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彼氏の父親がセクハラ親父で結婚を考え直した

作者: さとう あか

セクハラ描写があります。

苦手な方はお控えください。



 今付き合っている彼氏との結婚を考えている。


 大学時代から付き合って卒業し、就職するのと同時に同棲を始め、それから結婚を意識して婚約をすることになった。


 自分でも順調な交際だと思い返している。でもここにきて最大の困難にぶち当たっている。彼氏の両親への挨拶だ。


「へえー、美沙ちゃんっていうんだ。かわいいね」


 自己紹介が終わった後に彼氏の父親にそう言われる。もうこの一言とねっちりした目線が職場のセクハラ上司を思い出して鳥肌がたった。目の前にいるのは上司ではなく彼氏の父親、笑顔で対応しなくてはいけない。でも気の利いたことも言えず笑顔で流した。


 流したのがよくなかったのか、「手もキレイにしてるね。うちのはちゃんと手入れしてないんだよ」と言って手を握ってきた。


 あああああああああ。手を引くが、意外としっかり握られ手を振り解くことができなかった。


「ちょっとアンタ何してるの!」


 そう言って彼の母親が諌めてくれるが「いーじゃんこれくらい、義娘になるんだから」そう言ってきちんと取り合おうとはしない。


 まだ入籍してないし!義娘だからってこんなことしていいわけじゃないからな!


「まだ義娘じゃないでしょう!それに義娘だからって触っていいわけじゃないわよ!」


 ありがとうございます、私が思っていたこと全て言ってくれて彼氏の母親には感謝しかない。でもそこまで言われているのに彼氏父親は手を離そうとしない。


「はー。若い子に嫉妬してるの?」


 どうしてそんな話になった。なんでそう思った。そんな話はしてなかっただろう。そう考えたが彼氏父はそんなこと一欠片も考えていないようだった。


「まあまあ、母さん。父さんだって悪気があるわけじゃないんだから」


 そう彼氏が二人の仲裁をする、その間も彼氏の父親は手を離そうとしなかった。 たくさん言いたいことがあったがこれから結婚するのに私の言いたいことを言って結婚できなくなってしまったら大変だ。だから私はとりあえず笑っていた。









「父さんも悪気があったわけじゃないんだ。美沙と仲良くしようとしただけなんだ、わかって欲しい」


 仲良くする方法があれなのだとしたらそれは的外れで、私の気持ちを考えていないように受け取られるのだがそこら辺はどうなんだろう。でも私は彼と結婚するんだ。彼の父親とは交流を必要最低限にすればなんとかなる。


 そう考えていた時が私にもあった。その考えを今すぐに改めなくてはならない。彼氏父親から頻繁に連絡がくるようになったのだ。


 なんで!?と思ったが疑問はすぐに解消された。どうやら彼氏が私のIDを教えたようだった。なんで教えたの!と問い詰めれば「父さんが知りたいって」何も悪いことをしてないかのように言った。個人情報の流出云々言いたかったが飲み込んだ、今言っても仕方がない。「父さん、美沙と仲良くしたいんだって」ニコニコ笑っていう彼氏。その笑顔を見て、私は挨拶に行った時に手を握って離さず、ニタニタしていた彼氏の父親の顔を思い出して鳥肌がたった。


 それから頻繁に連絡がきた。それは毎日のように連絡がきたのだ。


『今日ヒマ?』『何してるの?』『結婚式のこととか話したいから今度二人で会わない?』『オシャレなカフェを見つけたんだ、二人で行かない?』


 『暇じゃないです』『仕事です』『予定が空いたら』『時間があったら』と返信していた。なんで二人で会おうとするんだ!遠回しに断っているのがわからないのか!と思いつつ、このやりとりににいいしれない気持ち悪さを感じた。最初は彼氏の父親だしなと思って我慢していたが、もう我慢ができなくなってきた。だから彼氏にこんな連絡がきているのだと伝えたが。


「父さんは美沙と仲良くしたいんだよ」


 これを見てどうして仲良くしたい、だなんて思うんだろうか。どうしての気色悪さが伝わらないんだろうか。


「今度二人でご飯にでも行ってきたら?きっとそうすれば距離も縮まるよ」


 私は、決してあなたの父親と食事に行きたいからあなたにこのメッセージ画面を見せたわけじゃないのに。このセクハラ親父全開の文面を見てあなたの父親に注意をして欲しかったのに。ここまで考えて私はきちんと要求を伝えていないことに気がついた。そうか、だから彼はわからないのか。男の人はきちんと要求を伝えないとわからないというし。ここは私がきちんと、噛み砕いて、彼氏にも分かるように伝えなくてはいけないんだ。そう思考を改める。


「私はあなたのお父さんと食事に行きたいわけじゃないの。こういった連絡を頻繁に送られてくることが迷惑だから、嫌だから、やめて欲しいってあなたから伝えて欲しいの」


「そうなんだ」


 わかってくれた!人はきちんと話し合おうと思って伝えれば通じ合うのね!なんて思った。


「でもそれって僕から言う必要あるかな?君から言ってくれた方がいいんじゃない?」


 どうしてそう思ったんだ。私はお前の父親と挨拶くらいしか接点がないんだぞ。とは思ったが必死で心を鎮める。


「私にとってはあなたのお父さんで、私から伝えたら上手く伝わらないどころか、こじれてしまうかと思ったからあなたに伝えて欲しいっておもったの」


「そんなこと気にしなくていいのに。父さんも美沙のこと本当の娘だと思っているから気にしなくて大丈夫だよ」


 本当の娘だと思ってる?本物の娘にあんなメッセージ送るか?と瞬時に疑問を持ったが口にはしなかった。ただ、確認をした。


「本当?」


「本当だよ」


 言ったな。言質は獲ったぞ。そう心の奥底で呟いた。
















「美沙!父さんになんてことを言ったんだ!!」


「娘だもん。思ったことを言っただけ」


 もっと言いたいことはあったんだけど、と思いながら口をつぐんだが、すぐに反論してきた。


「だからってあんな根も葉もないこと言う必要はないだろう!」


 あんな?根も葉もないこと?私がメッセージ画面見せたりして本当に言われていたことなのにどうやら彼には違うものが見えているのかもしれない。


「彼氏がいる二十代女性にあんなこと言うのはセクハラ親父以外いないと思うだんけど」


「息子の彼女だ!少しくらいのスキンシップでとやかくセクハラだ、気持ち悪いなんて言うなんてどうかしてる!美沙がそんな人間だなんて思わなかった!もう別れよう!!」

 

 息子に内緒で旅行に行かないかと誘ってくる彼氏父をセクハラかどうかと聞かれれば私は間違いなくセクハラだと答えてしまうが彼はどうやら違うらしい。


「そうね、別れましょう」


 すると、彼は固まった。自分で言ったんじゃない、別れようって。


「あなたとこれからの生活を考えられないの」


 私が嫌だって言っているのにそれを気のせいだ、と言って私に我慢させる方向でどうにかしようとしていて自分でどうにかするという考えがない人。私は今回セクハラ親父のことで彼氏のことをそう思ってしまった。


 私が何度もあなたの父親からくる連絡が嫌だと伝えても過剰な反応だと軽く流して今まで取り合おうとしなかった。そして彼氏の父親も自分の妻、彼氏の母親から再三私に直接連絡をするな、二人で会おうとするなと言われていたにも関わらずしつこかった。まるで自分の妻の言うことなんて気に留めなくてもいいだろう、というようだった。


 結婚すれば私の意見は聞き入れられず、身勝手に物事が進められ私は都合よく使われていくのだろうか。なんてことを考えてしまうには十分だった。


 もっと上手く立ち回ればいいだろう、なんて思う。だが、相手が、彼氏がうまく立ち回ろうとしないのに私ばかりが上手く立ち回れというのは不公平ではないのか。なんて考えてしまった。


 どうして私のことを考えてくれない人のことを考えて行動しなくてはいけないのか、そうした考えを持ってしまった時点でこの人とはやっていけないだろうと思った。

 長年付き合ってきて結婚まで考えたはずなのに不思議だ。彼氏の父親のことでこれほど価値観が違うのだと実感してしまったのである。


 彼氏の父親のことがなければ結婚していたのかもしれない。そして彼氏の父親のせいで離婚していたのかもしれない。その二つの考えが頭から浮かんでは消えた。そして、彼氏は自分で問題を解決しようとはしなかったな。なんてどこか冷めた目線で考えている自分もいた。


 結婚するためには自分が我慢すればいいなんて思っていたほどに好きだったはずなのに。人の気持ちが冷めるのは一瞬だ。

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