涙が枯れるまで。
僕の世界は
いつだって
ひとりだった。
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僕には兄がいた。
明るく社交的でいつも周りに人がいる。僕とは正反対の人。
そんな兄と幼い頃から比べられてきた僕はどんどん内に籠る様になった。
僕は兄が苦手だ。
比べられるのが嫌だった。
それでも嫌いになれなかったのはこんな僕にも兄は優しかったから。
両親さえも見捨てた僕を
兄だけは理解してくれて、僕の事を見てくれた。
そんな皆から愛されていた優しい兄が死んだ。
なんの・・・前触れもなく。
高校に入学してから半年が経った頃だった。
信号無視のトラックから同級生を庇ったそうだ。
兄らしい最期だと思った。
兄が亡くなってだんだんと母は壊れていった。
兄の名前を呼び、姿を捜し、泣いて、叫んで・・・。
元々家庭には関心のなかった父は
そんな母を避ける様に家に寄り付かなくなった。
そんなある日の事。
母の一言で僕の人生は一遍した。
「真斗」
いつもの様に兄を捜していた母が
その日僕の顔を真っすぐ見てはっきりと兄の名前を呼んだ。
「あぁ!こんな所にいたのね。ずっと探していたのよ。真斗」
「・・・ぇ」
「こんなに髪の毛を伸ばしたら折角の綺麗な顔が見えないじゃない」
そう言って母は、僕を椅子に座らせて髪を切り始めた。
兄弟だけあって僕と兄の顔は似ていた。
それでも性格に大きな違いが生まれ僕は自分が醜いのだと感じていた。
それからは醜い自分が誰にも見られない様に顔を隠す様に髪を伸ばし始めた。
まぁ、兄の髪はいつも母が切っていて
僕には「自分で勝手に切りなさい」と安物のはさみを渡されていたのも理由の一つではある。
そんな僕の事を忌み嫌っていた母が見た事も無い様なご機嫌な顔で僕の髪の毛を切っている。
抵抗できず椅子に座っていたが時間が経つにつれ状況が理解出来てきた。
そうか。母の中で僕は完全に消えてしまったんだ、と。
壊れてしまった母は僕の事が今、兄に見えている。
あの日死んだのは僕で、生き残ったのは大好きな兄、という事だ。
中学生だった僕にとって今まで雑な扱いを受けていた事実よりも
やっと母に見てもらえた。笑ってくれた。
そんな事の方が大きく、僕は僕自身を心の奥に閉まった。
認めてもらえるのなら。
愛されるのなら。
僕は『僕』でなくなっても構わない。
それからは人生が一遍した。
全てにおいて平凡だった僕が完璧な兄になるには
とてつもない努力が必要だった。
しかし、やはり血なのか
飲み込みは悪くなくやればできる子だったのだ。
高校に上がる頃には僕は完璧な『兄』になっていた。
高校に入学する前日。
父が荷物を取りに家に帰ってきた。
リビングで豪勢な夜ご飯を食べている僕の姿を見た父は
目を見開き台所で鼻歌を歌いながら食器を洗う母を見て
静かに「すまない」と僕に言った。
今まで家庭に関心の無かった父。
母が兄を溺愛し僕を蚊帳の外にしている事を知っていながらも
何も言わず干渉せずだった父。
あぁ。この人は不器用なだけなのかもしれない。
そう思った。
きっと父は父で兄も僕も大切に思っていたのかもしれない。
ただ、どうしたらいいのか分からなかったのだ。
だから何も出来なかった。
そして今回も。
兄が亡くなり壊れた母を放っておいた結果
僕が犠牲になっていた事に今になって気が付いた。
でも何も出来ない。
だから「すまない」。
父は母と少し会話をし
荷物を持ってまた出て行った。
あまり人と関わりを持たなかった僕は
本当に自然に周りの人の中からも消えていき
母のみならず
親戚や近所からも
亡くなったのは『僕』だった
そんな意識が広まっていった。
中学の頃はそれでも愛されるのなら
と気にしなかっただろうが
この3年間
僕は『僕』を殺して『兄』を演じてきた。
面白くもないのに笑って
人との会話について行く為に興味のない分野まで調べて
好きでもない露出の多い女子を上手くかわして。
僕は何をしているんだろう。
何度も思った。考えた。
でももう何もかも手遅れなのだ。
僕が『兄』を辞めてしまえば
周りは確実に離れていく。
でもそれは別に構わなかった。
一番は母だ。
二度も兄を亡くしてしまえば今度こそ完全に壊れてしまう。
もしかしたら今までの『兄』が僕だと知って
母は僕を殺すかもしれない。
そうなったとしても父は助けてくれないだろう。
それに、『兄』になる事を選んだのは僕自身だ。
きっかけは母だがそれに甘え愛欲しさに僕が選んだ。
だから苦しくても
僕が完全に消えてしまっても
辞めるわけにはいかない。
それによく考えたら
『僕』がいなくなって困る人なんていないんだ。
今までも。これからも。
だから・・・・大丈夫。
高校は兄と同じ所に兄と同じく主席で入学した。
学年トップを維持する為の勉学と
学級委員長と
生徒会と
クラスメイト達との交流と・・・。
高校生はなかなか忙しかった。
少しずつ息苦しさが増えていったある日
僕は校舎の隅にある誰も寄り付かない空き教室を見つけた。
ここなら少し休めるかもしれない。
それから僕は疲れが溜まると空き教室に足を運んだ。
3階建ての校舎の最上階の隅。
放課後には綺麗な夕日が見える。
寄り付く人もいない為周りは静かで
この世界に僕しかいないみたいだった。
「綺麗よね」
ふ、と隣から声が聞こえ目をやると
誰もいない筈の空き教室に見慣れない女性がいた。
いつから?どこから?
鍵は掛けたのに。
全校生徒は顔も名前も覚えているのに
この女は誰だ?
素の顔を見られたかもしれない事実に動揺が走り
声を出せないでいると女は続けた。
「まるで、この世界に私と君しかいないみたい」
その言葉に彼女の横顔を見る。
夕日に照らされて長く黒い髪がキラキラと光って見えて
とても
「綺麗だ」
はっ、と口を閉じる。
すると女は
「でしょ。ここ私のお気に入りなのよ」
と子供っぽく笑った。
心臓がうるさい。
素の顔を見られたから?
急に声をかけられたから?
それとも・・・。
次の日も空き教室には彼女の姿があった。
初めて会ったあの日
僕は早々に空き教室を後にした。
あれ以上彼女と会話を続けていたら僕は『兄』でなくなってしまう。
そう思ったから。
それに僕よりも『兄』の方が・・・。
いやいや。決してそんな下心なんて。
そう。彼女はここの制服を着ていた。
顔も名前も分からないがここの生徒である事は間違いない。
今『兄』でない事がバレてしまえば
今までの僕の努力が水の泡となってしまう。
だから、『僕』は消してしまわないと。
深呼吸して空き教室の扉を開けた。
『兄』の顔で
「やぁ。昨日は突然帰ってしまって申し訳ない。僕は真斗。君は?」
『兄』の顔で優しく声をかけると大抵の女子は顔を赤らめて答えてくれる。
正直女子とは会話したくない。・・・恥ずかしいから。
今まで他人と関わる事がなかった僕に女子耐性なんてものはない。
しかし振り向いた彼女は
「気味の悪い顔」
と、凄く嫌そうな顔をしていた。
「・・・ぇ」
あれ?
おかしい。赤らめる処か
凄く嫌そうにされた??
それに気味の悪い???
僕に言ったのか????
固まった僕を見て
「昨日の君の方が私は好きだけどな」
「そんな訳ないだろ!!」
つい声を荒げてしまった。
彼女を見るとびっくりした様に目を見開いていた。
しまった、そう思って直ぐに誤った。
「いや。構わないわ。私が考えなしに余計な事を言ったからでしょ。」
「いや、そんな事は・・・」
「大丈夫。それに・・・私にはその顔の理由が分かるはずなのに」
「え?」
「何でもないわ。でも余計な事かもしれないけどここでは、
・・・私の前でくらいは素でいても良いんじゃないかしら。」
「い、いや。そもそも素とかなんとか・・・」
「ここには。息抜きに通っていたのでしょ?」
「・・・っ」
「大丈夫。私友達いないから。言いふらした所で私にメリットないしね」
「そう・・か。」
「私は結衣。よろしくね」
そうして彼女は唯一『僕』を知る人間になった。
今までたまにの息抜きだった空き教室通いも
気が付けば毎日になっていた。
『兄』ではない僕は口下手で上手く会話出来なかったが
彼女は毎日笑顔で迎え入れ僕に他愛ない話をしてくれた。
春に彼女と出会い
いつの間にか季節は冬に移っていた。
僕と彼女は恋人関係になっていた。
きっと僕は初めて会ったあの瞬間に恋に落ちていたのかもしれない。
「好き・・なんだけど」
と彼女に伝えると彼女は笑って
「ほかの人にはスマートに声をかけるくせに、本当の君はとことん不器用ね」
と言って僕にキスをした。
生まれてから今までで一番幸せだった。
彼女の唇は柔らかく暖かかった。
冬が終わり
また春が来た。
変わらず僕と彼女は空き教室で他愛ない会話をして過ごしていた。
一度だけ学年を尋ねた事があったが
「女性に年齢を尋ねるなんてダメよ」
とはぐらかされた。
2年に上がり半年が過ぎた。
兄の命日。
その日僕は彼女に『兄』と『僕』の事を話した。
僕を見て、理解して、想ってくれる彼女には知っていて欲しかったから。
話終えた僕を彼女は優しく抱きしめてくれて。
僕は少しだけ泣いた。
鼻をすする音の奥に「ごめんね」と聞こえた気がした。
顔を上げると悲しそうな、寂しそうな
そんな顔をしている彼女と目が合った。
だがすぐに「不細工」と意地悪く笑って
僕達はキスをした。
その夜兄の夢を見た。
相も変わらず優しい笑顔で僕の頭を撫でる兄。
困った様に笑って「ごめんな」と言った。
その言葉を聞いて思った。
もしかしたら兄も僕と同じだったのではないか。
兄の部屋は夜遅くまで灯りが付いてる事があった。
きっと兄も両親の求める『兄』であろうと必死だったのだ。
そして両親を裏切ればきっと両親は僕を『兄』にしようとする。
優しい兄は僕に同じ立場に立って欲しくなかったのかもしれない。
あの頃は分からなかったが
今なら兄の気持ちが分かる気がする。
だから「ごめんな」。
どこまでも優しい兄。
皆から愛されていたはずの兄。
本当の兄を見て、理解してくれた人はあの中にいたのかな。
「まぁ。今更考えたって分かんないよな」
そう言えば、彼女も同じような顔をして
同じ言葉を言っていたな。
「ごめんね」
何故彼女は謝ったのだろうか。
むしろ迷惑をかけてしまったのは僕なのに。
今日会ったら聞いてみようか。
感謝もまだ伝えていない。
兄が亡くなって、『兄』を演じ
この世界から消えてしまった僕を見つけてくれた彼女。
誰からも見られなかった僕を愛してくてた彼女。
「ありがとう」なんかじゃ足りない。
あぁ。早く。
「会いたいなぁ」
しかし。
彼女と会うことはなかった。
その日以降彼女は空き教室には現れなかった。
「ごめんね」を置いて
僕を置いて
彼女は消えた。
夏が過ぎ秋が過ぎまた冬が来た。
最近は空き教室に足を運ぶこともなくなった。
彼女が消えてからしばらくは忙しいのだろうと思った。
彼女がいつ来ても会える様
変わらず毎日通っていた。
しかし1ヶ月経っても2か月経っても彼女は来なかった。
流石におかしいと感じた僕は校内を捜してみる事にした。
廊下ですれ違う生徒に声を掛けられる度笑顔で対応したが
心の中は考えがまとまらずぐちゃぐちゃだった。
何かしてしまったのだろうか。
僕の事が嫌いになってしまったのか。
どうして来なくなったのか。
来れなくなってしまった理由があるのだろうか。
何か身に起きたのだろうか。
何かあったのかの心配と
捨てられてしまったのかの恐怖心。
正直他人なんて構っていたくなかった。
でも、そう言うわけにもいかず
笑顔で対応せざるを得ない自分にイラつくばかりだった。
空き教室でも会えず
校内のどこにもいない。
もう二度と会えない。
そんな考えが頭の中を支配していった。
それからは月日の流れが早かった。
心が空っぽになった僕は
人形の様にただただ『兄』だった。
彼女の事は忘れよう。
大丈夫。
独りだったあの頃に戻っただけ。
大丈夫。
今まで上手くやってきたじゃないか。
大丈夫。
僕は
大丈夫。
「委員長、今回のテスト満点じゃなかったって。」
テスト結果が張り出された掲示板の前。
僕は茫然と立っていた。
5教科の合計点数。
いつもは500点が今回は498点。
1教科のたった1問。
順位は変わらず1位。主席。
そう。
一般生徒ならそこまで深くは気にしない。
現に周りの生徒たちも
今回は調子が悪かったんだな。
最近元気無さそうだったから。
たった1問だろ。
そんな声を笑いながら僕にかける。
普通の家庭に生まれていればそんなに深く気にしない。
しかし、僕は普通の家庭じゃない。
まずい。非常にまずい。
兄は今まで満点しか取ってこない完璧な子供だった。
母はそれが自慢でそれが当たり前だった。
この2点は『兄』であれば取れて当たり前の点数だ。
それを『僕』が落とした。
完璧が『兄』であれば
少しでも欠点を出せばそれは全て『僕』なのだ。
案の定母はテストを見て僕を問い詰めた。
真斗は100点しか取らない。
お前は誰だ。
お前は真斗じゃない。
偽物。真斗を返せ。
ありとあらゆる罵声を僕に浴びせた。
今まで守ってきた『兄』が
たった2点で崩れていく。
僕の努力なんてこんなものなんだ。
結局僕は紛い物で。
僕なんかが兄になんてなれなかった。
『僕』は兄が亡くなったあの日消えた。
『兄』は今日消えた。
じゃぁ、僕は?
今の僕は誰だ。
何処にいればいい。
どうしたらいい。
分からない。
助けて欲しいのに誰に助けを求めたら良いのか分からない。
『兄』ならきっと沢山いた。
でも僕には何もない。誰もいない。
彼女に会いたい。
気が付けば空き教室にいた。
窓の外には綺麗な夕日があった。
あの日と同じ。
彼女と初めて出会った日。
でも違うのは彼女がいない事。
「・・・もういいか。」
僕は頑張ったはずだ。
母に消され、『兄』として求められ
今までそれに応えてきた。
もう十分だろう。
今まで母がこれ以上壊れてしまう
なんて考えていたが
その前に僕が壊れてしまう。
もう疲れた。
だからもうーーーーーーーーーーーーー。
窓を開けて足を外に窓辺へ座る。
誰もいない声も聞こえない。
「・・・本当に僕一人だ」
そう呟いて身を投げようとした、その時。
「まるで、この世界に私と君しかいないみたい」
聞いた事のある台詞。
何度も聞いた大好きな声。
「・・・なんで」
振り向くと彼女がいた。
「ひさしぶり。取り合えず危ないからこっちに・・・」
「あ・・・」
教室に体を戻そうとした僕は手を滑らせ
落ちた。
目を開くと白い天井があった。
「気づいたか和人。」
和人。
久しぶりに聞いた自分の名前。
隣には父がいた。
「・・お父さん」
「こんなになるまでお前が追い込まれているとは知らず。すまなかった。」
父は僕に頭を下げた。
状況が飲み込めない。
ここはどこだ。
僕はどうなった。
ーーーーーコンコンッ
父は頭を上げ僕の顔を見て扉を開けた。
入ってきたのは彼女だった。
「やぁ。調子はどう?」
「・・あんまり、かな」
「あんまりか」と笑う彼女。
聞きたいことは沢山ある。
今までどこにいたのか。
何をしていたのか。
どうして消えたのか。
「聞きたいことが沢山あるって顔ね」
「・・・」
彼女は静かに父を見た。
「気が付いた事を先生に伝えてくる」と父は部屋を出て行った。
「取り合えず。今の君の状態から話すね」
そう言って彼女は説明を始めた。
あの時僕は3階の窓から手を滑らせて落ちた。確実に。
しかし運が良かった事に
下には大きな木、根元には低木がありクッションとなった。
救急搬送され命に別状はなし。
しかし、母と連絡が付かず父が連絡を受け駆け付けたそうだ。
そして事情を知った父は僕が追い詰められ自殺を図ったと考え
寝起きの僕に頭を下げた。
なるほど。
結果的に事故の様なものだが
まぁ、原因はその通りだしな。
「君のお父さんは君ときちんと話がしたいって言っていたから
後できちんとお話するといいわ」
そして、と彼女は真っすぐ僕を見た。
「今度は私の事」
謎の緊張感が漂う。
彼女の話はあまり現実味のない話だった。
「私の名前は三葉結衣。この名前に聞き覚えはある?」
三葉結衣。三葉。みつば・・・。
「ぁ・・・」
夜遅くに家を訪ね事故の詳細を伝えに来た警察官。
母と警察官の話声が小さく耳に届いていた。
全部は聞き取れなかったが
「みつば」
その単語が入っていた事を思い出す。
「そう。私は君のお兄ちゃんが庇った同級生。」
鈍器で頭を殴られた気分だった。
確かに兄が亡くなった話ばかりで
兄が庇った人がその後どうなったのか僕は知らなかった。
知ろうともしなかった。
彼女がそうだった。
こんな身近にいたとは。
「・・でも、兄が亡くなったのは・・」
「そう。私は君のお兄ちゃんの同級生。君の3個上。3年間の学校生活で私と君が会うことはない。」
そうだ。
3歳差は中学高校は被る事がない。
兄が高校に入学する頃、僕は中学に入学する。
僕が高校を入学する頃、生きていれば兄は大学生だ。
「よく聞いて。私、あの事故から最近まで意識不明だったの。」
「え?」
彼女は何を言っているのか分からなかった。
だって、空き教室で会っていたじゃないか。
付き合ってキスもして。
全部夢だった?妄想??
整理出来ず混乱していると
「正直私も良く分かっていないわ。
でも確かに目を覚ました時、私はベットにいた。そして家族から今までの話を聞いたの。」
「大人は誰も信じてくれなかったわ。頭を強く打ったのかもってしばらく検査漬け。
だから君に会いに行くのが遅くなったの。」
ゆっくり彼女は近づき僕が寝ているベットに腰かけた。
真っすぐ僕を見つめて
「君が苦しくて大変な時に傍にいてあげられなくてごめんね。」
そう言って彼女は僕を抱きしめた。
暖かい。変わらない優しい匂い。
今もまだ頭は混乱しているけどそれでも彼女がいる。
また彼女に会えた。
「会いたかった」
「うん。私も」
「僕君の事が好きだ」
「うん。私も君が好きだよ」
目が合い
キスをして
また抱き合った。
涙が出た。彼女の声も微かに震えている気がした。
僕たちはしばらく抱き合い泣き続けた。
涙が枯れるまで。
最後まで読んでくださりありがとうございます。
勉強の合間に息抜きで書いたものですがなんとか完成して良かったです(笑)
素人作品の為おかしな点が多々あると思いますが広い心で受け止めていただけたら幸いです。
私自身幼い頃はなんでも出来る兄と比べられていた事もありました。勉強でも運動でもピアノなんかも・・・。「お兄ちゃんは出来るんだから」とよく母に言われたものです。だから幼い頃は母も兄も苦手でした(笑)私と兄は柔道を習っていたのですが、ある日兄と犬の散歩をしていた時兄がボソッと「柔道痛いし嫌だよな」と私に言ったんです。兄にも嫌な事があるんだ。私と同じなんだ。と少しだけ兄が好きになりました。兄や姉ってなんでも出来て完璧に見えると思うんです。仲良しな方の方が多いかもしれないけれど私や和人の様に苦手意識を持ってしまう人だっていると思うんです。そのまま大人になるまで苦手意識を消せずぎこちないまま疎遠になったり・・・なんて事も。私の兄は高校に上がる前に耐え切れず母を拒否する様になりました。勉強を辞めて柔道を辞めて母から距離をとって・・・。あの頃私が兄の話をもっと聞いていたらって今でも思う事があります。完璧な人っていつかきっと心が限界を迎えてしまうと思うんです。だからそんな方が身近にいてこれを読んで私と同じだって思った方。なんでもいいんです。その方の話を聞いてみて下さい。その方の本当の気持ちを見つけてあげてください。なんて少し長くなってしまいましたがそんな気持ちを込めてこの小説を綴りました。小説を読んでこの後書きを読んで少しでも誰かの心に響きますように。ちなみに今は兄と母は疎遠になってしまいましたが私と兄はとても仲良くやっています。