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売れっ子ブイチューバーは崖っぷち!? ~陰キャ声優の苦難~  作者: 縁藤だいず
2章 転生、にこたまブルーム
33/85

2-12 【ご報告】みなさんにお伝えしたいことがあります

 えーと。もう声、入ってるかな……?


「おはにこ!!」

「ブルームだああああぁ!!」

「どしたん?」

「聞きたくない」


 あ、聞こえてるね。よかった~。


「なんかテンション低い」

「流れ怖すぎる」

「聞きたくない」

「どうせフリだろ」


 約一ヶ月ぶりの投稿になります、にこたまブルームです。

 今日はみんなにお伝えしたいことがあります……あ、スペチャありがとう。


 こんなにこんな長いことお休みしてごめんね。

 SNSでもコメントたくさんもらったけど、ちょっと気持ち的に返しづらくて……


 でもこれ以上みんなを不安にさせたらいけないと思って、こうして配信させていただきました。


「緊張する」

「引退?」

「また引退詐欺だろ」

「もう泣きそう」


 実はみんなに黙ってたけど……ボクのママ、えっと声をくれる人のことだけど。


 そのママがね………………コミュニケーション障害にかかってしまいました。


「草」

「知ってた」

「お約束の引退詐欺」

「突然の親近感」


 ボクは配信だといつもテンション高めだけど、それ以外だと別にそうでもなくて?


 だからスタッフにも「もしかして躁うつ病?」って何度も聞かれるんだけど……おい、草とかコメントすんな。


 ここでテンション高く好き放題しゃべれるのは、安心してるからっていうのはあるよね~


 ほらオタクくんたちもみんな内弁慶でしょ?

 内弁慶でいられるのってやっぱり家族に嫌われることないってわかってるから、ちょっと偉そうにしちゃうとこあるじゃん? ボクにとってはここがそういう場所だから……内弁慶できるみたいな感じ?


 きゃっ、これじゃボクとみんなが家族になったみたいだね☆


「あざとい」

「内弁慶ってそんないい意味じゃねえ」

「オフだと大人しいブルーム萌え」

「俺たちには嫌われても構わないってことかよw」


 あーもう、うるさいうるさい!

 とりあえずなにが言いたいかって言うと、コミュ障の母親を助けるためにたくさんの医療費が必要なんです。だからみんないっぱいスペチャしてね☆


 あ、MyTubeのアプリを通してスペチャすると、多めに手数料取られるからブラウザからしてね、これは絶対だかんな。


「安定の銭ゲバ」

「犬畜生」

「俺もコミュ症だからお金欲しい」

「これなんの配信だよ」


 あ~そうだ、忘れるところだった。

 今日は重要な告知がありまーす。


 この一ヶ月、ボクは別に遊んでいたわけではありませんっ!

 実は、にこたまブルーム、このたび声優としてゲームに出演することになりましたっ!


 はい、拍手~

 あん? ソシャゲのコラボじゃねーよ、声優って言っただろ?


 えーと、スタッフさん、もう画像出して大丈夫?

 ……あ、はい。というわけで公式からも案内が出たようなのでこちらっ!



 ノベルゲーム

 夕暮れ、彼らは。

 来春発売予定


 原作:夢見降魔

 主演声優:にこたまブルーム(所属:スタジオホライゾン)

 制作:VirtualCreate



「おおおおおおお」

「夢見降魔!?!?!?!?」

「ブルーム主演?????」

「今日はエイプリルフールじゃないぞ!?」


 おらよー、ビビったべ!!

 あのDimensionSummonerで有名な夢見降魔先生の書き下ろしだぞ!?


 確か言ったことあると思うけど、ボクもめっちゃDSのファンなんだよね。

 だからこの話もらった時はテンション爆あがりしたよ~


 あん? ノベルゲームって言っても十八禁じゃねーわ!

 いやそういうゲームにもちょっと参加してみたいけどね、もうMyTubeで活動出来なくなる気がするけどっ!


 ――で、ここからちょっと大事な話をするんだけど……ボクはこれからもブイチューバーはきちんと続けます。


 声優のお仕事もがんばるけど、それで配信がなくなるとかそういうことにはならないようにします。


 ここ最近いろんな事情が重なって、配信できなかったのは本当にごめんなさい。

 でもこうして一ヶ月ぶりにもかかわらず、こうしてボクの配信を見に来てくれて本当にうれしいです。


 みんなに忘れられてなかった、受け入れてもらえるんだって思うと、ブイチューバーになって本当に良かったと思う。

 ……それと、これからもママとずっといられるのが、本当にうれしい。


「泣かないで!」

「本業大事にしてくれて嬉しい」

「またくだらない動画あげてね」

「母想いだ」


 だからねっ! これからも変わらぬにこたまブルームを、どうぞよろしくお願いしますっ!


---


 ブルームが元気に言うと、たくさんの応援コメント流れていく。

 ツイッターやまとめサイトでは早くも、夢見降魔とブルームのゲームについて情報が飛び交い始める。


 まことしやかに囁かれていたブルーム引退のウワサはどこへやら。

 いまや降魔の名前で起こしたビッグウェーブを、一番気持ちよく乗りこなしている。


 先日、紗々はひとつの覚悟を決めてくれた。

 これから声優としての活動名を、にこたまブルームとして統一すること。


 もう一ノ瀬紗々が個人で声の仕事を請け負うことはなく、別の芸名を持つこともない。ブルームを引退するときは、声優生命を断つという覚悟だ。


 そしてその覚悟こそがホライゾン、白鳥に交渉できるカードと成り得る。


 なぜならブルームの出演した作品すべてに、今後、ゲームやアニメの出演欄に自社のブイチューバー名が必ず出るのだ。個人名や別の芸名が出ることは決してない。紗々が承諾したのはそういった覚悟だった。


 普通の声優は絶対にそんな契約はしない。

 だってそこに自由はない。逃げ出したら声優は辞めなければいけない、そんな不条理とも言える契約だから。


 そして白鳥がこれを受け入れない場合、白鳥はユーグレラに一切絡めない。

 降魔との専属契約を失い、ホライゾンで育てた演者は他社で活躍し、過去の投資も水の泡。……それどころか有力な二人が離脱したことに、誰もが白鳥にキナ臭さを感じるだろう。


 紗々は生涯、ブルームでいることを呑んだ。

 もう別の人間がブルームの名前を使うことはできない。

 一ノ瀬紗々こそが、にこたまブルーム本人なのだから。



「よかった……」

 ブルームの生配信が終わり、俺は一息つく。


 世間には紗々の声でにこたまブルームの名乗りを上げた。

 これからもブルームを続けると数万人の前で宣言してくれた。


 紗々の後任が立てられることは、もうないだろう。

 ミッション、コンプリートだ。


「カズ、ありがとう」

 スマホの画面には、配信を終えたブルームの静止画がぽつんと佇んでいた。


「カズには本当に感謝してる。なんてお礼を言っていいか……」

「どうしたんだよ、お前らしくもない」


「……っ、なんだよ、ボクが人に感謝したらおかしいのかよっ」

 ブルームは涙声になるのを隠さずに続ける。


「ボク、イヤなヤツだったよな。本当は助かりたいのに二人には無理しなくてもいい、なんて言い続けてさ」


「期待が裏切られるのは誰だって怖い。ましてや失敗したら自分が消えてしまうかもしれないんだ」


「でも二人はボクのために頑張ってくれてるのに、応援してやれない自分が本当に情けなくて……」


「いいんだよ、全部終わったことだ。これからも紗々と一緒にいてやってくれ」

「うんっ、本当にありがとう……」


 ブルームは悪くない。

 高い所から落とされるのは誰だって怖い。


 だったら夢なんて見ずに、緩慢な死を受け入れるほうが楽なんだ。

 でも辛い日々は終わった。


 だから今日だけは、涙がにじむような喜びにだって浸ってもいいのかもしれない。


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