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島中が偽善に包まれているのか。島民全員で私を騙すのか。みな私がまりあの父親だと知りつつ知らない芝居をして私と接していたのか。私を恨んでいるのか、蔑んでいるのか。島の仮面を剥がしたらそこには私への侮蔑があるのか。この島での数日が虚構の波となって私を飲み込もうとする。私は与えられた役をどう演じていいのかわからない。


「私ももう年で先も短いんでね、小夜の願いを叶えてやってもいいんじゃないかと思いましてね。いや、小夜に頼まれたわけじゃないんだが、どうも心残りで。あなたにもう一度会いたいという小夜の想いをどうにか叶えてやりたいと。それで小夜の書いたものを小説にしたんです。そうしたらあなたにも届くんじゃないかと。まあ日本語の小説がスペイン語になるには相当売れなきゃならんですから、無理を承知で出版しました。自分の気が済めばよかったのかもしれません。それがスペイン語にならずに映画になって。まさかスペインで上映されるとはね。天主様のお導きは人間には測り知れない大きさがあります。小夜の想いが海を渡ったんでしょう。なんとかしてどうしてもあなたに会いたかったんですよ。あなたが来てくださって小夜は本当に喜んでいると思います。どれほど愛していたか伝えたかっただろうから。」


 イエスは私を二十時間飛行機に乗せてこの島へ辿り着かせたのか。小夜に連れられてきたのか。自分からあの映画を観に行くことはなかっただろう。ホセに言われた仕事でなければ行かなかった。一週間一人の時間が取れたことも、飛行機を予約したことも、教会を見つけたことも、カフェの店員に会ったことも小夜が導いていたのか。


「でも結末は変えてしまいました。小説の中だけでも小夜を生かしてやりたくてね。まりあの成長を見て幸せに暮らしてほしかったんですよ。あれは私の願望です。この世の結末とは違います。」


 私は頷くことも言葉を発することもできないまま片山の話を聞いていた。小夜は30になることも40になることも選ばず、この世を去ることにした。二十数年の人生は幸せだったのだろうか。


私が小夜を一番苦しめてしまったのではないのだろうか。私と出会ったことは小夜の一番の幸せではなく、一番の不幸となってしまったのではないだろうか。私たちが出会わなければ小夜はまだ生きていたかもしれない。私が殺したのか。私は無意識に無自覚に罪を犯していたのだろうか。大罪を。


「それから・・・言いにくいんですがね。」


そう言って片山は立ち上がるとまた本棚のほうに向かった。今度は足元の引き出しの奥から紙の束を二つ出してきた。私の前まで戻ると物々しくテーブルにその束を置いた。


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