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私はマドリードと長崎のフライトを検索していた。直行便がないのでイギリスかドイツを経由する。20時間近くかかる。
何をやっているんだ。長崎に行ってどうするんだ。小夜に会って詫びるのか?何を詫びるのだ。悪いことをしたのか。小夜を愛したことは悪いことなのか。なぜ返事をくれなかったのか知りたくもある。何か事情があったのか。本当に子供がいるのか。私の子供なのか。
3度の結婚でも私には子供がいない。幸か不幸か子供を欲しがる妻がいなかった。ラウラはまだ若いからそのうち言い出すかもしれないが、いまのところいらないようだ。私自身も子供が欲しいと思ったことがない。妻が妊娠すれば運命に従うが、子供のいる人生は想像がつかない。
私の子供?どんな気分なのだろう。同じ血が流れているのか?頭の中が渦巻いている。ヨーロッパの第一線の知識人にあるまじき散らかりようだ。
日本語がわからないということが致命的だ。文明の利器をもってしても調べようがない。真実がわからない。最後は自分の足を使うしかないのだろうか。そう思うと矢も楯もたまらなくなる。せっかちな気質で得をしたことはない。私の唯一の欠点と言ってもいいかもしれない。
ワンクリックで長崎まで連れて行ってくれる現代は既にSF映画の近未来だ。私が長崎に行ったときは旅行会社に出向いて細長い長方形の小冊子のようなチケットを買った。カーボン紙のような赤い紙が入っていたと思う。
長く生きたものだ。感慨にふけっている時間はない。ラウラに一週間の日本行きの理由を提示しなければならない。日本というのは実に唐突だ。私とは何の繋がりもない。今日観た映画と関連付けられるかもしれない。ラウラが納得し私が仕方なく日本に行かなくてはならない理由。不自然であってはならない。自然かつ説得力のある理由だ。
そして私が一人で行かなければならないということもわからせる。時期がちょうどよかった。今なら自由に一週間を使える。
しかし同時にラウラも自由なのだ。彼女は不定期でモデルの仕事やショーの手伝いなどをしている。頼まれた時に興味があれば出掛ける程度だから、簡単に断れる仕事だ。もし私が一週間日本に行くと言ったら彼女も行きたいと言い出すだろう。
私は愛されている夫だ。たとえ仕事があってもラウラは簡単に断る。いつものように。それにこの先の予定は聞いていないからきっと何もないのだろう。
私は考えあぐねて立ち上がり部屋をうろつく。洒落た文章が出てこないときによくやる動作だ。変な嘘をついて浮気を疑われても困る。
実際、2番目の妻とは妻の嫉妬で別れた。彼女とは6年の結婚生活が続いていたが、その頃やたらと嫉妬するようになっていた。私は野営はしないので浮気をすると本気になってしまい必ず妻にばれる。
最初の妻は私の心がもう彼女にないと言って去って行った。女の直感は素晴らしい。しかし勘が鈍くとも私の外の城には誰でも容易に気づくだろう。
2番目の妻は私がパーティーで女性と話しているだけで間に割り込んできたり、何かと情事を疑うようになった。何かが憑いていたのだろうか。いまだにわからない。誓って言うが私は一切浮気などしていなかった。それまでは。私は疑われることに疲れ始めて妻の言う通りにしてやった。浮気したのだ。そして2度目の結婚生活も終了した。
夫婦の関係なんてどうなるか全くわからない。女が何を根拠に男を疑うのか今もって解明できない謎だ。




