称マクロ学園内に家を買いました。佐々木さんがそこまでの交通手段を手配してくださってます。

 

 授業料、入学金、生活費も用意しています。服もあるから心配しなくていいよ!

学園都市には何でも揃ってるから、家事の負担もない。なんならメイドさんも雇っちゃっていいくらい通帳の残高はあります!』


「それよりお葬式代、どうしよう?確か、苅野の本家に頼んだら、500万くらいいるよね?3人だから、1500万?」


陰陽師には陰陽師式のお葬式があるのだ。

 大貴兄と僕にはサッパリ分からない。神式に似た感じだというのがわかるだけでどうにも通帳の中身を見てからだ。

 多分、ちい兄は自分たちのお葬式のことはスポンと頭から抜けてたのだろう。ちい兄は自分のことは割とどうでもいい人だったからな。

 最後に「幸せになれ」と言い残し映像は途切れた。

 佐々木さんがお葬式の手配もしてくれた。本家に連絡を取り、本家の神社で小雨の降る中、葬儀は行われた。


「あれが狩野家の能力ちから無し達か!よくもあれだけ生んだ物だ!」

「自分の死も予見出来なかったとは、愚劣よのう!」


長い祝詞のような、葬送の句に紛れて言いたい放題だ。三つ子は、榊を祭壇に置いて音がしない柏手を打つ。僕と大貴兄もそれに続く。遺体のカケラもない式は僕らが敵地内で強がることが出来たので上々だろう。

無事、葬儀は終わり、葬儀代1200万も支払いマクロ学園都市内の家に僕らは引っ越すだけでよかった。転校の手続きも皆、ちい兄の弁護士さんが手配もしてくれていた。

ちょうど春休みに入ったタイミングで家事だったので大貴兄と僕は、料理以外の全ては2人で振り分けることが出来た。

 テレビのニュースを見る度、上がる物価に我が家は悲鳴を上げていた。

大貴兄のマクロ学園医大の入学金と授業料が半端無い金額で、「へ、へぇ~、設備良いんだね」と遠い目をした翌日、真琴が真剣な顔をして一家の財布を握っている僕にお願いに来た。


「ミューズがっかにはいりたいです!」


「ミューズ学科?真琴だけなの?」


「ううん、ねねちゃんとりりちゃんもだよ」


「(どれだけお金がかかるか)詳しいこと調べてみるから、2日待って」


「はぁい!」


※※※※※


マクロ学園のホームページで検索した結果、入学金に3000万円もかかる金食い虫だった。


外食を辞めて切り詰めれば何とかなるかも!

 明日から昼は弁当で夜はおうちごはん!

朝はトーストにするか!


お米高っ?!調味料はワンコインショップで揃うよね。あ、これ、母さんが買ってた棒ラーメン!ここで買ってたんだね。

あ、おろしニンニクとショウガのチューブ。ワサビと辛子も買おう!

おろし金に、泡立て器、フライ返しに粉ふるい。油引きにたこ糸……いろいろ買ったら2万円も使ってた!

同じショッピングモール内にあるスーパーでフライパンに両手鍋の大きなのを買ったらそれだけで1万円して驚倒した。

 卵に鶏の胸肉のお徳用パック、油は有名ブランドの一番安い植物油のを買った。

 三つ子達のおやつを作ってあげようとホットケーキミックスなる粉物を手に取り、高いから小麦粉にチェンジした。袋の後ろにクレープとお好み焼きのレシピが書いてある親切仕様。バター?マーガリンで代用したらいいか。果物は、バナナ安いよな。生クリーム?何で高いのと安いのがあるんだよ!安いの買うに決まってるだろう!

店員のおばちゃんがアドバイスしてくれた。


「植物性のホイップクリームは中々泡立てにくいから、絞ったらいいだけのを買ってったら楽ですよ。たくさん作ってあげるなら動物性の生クリーム、高い方を買った方がいいです」


おばちゃんが女神に見えた!


「あ、あの、買い物初めてで、何の野菜買ったらいいか、わからなくて……全部高いから」


「何人家族ですか?」


「学生2人と幼児3人です」


「味噌は買いましたか?」


「はい!ワンコインショップで!」


すると、おばちゃんは困った顔をした。


「今まで使ってたお味噌と一緒の方がいいですよ。多少濃さが違っても誤魔化せますから」


木綿豆腐と厚揚げと油あげの刻んであるのを僕の買い物籠の中におばちゃんは入れると、調味料売り場に僕を案内した。


「どんなパッケージのお味噌でした?」


「え?えーと?あ、ウチの母さんあんまり料理が上手じゃなかったから、出汁入りの味噌使ってる、って話してたことある!」


「じゃ、アレしかこのスーパーには無いですね」


料亭のなんちゃらゲット!


「醤油も味が変わるとかなりヤバい反応が家族から返って来ますから、濃口と淡口を買った方がいいですけどパッケージ覚えてますか?ご家庭によっては「はい!思い出した!」よかったです。どんなのでした?」


「鰹だし3倍のヤツです!」


おばちゃんは再び困った顔をした。そして醤油の並んでいる棚から外れ【出汁、調味料】の棚から見覚えのあるオレンジ色のカツオが跳ねているパッケージの「天つゆ」を僕の買い物籠に入れた。母さんは、醤油使ってなかったんだね?!


そして野菜コーナーに安達さんは僕を連れて行くともやしを3パック買い物籠に入れた。


「ああ!もやし、あんまり好きじゃな「油多めに入れて揚げ焼きしてみなさい。パリッとするから、それにもやしは安いの!ごちゃごちゃ言わない!」……ハイ!軍曹殿!」


お買い得商品のワゴンを上から下まで見て50円のほとんど黄色のキャベツ1玉を籠に入れられて食べて大丈夫か心配してると加工品のコーナーで、何と「納豆3パック×2 特価68円」をブチ込まれた!


「あ、あ、あ、安達軍曹殿!家族全員食べたことないであります!」


「コレが一番、食費がかからないし、たくさん食べたって、平気さ!健康にもいいよ。慣れたら卵の黄身を落として醤油をほんの少し垂らして混ぜて食べてみなさい。おいしいから!軍曹殿って、なんだい?また、明日同じ時間においで。どっかにいるから!」



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