1 シスター・コンプレックス
新・ラブコメでしょうか。
妨解 凛
妨解 囀
橋倉 轟
大木 颯
借馬 桜
「妨解凛さん!僕と付き合ってください!」
私はクラスメイトで両想いだと判明した橋倉轟くんに告白された。桜が散り、風が吹き、目の前には彼が差し出す手があった。最高なムードの中、私は中途半端な回答をしてしまった。
「少し...考えさせてください。」
「お兄ちゃん、友達から告白されたんだけどどうすればいいと思う?」
私は兄に相談した。頭脳明晰、運動神経抜群、整った顔、高身長と全てが完璧な兄にこのような恋愛相談をした。
「お、おい...告白されたのか?」
「うん。あ、あと私もその人のことを好きなんだよ。」
「大好きなのか?」
「大好きではないかな...好きかな。」
自分の内心を思うがままに語った。
「凛。断れ。」
兄からは断ることを勧められた。
「な、なんでなのよお兄ちゃん!」
「俺が...」
「え?」
兄は震えた声でうめく、まるで泣きじゃくれた声の様に。
「俺が泣く~~~~!!!」
「きゃあああぁぁぁ!もう泣いてるじゃん!」
そう、私の兄はありえないくらい、とても、もの凄くシスコンなのだ。
「断りにくいからお兄ちゃんが断りにいってよ~。」
「いや、俺は女性恐怖症で...」
「レズじゃないから!え、なら男女交際なら...」
「もっとダメだな。」
私は目を点にして兄の方を見つめた。兄は轟くんのことを恨んだかのような目をしていた。翌日、兄は直接轟くんに会いに行った。めっちゃ心配な予感がするが。
俺の名前は妨解囀だ。世界で1番妹のことを知っていて、愛していて、愛でている。なにより妹のことが1番な高校3年生だ。今日は妹からの頼みで橋倉轟という輩に妹との交際の件を断りに来た。
「あ!妨解さん!おへ...え?」
「お前が轟か。」
俺は威嚇と言わんばかりに轟を睨みつけた。
「どなたですか?」
轟は震えた声で俺の方を見てきた。俺は目元を緩め安全そうな声と顔でこう言った。
「初めましてだな轟。俺は妨解囀と言うんだ。名前で察したか?俺は凛の兄だ。」
「初めまして橋倉轟です。どういったご用件で。」
「凛との交際の件で話に来た。」
轟は顔を赤らめて、まるで成功したかのような笑みを浮かべこちらを見つめてきた。だがお前の予想とは違うんだがな!
「申し訳ないけど、妹との交際の件なしにしてくれないか。」
「なんでですか!」
「まぁちょっと色々あってな。理由は話せないんだが。」
轟は落ち込んだ表情で泣く泣く帰っていった。
「あ、お兄さんちょっと良いかな?」
うしろから女性の声がした。女性恐怖症の俺にとっては最悪な状況だ。
「あー。もう家に帰らなきゃなー(棒)。」
くそ棒読みの演技でマ〇オのBダッシュ並みの速さで走って逃げて行った。
「お兄ちゃん、断ってきた?」
「あぁ。絶望におとしめてやった。」
それはやめてほしい。いくらシスコンだからって限度のある兄弟愛はそう簡単に展開しない。
「じゃあ俺は部屋に戻るからな。彼女なんて作るなよ。」
「私同性愛否定派だから!」
閲覧ありがとうございました。