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カーテンを閉め忘れた東向きの窓から太陽光線が容赦なく瞼を通して刺してくる。いつもは寝起きが悪いが、今朝は微睡などと戯れる間もなく正気になっている。


目を開けるとサイドテーブルに置いた携帯電話が昨夜置いたとおりに同じ角度で置いてある。飲みかけの缶が寝る前に置いた位置に置いてある。目を閉じる直前と同じ光景が開いた目に入ってくる。うまくできている。眠っていた時間の前と後はしっかりと寸分たがわず繋ぎ合わされる。完璧だ。私は奈留島にいる。


港で自転車を借りることにした。車では通れない道も多い。今は道路ができているだろうか。しかし海沿いを探すしか作戦がないのだ。教会の名前も地名も覚えていない。小夜の名前だけだ。


Naruse Sayo鳴瀬小夜。


母親の名前もわからない。記憶に焼き付けられた映像と同じ教会を探し出すしか方法がない。それは海沿いにある。それだけが手がかりだ。文明がくれた小型コンピューターにも島の真ん中にある大きな教会しか出てこない。隠れキリシタンの教会は表示されないのだろうか。言葉のせいかもしれないが宿の人に尋ねてもわからない。こうなったらシャーロックホームズでも歩くだろう。


島を右回りに行くべきか左回りに行くべきか。勘に頼るしかない。島は円形ではなく入り組んだヒトデのようだから、どちらから走り出すかで見つかる時間もかなり違ってくるだろう。


ここには4日しかいられない。間に合うだろうか。小さい島だが一日で海岸線をすべて見て回るのは無理だろう。左利きの私は左から走り出すことにした。


ただのサイクリングだとすれば最高だ。30年前と同じ日差しは暑いが海風に助けられる。海と並走すれば心が透き通って20歳に戻る。私は記憶の中に建っている小さな教会を頼りにペダルを漕ぎ続けた。


人影はすべてみな小夜に見えた。近づかなくとも別人であることはすぐにわかる。小夜の腕は私の腰を掴み、自転車が揺れるたびに小夜が落ちないか心配した。私にしがみつく小夜は振り返ると消えてしまう。私は右手に広がる海をなぞるように前だけを見つめて進んだ。


案の定、一日目はただのサイクリングに終わった。海沿いにはレストランが一件と宿が一件、それから郵便局があった。それだけだ。教会もなかった。それでも島の三分の一は走っただろう。道のないところは海岸を自転車を押して歩いたから時間がかかってしまった。


30年前の筋肉が今この足についていたらもう少し行かれたのではないか。今だけはハビエルが羨ましい。また煙草が吸いたくなる。宿に着くと思っていた以上に体が疲れていた。今夜はカーテンを閉めて眠る。


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