表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
売れっ子ブイチューバーは崖っぷち!? ~陰キャ声優の苦難~  作者: 縁藤だいず
4章 夢見降魔の浸食
57/85

4-3 困った時は大人にブン投げろ

「ということで三厨さん。薫をユーグレラに誘うので一緒に来てください」

「一人で行けばいーじゃん!」


「そこをなんとかっ!」

「だ~か~ら~! 前にも言ったけど、ユーグレラは私の仕事じゃないんだって!!」


 電話越しに聴こえる、三厨さんのうめき声。

 今日も今日とて残業確定な仕事量が、まだまだ残ってるらしい。


「っていうかさ。ちょっと見ない間に、なにイガちゃんと顔見知りになってんの?」

「それはまあ……すごい偶然なんですけど」


「偶然じゃ済まないレベルだけど。てかイガちゃんにやる気はあるの?」

「微妙ですね。なので一緒に説得をお願いしたいんです」


「……なにそれ、S級クエストじゃん」

「でもうまくいけば小清水に恩も売れるし、ホムラ復帰のキッカケになるかもしれません」


「言わんとしてることはわかるけどさぁ……役残ってるの?」

「一応、速水さんに言って一枠確保しました」


「へえ、どんな役?」

「国王軍の二番槍、アズサです」


「いい役じゃん。でもさーちゃんのサポート役かあ……」



 ――薫が担当予定の”アズサ”は、物語の中盤で登場する引き立て役だ。


 透香は異世界転生した先で槍の能力を買われ、王国軍から突撃隊長に任命される。

 だが、これまで軍の一番槍を務めていたアズサが異を唱え、二人は公式試合にて決着をつけることになる。


 しかし試合の当日、試合前の検分にて透香の槍に毒が塗られていた。

 アズサ派閥の取り巻きが、透香を失格にするために仕組んだ罠だった。


 だがアズサ本人はあくまで実力勝負での決着を望み、その勝負でボロ負けする。

 だがその結果を踏まえた上で、アズサはこのような発言をする。


「これほど力の差があって毒など仕込むはずがない、よってこれは第三の手の者による陰謀だ!」


 敗者自ら、透香の無実を証明する。

 これによって透香もアズサを信頼し、背中を任せられる戦友になる……という、アツいキャラクターである。



「イガちゃん、やるかねえ……?」

「透香のサポート役ってところが気にはなりますが、キャラクター的にはいい役どころですし、薫にあったアツいキャラだとは思います」


 問題は透香――紗々の引き立て役である点だ。

 そこに拒否感を持たれる可能性は十分にある。


「でも説得なんてどうするつもり? 私からの説明じゃクソデューサーの存在がチラつくだろうし、変な拒否感持たれそうだけど」


「それは自分から説明します。俺が降魔の名前で交渉してきたって」

「え、夢見くんの名前って……」


「つい口を滑らせちゃったんですよ、俺が元夢見降魔だって」

「は? そんなあっさりと??」


「その辺はちょっと長くなるんで、省かせてください」

「次元くんがいいならいいけど、なんかモヤっとするなあ」


「なにがですか?」

「だってさーちゃんには、まだなにも言ってないんでしょ?」


「それは……はい」

「言うつもり、ないの?」


「……そのことで、ちょっと相談したいことがあるんです」

「ん、もちろんいいよ。イガちゃんと会った後にでも話そうか」


 三厨さんは軽くオーケーしてくれたが、話というのはもちろん降魔復活のことだ。


 ――クリスマスイヴまで、あと四日しかない。

 少しずつ後ろを固めていかないと。



「で、薫ちゃんとはいつ約束してるの?」

「明日か明後日くらいでお願いしたいんですが」


「急過ぎるよ!」

「すいません、時間があまりないもので」


「まあ、明後日ならなんとか……」

「恩に切りますっ!」


「……ていうかさ。イガちゃんと仲良くて、夢見くんバレしてるなら私が行かなくてもよくない?」

「そこはまあ……様式美ということで」


「なんのこっちゃ」

 三厨さんは困ったように笑い、仕事に戻ると言って電話を切った。


 実際のところ、三厨さんが間に入らなければいけない理由はない。

 だが三厨さんをこの件に噛ませておかないと――クリスマス後に薫の頼る人がいなくなる。



---



 そして二日後。

 やや日が傾き始めた午後三時、忠犬ハチ公像の前。


 俺と三厨さんは電車遅延で遅れている薫を、いまかいまかと待ち構えていた。


「あ~なんか久しぶりに都内に出たってカンジ」

「アキバも十分都会じゃないですか」


「あそこは都会じゃなくてアキバだよ。見てみなよ、この街の普通臭」


 確かにスーツを纏った社会人の数が桁違いだ。なにより女性が多い。

 さすがは渋谷と言ったところか。


 だが……


『サクラはみんなに届けたいっ! 新発売、ハピラキヌードル!』

 スクランブル交差点の先にある大型スクリーンで、天ノ川サクラが叫んでいた。


「……アキバと大差ないかもしれませんね」

「世間的にブイチューバーが受け入れられてきたのよ。首領ドンの偉業に感謝しないとね」


 三厨さんは手を合わせて、サクラに黙礼をする。


 ブイチューバーの運営に携わる三厨さんにとって、ブイチューバーの始祖であるサクラは神のような存在だ。


「で、ひとつ聞きたいんだけどさ。どうしてこれからカラオケボックスに移動なの? 普通にスタバとかでよくない?」


「防音対策がしっかりしてないと困るので」


「そりゃ非公開情報もりだくさんだけどさ……だったら会議室とかで良かったんじゃない?」


「会議室じゃ薫は来てくれませんよ、今日は薫と二人きりで遊ぶって名目で呼んだんですから」


「……は?」

「それと三厨さんはサポートをお願いします」


「なに、サポートって」

「薫とは百パーセント揉めますので、店員さんへの説明とか、困った時の助け船なんかをお願いします」


「ちょ、ちょちょちょっと待ってよ。話が全然見えてこないんだけど……」

「頼りにしてますよ、三厨さん」


 俺はできる限りの笑顔を作り、三厨さんの質問を封殺する。



 その時、改札から手を振る薫の姿が見えた。


 いつもと変わらない満面の笑み。


 ……だったのだが、隣にいる三厨さんに気付くと、困惑した引きつり笑いに変わり……話ができる距離になると露骨に不愉快そうな顔で言った。



「なんで、みー先輩が一緒なんですか!?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ