プロローグ 喪失と再会
初めまして浅野匠です。今回がはじめての小説投稿になります。趣味程度にやっていこうと思うので投稿スピードはどうなるか分かりませんが。温かく見守っていただけると幸いです。それではお楽しみください。
その森は精霊の森と呼ばれていた。
見方によって葉を七色に変える木々。エメラルドグリーンの水が流れる川。暖かくも、冷たくも感じる風。そしてそこに住むなんとも不思議な生き物精霊。
この世界にある現象そのものが具現化したと言われる精霊は、強大な力を持つがために人間たちに利用されることは少なくない。そんな精霊を守るためにあるかのような森は、まさに精霊たちにとっての聖域だった。
そんな森が今・・・燃えていた。
木々は漆黒の炎に包まれ、水は赤黒く濁り、風には灰が乗っていた。
慟哭にも笑い声にも聞こえる音が鳴り響く中、一人炎の海の中にたたずみ、左手を虚空へと掲げている少年がいる。彼は誰にも見えない、しかし確かにそこにいる何かに向けて言葉を紡いでいる。
「・・・俺が必ずお前を・・・いやお前たちを・・・」
少年の言葉は誰にも届いていない。しかし、そんな少年の言葉にフッと誰かが頬を緩めた気配がした。
□ □ □
目の前に壮大な門がある。リューティング王国立魔導学院。数多くの国の重鎮や有名な学者、または軍人を輩出してきた。名門の中の名門だ。
今日はその学院の入学式。周りには晴々とした表情の新入生が保護者同伴の元集まっている。なんてったってこの学院に入学できればエリートコース間違いなしなのだから。
しかし、一人たたずむ少年は浮かない顔をしていた。自分の中にいる者たちがくだらないことをはなし話しかけてくるがゆえに。
『ほう、ここが人間の学び舎か。なかなか面白そうなところじゃねえか』
『なかなか可愛い子たちがたくさんいるじゃない。あの方の言葉がなければ契約しちゃいたいくらいだわぁ』
『我々の義務を忘れるなよ。我が君は情報収集が終わり次第早々にここを去るのだ。面倒を起こすなよ』
『そうだよ。あの方が戻られた時に僕たちが怒られちゃう』
『なによ、ちょっとした冗談じゃない』
「もういいから黙れよお前ら・・・」
決して彼は、頭の中で一人でしゃべっているわけではない。しかし、彼の中にいるなにかの声は周りには聞こえておらず、結果ぶつぶつ独り言を言っているやつにしか見えないのだ。
『申し訳ありません我が君。いますぐに黙らせます』
『んだよいいじゃねえか。昔から森にいたんだから、おめえに友達どころか、名前を読んでくれるやつすらいねえだろ?』
少年の額に青筋が浮かぶ。しかし、事実なので反論できない。いつかできる友達に妙な印象でも与えたらどうする!と反論しようとしたところで、不意に呼ばれるはずのない名前がよばれた。
「・・・ケルス?」
どんな些細なことでも構いませんので、批評をいただけると嬉しく思います。あとTwitterもやっています。名前も同じなのでフォローしてもらえるとありがたいです。