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売れっ子ブイチューバーは崖っぷち!? ~陰キャ声優の苦難~  作者: 縁藤だいず
3章 陽キャヒロイン、五十嵐かおる!
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3-8 道端の小石と、カーリング

 ――ユーグレラのスタッフさんとご飯を食べてくるので、お夕飯はいりません。


 と、紗々のラインが来たのはお昼過ぎ。

 外部との交流はいい変化なので「わかった、楽しんでこい」と返信。


 しかし、夕飯を作る必要がなくなると自分の分も作る気がなくなるのはご愛敬。

 久しぶりに外食でもするか、と思ってしまったら昼過ぎから一気に腑抜けてしまった。


 なにを隠そう。

 次元和平は無趣味でぼっちという悲しい生き物なのである。ぴえん。


 なんとなく紗々に煽られやすいゲームの練習や、MyTuberの動画を眺めていたが集中力も続かない。


 特に用事もないので散歩をするために外に出る。

 が、思ったより寒い。


 そういえば今年の秋口にジャケットを買ったが、それ以上の防寒着を持ってない。


 俺が二代目として過ごす初めての冬だ。

 実家に行けば降魔が着ていた防寒着はあるだろうが……あまり実家には行きたくない。


 ユーグレラの折に戻った際も、両親との間に妙な沈黙とよそよそしさがあった。

 そして一番イヤなのは必ず記憶が戻ってないか確認されること。


 戻ってないと告げるたび、両親の目には落胆が映る。

 その度に自分が望まれた命ではないと実感させられてしまう。それがイヤでたまらないのだ。


「……別に俺だって生まれたくて生まれてきたわけじゃねーよ」


 悪態をつき、小石を蹴飛ばす。

 転がった小石は網目状になっている側溝に、からりと音を立て落ちていった。


 蹴られて落ちた小石。

 こいつはいつの日か、地上に這い上がってくる日はあるのだろうか?


 ……そんなわけない。

 誰になんの得があって、ドブから汚い小石を取り出すというのだろう。


 落ちた小石は水に転がされ、どんどん小さくなり、いずれは原形を留めないほどの粉塵となるだけ。

 誰にも必要とされない小石は、最初から存在しなかったのと同じだ。


「……アホなのか、俺は」


 石の落ちた側溝の側に座り、蓋に手をかけて持ち上げる。

 こけしたコンクリートの中で、生活排水にまみれた小石を拾い上げる。


「悪かったな」


 俺は小石を持ったままコンビニのトイレを借り、手と小石を洗ってポケットに突っ込む。こんな小石でも、持っていればいつか恩返しにやってくるかもしれない。


 ……いや、先に蹴飛ばしたのは俺だったな。


 その時、ポケットの中でバイブレーション。


 通話だ。

 しかも結構めずらしい相手から。



「もしもし?」

「あっ、出た!」


「出たじゃないよ。どうしたんだ、急に電話なんて」

「えへへ、ちょっとヒマだったので……」


 照れたように笑うのは元気なホームラン娘こと、五十嵐薫。

 あれからたまに連絡を取ることはあったが、電話がかかってくるのは初めてだった。


「ね、和平さん。今日、ヒマしてたりしません?」

「……突然だな」


 本当は死ぬほどヒマなのだが、ワンクッション置いてしまう俺。

 気高きツンデレっぷりに震えて眠れ。


「はい、突然なんです。かおると和平さんの出会いはいつだって突然です」

「なら仕方ないな。クレーンにガチャガチャ、ホームランと続いて今日はなにが起こるんだ?」


「さてさて、なにを起こしてやりましょうか。ちなみにいまは冬ですよ?」

「冬か……冬といえば、ちょうど石を拾ったとこなんだ」


「ほう! ちょうどの意味はさっぱりですが、石を拾ったんですね?」

「ああ、だからこの石でカーリングでもやらないか」


「それはいいアイディアですね。でもカーリングの石は円周九十一センチ、高さ十一センチ、重さ約二十キロが必要とされています。和平さんが拾ったのはちょうどそのくらいの大きさの石ですか?」


「大きさは計ってないが、いまはジーパンのポケットに入ってる」

「でしたら却下ですね。仮に和平さんがカンガルーを連れていたとしても、カーリングの石はポケットに入りません」


「ワガママだな」

「ワガママではありません、名推理です」


「そっか……いまアキバにいるんだけど、出て来られるか?」

「えっ!? ホントにいいんですか!?」


「俺が薫のほうに行ってもいいけど……」

「いえいえ、かおるが行きますともっ! 一時間くらいはかかりますけど、待てますかっ!?」


「もちろん。あと今日だったら夜も空いてるけど……メシでも行くか?」

「行きます! 楽しみっ! 電車の中、走って行くので待っててくださいねっ!」


「それ、全然意味ないからな」


 今夜は紗々の帰りも遅い。

 たまには外食でもしようと思ってたし、ちょうどいい。


 と、軽い気持ちでオーケーした昼下がり。

 これが波乱の一日の幕開けだとは、この時の俺は知る由もなかった。

ここまで読み進めていただき、ありがとうございました!


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