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「出版社の人とかに会えないですかね?」

「出版社?出版社っていうか小夜さんの本を出したのは片山先生だから。この辺じゃ有名な博士様なのよ。大学の先生だったんだから。」

「その方と会えますか?」

「そうね、せっかく遠くからいらしたんだからね。ちょっと待って。」


店員はおもむろにお尻のポケットから携帯電話を取り出して話し出した。


「ああ、先生、こんにちは、今、店にスペインの人が来ているんだけど、映画観てね・・・先生と話したいって。・・・うん・・・うんちょっと待って。」


 私に向き直って店員が聞いてくる。


「お名前伺ってもいいですか?」

「はい、アウグスト・ヘルナンデスといいます。」

「先生、アウグスト・ヘルナンデスさんだって・・・ああ、はい、わかった。ありがとう、じゃあ。そう伝えます。はい、はい。」


 店員は私に視線を戻し、

「明日の午後ならって言われてるけど、どうです?」

と聞いてきた。


「ありがとうございます。是非伺います。」

「先生、大丈夫だって。じゃあ明日ね。三時ね。はい、よろしくお願いします。はい、はい。」


 店員は電話を切ると私に片山先生という人の住所をくれた。


「片山先生が小夜さんの書いた小説を本にしたんですよ。亡くなってからしばらく経ってからだけど。亡くなる前に一作だけ書いていたそうですよ。でもまさかベストセラーになったり映画になったりするとはね。お陰様でこの島も有名になって観光客も増えたし、教会の補修工事もできたし。死んでからも島に貢献するなんて小夜さんも偉いですよね。」


 話好きの店員に感謝して私はデータを収集した。タクシーを呼んでもらい、礼を言って店を出た。


明後日の朝にはスペインに帰らなければならない。あと一日小夜のいない喪失感に浸ろう。小夜がいないとわかった今となってはもう何も知るべきことはない。


カフェインが効いてきたのかすっきりした頭にはもう疑問があまり残されていない。小夜が病死なのか事故死なのか恵子の譫言のせいで判別できなくなってしまっただけだ。どちらにしてももう小夜はいない。その事実は変わらない。


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