何でわたしこんな奴と婚約してたんだろう?
何で私こんな奴と婚約してたんだろう?
二人を見て真っ先にそう、思った。
二人が居るのは学園の寮の裏庭の真ん中に大きな噴水があって。
その周りにベンチが三つ置かれている。
周りは人の背丈程の木々が植えられているが。
二階三階からは丸見えだ。
実際私は二階から彼等を見ている。
私以外の人間もあちらこちらから、彼らを見ている。
そんな所で私の元婚約者バーラル・エムロデ伯爵子息とララミー・フォックス男爵令嬢が、口付けを交わしている。
馬鹿じゃない?
いや本当に馬鹿なんだ。
あの男。
私に対する当てつけのつもり?
彼に初めて会ったのは、私の7才の誕生日パーティーで、家同士の政略の為の婚約だった。
お母様が王の妹だったから、私の誕生日パーティーはお披露目の意味もあり派手な物だった。
綺麗に着飾った彼は、お人形の様に愛らしく。
その金の髪も青い瞳も作り物めいていた。
まるで私の為に作られたお人形だと一瞬思った。
今思い出しても、私は本当におバカな子供だったな。
無表情の彼の顔を見て、緊張しているのだと思った。
その時の私は脳みそにベラドンナが生えていたのだろう。
この国では頭のネジが、外れた娘の事を頭に花が咲いていると言うが。
頭に雑草が生えているのならまだましだ。
ベラドンナ(毒草)では末期にも程がある。
反抗。
彼のその瞳を見れば、直ぐに分かっただろうに。
彼は父親の借金の為に差し出された、生贄の気分だったのだろう。
私達の婚約は災害が続いた彼の父親の領地を救う為だった。
私は選べる立場にいた。
母は王の妹で父は金も権力もあるコンヘラル侯爵だ。
嫌なら婚約を解消しても良かったのだ。
でも……
私は彼に一目で恋をして。
本当に今思えば、顔以外こいつに取柄は無い。
彼から手紙を貰う事も、会いに来てくれる事も無かった。
ましてや花や宝石の贈り物ももらった事は無い。
ペンペン草や石ころですら貰った事が無かった。
本当に名ばかりの婚約者だ。
まあ、気持ちはわかる。
その時の私は【魔力病】で肌は土色で浮腫んでいて。
瞳は濁り髪は艶も無くバサバサでまるでオーガの様だったから。
―――― 可哀想に 可哀想にまるで生贄ね ――――
―――― 国一番の美少年が、国一番の醜いオーガ姫の婚約者なんて ――――
私の誕生パーティーに来た貴族達はクスクスと笑っていた。
彼に恋をしていた私にはその嘲笑は届かなかった。
恋をしていた私は、3・4日置きに彼に手紙を書いていた。
私は筆まめだったから、そりゃ嫌がらせかと言うぐらい書きまくっていたわ。
けれど、その手紙の返事が来る事は無かった。
【魔力病】で苦しむ日々、私は前向きに病と闘っていた。
彼の誕生日には高価な贈り物と手作りのクッキーを焼いたりハンカチに刺繡をした物を送った。
月に2回は彼の家に行って彼の御両親とお茶会をしたが、
彼が私に会いに来る事は無かった。
彼の両親はしきりに「照れているんだよ」ととりなしてくれたが、
いつも彼はいなかった。
逃げたんだろうな。
彼に同情した使用人も手を貸していたんだろう。
彼の館を訪ねると使用人のほとんどが顔を背けていたから。
使用人としては失格だなと思ったが、口には出さなかった。
この国では12歳になると貴族はカマニア王立学園に通わなければならない。
私は学園に入ると1年で卒業して隣の国に向かった。
病で寝込む事が多かったが、私は頭は良かったのよ。
隣の国に病気の治療に行く事になり卒業を急いだ。
グリオス帝国は私が患っている【魔力病】の治療が進んでいた。
【魔力病】を患った者は15歳になる前に亡くなる。
私は死にたくなかった。
グリオス国で治療を受ければ助かる可能性がある。
グリオス帝国の王族が【魔力病】にかかり命を落とす者が多かった為、国を挙げての研究が進んでいたのだ。
暴走する魔力を抑える為の魔石もグリオス国で取れた。
魔石に魔法陣を描き、痛みを治める研究も進んでいる。
その病院は海の近くにあり、グリオス帝国立学園も近くにあった。
風光明媚なところだった。
治療は苦しかった。
研究はどの国よりも進んでいたが、完成まではいたっていなかったのだ。
だが……
病を治さねば、15歳で死ぬのだ。
その為、私は彼に手紙を書く事も出来なくなり。
私の手紙が、ぱたりと止んだ事に彼は気付いたのだろうか?
彼の両親からは、よく手紙を貰った。
隣の国に行く事も、病院に入院する事も彼の両親に伝えたが。
婚約者が私を見送りに来る事は無かった。
結局、私が彼に会ったのは、誕生日の日だけね。
私が隣の国にいる間、彼の両親は馬車馬のように働いて我が家からの借金を返した。
かなり無理をしたのだろう。
彼の両親は2年前に亡くなった。
事故とされたが、殺されたのだ。
私の忠告を無視して税を上げ、人件費を削ったから。
領地は荒れて。
領民に恨まれる事になった。
そして…小さな反乱が起きた。
小さな反乱はお父様の力でもみ消され。
彼はその事を知らない。
反乱が起きたなどと王家に知られれば、彼の家は取り潰される。
伯爵家は彼が学園の卒業と共に継ぐ事になって居る。
それと共に私達の婚約も解消され。
初めから無かった事となった。
この婚約は彼の家を助ける物であって、我が家には余り利益はない。
それと、お互いに悪い虫を防ぐ為であった。
【魔力病】に侵されていても王族の血を引き、有力貴族の我が家に入り込みたい者は多い。
だが、彼の両親が亡くなると。
私の両親はバーラルを切り捨て婚約を解消した。
彼の両親とは友人であったが、バーラルとは友人では無かったし信頼もしていなかった。
私に対するバーラルの態度に両親も弟も怒っていたのだから。
婚約解消を代理人から聞いた彼は大喜びしたそうだ。
「もうこれで、オーガ姫の婚約者と馬鹿にされずに済む」
彼はそう言ったそうだ。
代理人も私の両親も呆れていた。
だから……
彼は今は私の婚約者ではない。
元々私は15歳までは生き延びれないと、期限付きの婚約だったのだ。
あの娘、何て言う名前だっけ?
ララミー・フォックス男爵令嬢だったかしら?
赤い髪と緑の瞳の娘が笑っている。
可愛い娘ね。
彼とお似合いね。
でも二人共、服がケバ過ぎない?
成金みたいよ。
グリオス国は落ち着いたドレスが流行りだったから。
今この国はケバいドレスが流行りなのかしら?
私は嗤う。
何でも【真実の愛】だとか。
まるで舞台女優の様に、声高く叫んでいる。
冷めた気分で二人を観察する。
パーティー会場に向かう卒業生は誰も彼らを見ない。
日常茶飯事なのでいつもの事と無視しているのだろう。
他人に認められないとその【真実の愛】は存在できないの?
今日は学園の卒業式だ。
皆、美しく着飾っている。
友達と会場に向かう少女達、婚約者と笑いながらパーティー会場に向かう二人組。
クラスメイトだった人たちの顔もちらほら見える。
元婚約者もその隣の彼女もケバケバしいドレスを着こんでいる。
あら?
他の人は落ち着いた色のドレスだわ。
二人だけまるでピエロの様。
目立ちたいなら、そのドレスはピッタリね。
何でも二人の服は男爵令嬢がデザインしたものだとか。
でも、その服の色合いでは、ハンサムな彼の肌の色がくすんで見えてよ。
私は病気の治療の為、学園を特別に一年で卒業した。
すぐさま隣の国に向かったから、卒業パーティーには出られなかった。
この学園にも同級生にも馴染む前に出たから、思い出らしい思い出も友人と呼べる者もいない。
私は窓から離れると、テーブルの上に置かれている箱の中から手紙の束を取り出す。
ほとんどの手紙の封は開けられていない。
彼は私からの手紙を読まなかったんだろう。
「姉上?」
弟が部屋に入って来た。
今年学園に入学した弟は学園の寮に入っている。
侯爵家は弟が継ぐ事になっている。
私は弟の部屋から二人を見ていたのだ。
弟は私が持っている手紙の束を見て眉をひそめる。
「彼は私からの手紙を読まなかったみたい」
私は笑うと暖炉に手紙の束を放り込んだ。
手紙は勢いよく燃え上がりやがて灰になった。
卒業パーティーが行われるのは初夏だが、この辺りは夜は冷える。
だから暖炉に火は入っている。
手紙の中には、彼の領地に関する助言を書いていたのだが……
彼の両親が無理をして借金を返したため、税金が高くなり払えない領民が領地を離れている事。
その為廃村が出来て、畑が荒れている事。
お抱えの騎士団を減らしたため、魔物が狩れず町の付近まで魔物が侵入してきている事を書き記した。
余計なお世話だと言われれば、そうなのだが。
彼の両親はとても良い人だったが、経営者には向いていないし、
貴族としては珍しい恋愛結婚だったから。
だから……
息子にも恋愛結婚を望んでいたのかも知れない。
息子の政略結婚に負い目を感じていたのだろう。
私も度々彼の両親のもとを訪れ、助言していたが、
彼の両親は領地の税を上げると言う悪手を使ってしまった。
そして……
反乱で殺される事になった。
恋に浮かれた彼が、領地を立て直すのは難しいだろう。
遅かれ早かれ、彼は爵位を返す事になる。
それは彼にも領民にもいい事だ。
無能が上に居る事は、みんなを不幸にする事だから。
残念ながら【真実の愛】ではどうしようもない現実がある。
【真実の愛】ではお腹は膨れない。
もし……
彼の父親が前の婚約者と結婚していれば、お金に困る事は無かっただろう。
元婚約者は裕福な伯爵令嬢だったそうだ。
持参金もたっぷりあった。
彼の父親は恋愛結婚を選び没落していた妻の実家を過剰に援助して家を傾かせた。
妻の父親は競馬狂いで借金まみれで……
金欠の原因は災害ばかりでは無かったのだ。
コンコンコン
ドアをノックする者が現れた。
メイドがドアを開けて一人の男を招き入れる。
「もう時間だよ。行こうか」
その人は鍛え抜かれた体を白い軍服で纏い、凛々しい顔をしている。
「ええ」
私は微笑む。
彼はバーラルの様な美形では無いが、人を引き付け跪かせる威厳がある。
「そのドレスまるで燃え上がる炎のようで、君によく似合っているよ」
私は頬を染め。
「ありがとう。嬉しい」
と小さく答えた。
私は差し伸べられた彼の手を取る。
病を治して帰国した事を知った学園長が、卒業パーティーに出席する事を許可してくれたのだ。
馴染みが薄かったこの学園に最後に良い思い出となる様にという心遣いだ。
まあ。
そればかりではない、下心もあるのだろうけど。
コンヘラル家は王族と血の繋がりもあるし。
金も地位もあるから、卒業生の繋がりを持ちたいのだろう。
それに今年は王族の子供たちはいない。
数年前に第一王女のコータル様が御卒業していらっしゃるが。
数年後に第一王子のホノリウス様が御入学するので、かなり間が空いている。
だから私と彼と弟が呼ばれた訳だが。
支度を終えた弟も私の後に付いてくる。
弟は幼いながらも中々のハンサムだ。
護衛騎士が後に続く。
彼等はグリオス国の緑の軍服を纏っている。
「本当に健康になったんだな」
弟はしみじみと言う。
あんたは私の祖父か‼
私は笑いを堪える。
「心配性ね。もう健康体よ」
「だって僕が記憶している姉上はベッドの上でのたうち回っているものばかりだよ」
「あら? たまには体が楽な日もあったわ」
「そんな時はアイツの所に訪ねて行ったよね」
「会えなかったけどね。でも彼の両親に領地経営の助言をしていたから、決して無駄な時間じゃなかったわ」
「でも……結局無駄になった」
「不幸は避けられない。彼の両親は運が無かったのね。もう少し我慢すれば、領地も回復したのに……」
「そろそろお喋りは終わりにしよう。着いたよ」
私達は学園の卒業パーティー会場のドアの前に立つ。
毎年学園の卒業パーティーは少し離れた館で行われる。
王族は最後に会場に入る手はずになるのだ。
ドアが開かれ、彼と私と弟が会場に入った。
人々からどよめきが起こる。
「えっ? あのハンサムな方がグリオス国の王太子様‼」
彼を見て女生徒からはしたない声が上がる。
無理もない。彼はグリオス国の王太子なのだから。
そして……
私の婚約者でもある。
私と彼は言わば病気仲間で、共に病と闘った戦友であり。
お互いを高め合う、ライバルでもあった。
お互い死の淵に有った時には、共に手を取り励まし合った。
糞不味い薬も互いに笑い合って飲み。
病で衰えた体のリハビリには二人共歯を食いしばって頑張った。
お陰でブクブクに膨れ上がった身体も元に戻り。
今では二人共スリムな体を手に入れた。
近頃私は国一番の美姫だったお母様に似ていると言われるようになり。
今の私達を見て誰も思うまい、かつて私達が【オーガ王子】【オーガ姫】と呼ばれていた事を。
「この中で君が一番綺麗だ」
ファイン・グリオス王太子(私の婚約者)がそっと耳元で囁く。
「ファインったら」
「お熱い事で」
弟が肩をすくめる。
「隣の国のファイン・グリオス王太子と我が国のエウロペ・コンヘラル侯爵令嬢が今日婚約しました」
学園長の紹介で私達が婚約をした事を告げられた。
私達に祝福の拍手が起こる。
私はゆっくりと卒業生たちを見渡して挨拶をする。
「私は【魔力病】を患い、療養の為にグリオス国に向かいました。治療のため学園を一年で卒業したために、本来なら皆さんと一緒に学園生活を過ごせなかった事を残念に思っておりました。ですが、学園長のご厚意で今日の卒業パーティーに婚約者のファイン様と出席できた事をとても嬉しく思います。この卒業パーティーはこの国でのかけがえのない良い思い出になるでしょう。皆さんご卒業おめでとうございます」
続いてファインが挨拶をする。
「私も【魔力病】を患い。私の国の特別施設に入院していました。病と闘うのはとても苦しく孤独でした。そして…人生に絶望していました。どうせ治らないと。そんな時エウロペと出会い。懸命に病と闘う彼女に感化されました。私達は共に手を取り病と闘い、これに打ち勝ったのです。エウロペとの出会いに女神ヘレナに感謝します。皆さんもこれからの人生に辛い事悲しい事があるでしょう。でも貴方達にはともに卒業した仲間がいます。仲間と手を取り互いに助け励まし合い。今後の人生を歩んでいかれる事にエールを贈ります」
私達に割れんばかりの拍手が送られた。
私達は手をつなぎ、片手を振って拍手に応える。
生きててよかった。
病気に勝てて良かった。
ファインに出会えて良かった。
私は今とても幸せだわ。
「ダンスを一曲踊っていただけますか? 僕のお姫様」
「ええ。喜んで」
私は彼の手を取りダンスフロアに進み出る。
曲が流れ、私達は蝶のように舞う。
~~~*~~~~*~~~~
バーラルは呆然とその少女を見る。
彼女の母親は王家の至宝と呼ばれた。
彼女は母親にそっくりだ。
王もこの姪っ子をいたく可愛がっていると後ろにいる、令嬢達が噂している。
羨ましいと令嬢たちは囁く。
グリオス国はこの国の三倍大きな国だ。
先の王も、今の王も賢王だ。
心配事は【魔力病】で王子や王女が死んでしまう事だったが。
その病の治療法も確立して、王太子は見事生き延びた。
オーガ王子と言われた彼は、精悍な顔をして鍛え上げられた身体をしている。
呪いで醜いオーガに変えられていたが、美しい少女の献身で呪いが解けたようだと噂する。
これぞ噓偽りのない【真実の愛】だと誉めそやす。
間違えた‼
何処で間違えた‼
バーラルは髪を掻きむしりたい衝動を抑える。
元婚約者は赤いドレスを纏い、まるで明けの明星の様に光り輝いている。
美しい。
あの美貌なら自分の横に立っても、なんら遜色は無いだろう。
本当にあれがかつてオーガ姫と笑われていた生き物なんだろうか?
自分の腕にぶら下がっている女を見た。
まるで場末の安酒場で客を引いている娼婦の様だ、いや猿か?
それにこのドレスは何だ‼
正気に返って彼女を見ればまるでピエロの様な姿だ。
そして…
クスクスと皆に嗤われている。
かつて男爵令嬢の事を忠告してくれた友人達も、今は彼から離れて行った。
こんなはずでは無かった。
私はただ、両親の様に仲睦まじい夫婦になりたかったのだ。
だから15歳で死ぬ女ではだめだと思った。
国一番の美少年の自分の横に並ぶのが【オーガ姫】ではだめだと思った。
だから無視した。
初めからいない者だと思った。
どうせいなくなるのだから。
あの時、みんなも自分に同情してくれたではないか。
婚約が解消された時、みんなは「良かったな」と言ってくれたでは無いか。
なのに……
今では自分が皆に無視される。
ララミーの腕を振りほどくと足は元婚約者の元に向かう。
いきなり肩を掴まれた。
「婚約者をほうって何処に行くんだ?」
かつての親友がいる。
「彼女を祝福してやれ」
バーラルは彼を睨んだ。
「もうお前には関係のない事だ。彼女にかまうな‼」
ダンスを終えた二人の周りを卒業生が取り囲む。
まるでエウロペとバーラルを隔てる、高い高い壁のように。
「今更彼女に何を言うつもりだ?」
言い返す言葉が無かった。
確かに彼女に何が言える?
散々無視をしておいて。
今更、婚約者面?
婚約は解消され、婚約をしていた事実さえ無かった事にされている。
それは自分が望んだ事だった。
「バーラル様」
不安そうな顔をした婚約者が彼の腕を取る。
「あちらに美味しいケーキがあります。一緒に食べましょう♡」
無邪気さを装ってララミーは彼をその場から連れ出す。
私の方が綺麗って言ったじゃない‼
私の方が優しいって言ったじゃない!!
ついさっきまで甘い言葉をくれたじゃない‼
なのに‼ なのに‼ なのに!!
あの女の外見が少し変わっただけで目の色を変えて、人をゴミを見る様な目で見るなんて!!
嫉妬の炎に身を焼きながら、ちらりとエウロペを見る。
かつてバーラルの友人だった男はため息をつく。
彼は、卒業と同時に王族の護衛騎士になる事が決まっていた。
さり気なく虫を排除できたとは言い難い。
ララミーの嫉妬に救われた所がある。
「ほんと馬鹿だよ。その手に至宝を持ちながら手放すなんて」
ポツリと言葉をこぼして、またさり気なく護衛の仕事に戻った。
~ Fin ~
***************************
2021/3/7 『小説家になろう』 どんC
***************************
~ 登場人物紹介 ~
★ エウロペ・コンヘラル (18歳)
侯爵令嬢。【魔力病】の為にブクブクと体が浮腫み【オーガ姫】と呼ばれていた。
13歳からグリオス国に行き入院して魔力病の治療に励む。
その時、同じ病で苦しんでいた王太子と出会い、共に助け合い闘病生活を送る。
2年前にバーラルとの婚約は解消された。
彼の両親が税を上げると言う悪手を使って借金を返した事やバーラルの態度の悪さも有って、エウロペの両親は密かに怒っている。
★ バーラル・エムロデ伯爵 (18歳)
エウロペの元婚約者。この国一の美少年だった。
今は普通の美青年。【魔力病】を患ったものは15歳まで生きられない事を知っていたのと【オーガ姫】と呼ばれたエウロペの醜さを嫌い、婚約していたのに完全無視した。
金目の贈り物は貰っていたが、手作りのクッキーやハンカチは捨てていた。
無駄にプライドが高い。
★ファイン・グリオス (20歳)
グリオス国の王太子。エウロペの婚約者。
【魔力病】を患い、エウロペが入院してきた時に出会う。
病と闘う事を諦めていたが、エウロペと出会い。共に病と闘う決意をする。
来年にはエウロペと結婚する。
★ デイリス・コンヘラル (12歳)
エウロペの弟。しっかり者。賢い。婚約者あり。
★ ララミー・ホックス(17歳)
男爵令嬢。勉強嫌い。甘いもの大好き。お金と贅沢が大好き。
バーラルのお嫁さんになるつもり。服のセンスは最悪。
★ コンヘラル侯爵夫婦
夫は侯爵で金と権力を持ち。妻は王の妹で王家の至宝と言われたほどの美貌を持つ。
15歳までに死ぬと言われた【魔力病】の娘の為に国一番の美少年と婚約させる。
両親としては領地の援助と引き換えに娘に優しくして欲しかっただけ。
グリオス国に【魔力病】の施設が出来て一か八かの賭けで娘を送り出す。
約束通り婚約を解消した。その後全く援助はしない。
★ バーラルの友人
学園に通うお金を出してもらう代わりにバーラルの監視をしていた。
依頼人はコンヘラル侯爵。
婚約解消の時期が来ればコンヘラル侯爵が送り込む女を紹介する手はずになっていたが。
ララミーが現れて手間がはぶけた。
最後までお読みいただきありがとうございます。