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フアンは無罪だ。


それどころか私が欲しい情報すら持っていない。新しいバーが開店した情報はいらない。次はホセだ。


ホセも知らないのか。出版社の人間なら何か知っているかもしれない。慌ててホセを探す。先にダフネと話し込んでいるラウラをみつけて、軽く手を挙げる。ラウラはまだ飽きていないようだ。もう少し時間がある。


ホセは背が低く小柄だ。若いのに頭頂部が薄くなってきている。今日は何を着ていただろう。まったく印象を残さないホセの良さが今日は裏目に出る。


隅の柱の陰で同じような体形の男と同じようなスーツを着て話し込んでいる。茶のツイードだった。密談か?二人だけが時代錯誤のKGBの諜報員のようだ。密談に割り込む勇気もないからホセの視界に入るように場所を確保してしばらく気づかれるのを待つ。苛立つのはなぜだ。


「すみません。もういいですよ、お帰りになって。」


私に気がついたホセが近づきながら話しかける。気を付けなければ、ホセの容疑はまだ晴れていない。


「ああ、わかった。もう帰るところなんだ。」

「何かありましたか?」


ホセが真犯人か。私の自供を引き出そうとしているに違いない。弁護士同伴ではないから慎重に返事しなければならない。


「いや、この映画のことは何も知らなかったから・・思ったよりいい映画だったよ。ラウラも楽しんでたよ。」

「それはよかった。僕もちょっと泣きそうになりました。久しぶりに。」


髪の薄くなったホセは若年層に入るのか。この際、年のことはどうでもいい。KGBの術中にはまらないように真相を聞き出さなければならない。


「君も予備知識がなかったのか?」

「ええ、宣伝部からアウグストをお連れするようにとだけ言われていたんで。」


諜報部員の演技は流石に訓練されているだけあって完璧だ。


「そうなのか。原作者のこととか知らないの?」

「すみません。勉強不足で。」

「いや、そういう意味じゃなくて。」

「なかなか外国作品まで手が回りません。担当でもないんで。」

「そうだよなあ、国内だけでたくさん原稿が持ち込まれるんだから。」


諜報部員じゃないのか?ただの編集者か?罠にもかからないが真相もわからない。これなら落とし穴に落ちたほうがよかったかもしれない。しかしこれ以上聞き出そうとしてホセが自分で調べて私に教えるなどと言い出したら困る。この辺で容疑を晴らしてやり退散すべきだ。


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