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売れっ子ブイチューバーは崖っぷち!? ~陰キャ声優の苦難~  作者: 縁藤だいず
1章 陰キャ声優、白なめくじ
5/85

1-4 そして始まる自己紹介

 と、いうことで今更ながら自己紹介を始める。


「俺は次元和平。すぐそこの神保町近くに住んでる」


 形式がてら、ぺこりと頭を下げる。


「はい、自己紹介ありがとうございま~す。ちなみに今日はどちらに乗ってここまで来たんですか~?」


 なぜかブルームがそんな合の手を入れる。



「自転車だよ、お前だって荷台に乗っただろうが」

「このクソバカ野郎が!!」



 なぜかブルームがキレる。


「いまのはな、チャリで来た! って言わなきゃダメなとこだろ? ホンット、キミそういうとこあるよね~?」


 なんだ、こいつ。

 お前が俺のなにを知ってるって言うんだ。


 ブルームチャンネルの動画すべてに低評価ボタン押してやろうか。


「じゃ次はママ!」


 言われた少女は崩していた足を畳み、正座になる。

 自然と身長差で上目遣いを向けられる、なにやら気恥ずかしい。


「……いちのせ」

 鈴の鳴るような、小さな声。


「一ノ瀬アレクサンドラって言います。学校とかだと下の名前を紗々《サーシャ》で通してました」


「一ノ瀬、紗々か」


「はい」


「……」


 沈黙。


「おい、カズ。そこはいい名前だね、とかなんとかあるだろ~?」


「あ、ああ。そうだな」



 言われて気付くが、もう遅い。

 なんとなくその場しのぎで質問を重ねる。



「紗々は今年でいくつになるんだ?」


「十九歳です」


「そんなバカな」


 言われて紗々はぷくっと頬を膨らませる。


「ウソじゃありません。そんなこというツギモトさんは、おいくつなんですか?」


「……俺も、今年で十九だよ」


 すると紗々は少し勝ち誇ったような顔をする。


「今年で、ってことはまだ十八歳なんですね」


「そうだけど、それがなんだよ」


「いえ、別に」



 別に、なんて言う割にはどこか誇らしげだ。

 まったく起伏のない胸を逸らし、わたしのほうが年上とでも言いたげだ。



「わたしのこと、年下だと思ってたんですよね」


「だって紗々、小さいし」


「小さいとか言わないでください、これからです」


 本当だろうか、十九歳にもなれば成長期は過ぎ去っているはずだが。


「っていうか、いきなり呼び捨て……」

「なんだ、聞こえねーよ?」


「ひっ!」

 紗々が首を縮こめて、肩を震わせる。


「カズ、大声出すな。ママがびっくりするだろ」

「あ、その、悪い……」


 クソ、やりづらいな。

 あいにぃと同じようにしゃべってたらマズイってことか、気をつけないと。


 って思ったけど……気にする必要、あるか?


「なあ、ブルーム」

「なに~?」


「いや、もう用は済んだから帰ろうと思ってさ」

 そう言うとブルームはうっ、と表情を引きつらせた。


 よくよく考えれば、別に自己紹介すらも必要ない。


 水道は止めた、不審者でないことも証明した。ついでにブルームの魂まで証明した。だったら俺の役目は終わったはずだ。


 時刻はもう午前四時、ブルームに呼ばれなければとっくに寝ている時間だ。


 それは紗々とて同じだろう。

 当の紗々も「くあっ」と口を大きく開けてあくびをした。あくび助かる。


「い、いや~、でも運命的だよね~! こうして出会った二人が同い年なんてさ、記念にマリカーでもして行かない?」


「マリカー関係ないし、てかなんの記念だよ?」


「そ、そっか~あは、あははは」


 ブルームはぎこちない笑みを浮かべ、なぜか明後日の方を向いて笑っている。


「ダメ?」


「いや、ていうか時間も遅いし。紗々も迷惑だろ、なあ?」


「……ぅうん? すいません。聞いてませんでした」



 頭をぐらつかせ、舟を漕ぎ始めていた紗々が応える。

 いやめっちゃ眠そうじゃん、無理だろ。



「帰る」

 俺はそう言って立ち上がる。


「行かないでよ、カズ~!」

「なんでだよ、もう俺が残ってる理由ないだろ」


「せめてママと友達になってよ!」

「それは第三者がお願いすることじゃない」


「そうかもしれないけどさ~~!」

 玄関を背にし、ブルームが立ちはだかる。


 よくわからない。なんでこいつはこうもしつこく食い下がるんだ?


 もちろん、紗々みたいな可愛い女の子と仲良くしたいって気持ちはある。


 でもこんな時間に押しかけて、連絡先とか聞いて、友達になろうってのはなにか違う気がする。


 そもそも俺は人と距離の詰め方を知らない。


 この世に生を受けてまだ二年、まともに話をしたと言えるのはあいにぃくらいだ。


 人付き合いの経験すらロクにない俺が、こんな硝子細工みたいな子と仲良くできるとは思えない。……なれたら、嬉しいけど。


 そんな後ろ髪引かれる思いを拭えず、俺はちらりと紗々の方を振り向く。


 すると銀髪の少女は床に突っ伏して寝息を立てていた。



「……こんなところで寝ると、風邪引くぞ」



 俺は一つ溜息をつき、崩れ落ちた紗々の肩を揺する。

 だが目を覚まさない、まるで気絶するように眠っている。



「ブルーム、寝室ってどっちだ?」


「こっちだよ! 良かったらママと一緒に寝ていく!?」


「んなことするか」



 もう一度、肩を揺すったが起きる様子はない。

 仕方なく俺は紗々の体を抱きかかえる。


 軽い。食事をしているのかも怪しいくらいに。

 胸元にまで抱えると銀色の髪がナイアガラのように垂れていく。


 足で寝室のドアを開け、ベッドにその体を横たえる。


 体に毛布を掛け、髪が散らないように纏めていると、ふっと鼻腔を掠める香り。

 ……少し、ニオうな?


「おやすみ、風呂くらい入れよ」


 聞こえていないことを承知で言い、寝室の扉を閉める。


 廊下ではブルームが名残惜しそうな瞳で、俺を見上げている。


「そんな目をしたってダメだからな」


「頼むよ、ボクだってママになにかひとつくらい残したいんだ」


「紗々とはパートナーだろ、これからも話しかけてやればいい」


「違うんだよ。このままだとボクとママは一緒にいられないから」


「……どういうことだ?」

 そう問い返したのと同時、ポケットのスマホが振動する。


 一通のメッセージ。

 めずらしい。俺の連絡先を知っている人はほとんどいないのに。


 そして俺はそのメッセージを読み……ひときわ大きなため息をついた。



 ――紗々ちゃんがブルームをクビにされないよう、手伝ってね☆

 ――これは最重要任務だよ☆



 宛先は、四次元存在。

 ……なるほど、そうなるのか。


「ブルーム」

 スマホをポケットに仕舞い、俯いたままのブルームに声をかける。 


「さっきの話、詳しく教えてくれ」

 俺はそう言って玄関に向かう。


 帰るためじゃない。

 開きっぱなしだったカギを、閉めるためだ。

5話も読み進めていただき、ありがとうございました!


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