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売れっ子ブイチューバーは崖っぷち!? ~陰キャ声優の苦難~  作者: 縁藤だいず
2章 転生、にこたまブルーム
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2-7 夕日丘ホムラ

 というわけでいざホムラとご対面。


 オレンジのポニーテールに、赤のミニスカ忍者服、バーチャルくのいち蓮常寺ホムラ。そんな目立つ服で忍者もクソもないだろ、ってツッコミはご愛嬌。


「蓮常寺ホムラ、返事をしろ」

 斜めに固定したスマホを前に、ホムラの一枚絵を問い詰める。


 ホムラは演者が活動を辞めただけだ、ホムラの魂が消えたわけじゃない。

 キャラクターの媒体が存在する以上、彼らは死を迎えない。


 俺たち三次の人間は二回死ぬと言われている。

 一度目は肉体的な死、そして二度目はすべての人に忘れられた時だ。


 二次存在的には一度目が創作者の死、二度目はすべての媒体が消えた時だといえるだろう。ということでホムラ自身は生きている。


「ちょっと聞きたいことがあるんだ、聴こえてるんだろ?」

 既読スルー、なしのつぶて、ただのしかばね。


 無視を決め込んでいるのか、もしくは他の媒体に意志を映して会話中なのか。

 だがもし無視してるだけだとしたら――。


「よく見るとホムラって……そそるな」

 スマホをダブルタップして画像を拡大させる。


 大きな胸元がアップになる。

 ブルームと違ってホムラはかなり扇情的なデザインをしている。


 帯の上に押し上げられた胸は言わずもがな、ミニスカも角度をつけることであえて足の付け根まで描いている。気取ってる表情はムカつくが、だからこそ歪めてやりたいって劣情を煽ってくる。


 俺はゴソゴソと下半身をいじり始める。


「まだ昼だけど我慢できないから……いいよな。こんな表情で煽ってくるホムラが悪い、きっとホムラも俺のオカズになれて本望だろう」


 ベルトを外し、チャックを降ろす。


「…………ひっ」


 テーブルの横に肌触りのいい鼻セレブを配置。

 あとは自分のタイミングでU☆T☆A☆G☆Eを始めるだけだ。


「せいぜい楽しませてくれよ? ニートには時間も体力も有り余ってるんだからサァ……!」

「わかったわよっ、わかったからやめてぇ!」


 画面内のホムラが両手を前に突き出し、自分の視界を覆う。


「そうやって最初から素直になればいいんだよ」

「信じられませんわ! わたくしの面前でそのような行為に及ぼうとするなんて!」


 居丈高なお嬢様口調で頬を膨らますホムラ。

 演者は姐御肌と聞いていたが、ホムラはお嬢様……ってより悪役令嬢的な印象だ。


「で、わざわざ呼びつけてなんの用かしら?」

「ちょっと世間話でもしようと思って」


「生憎とわたくし、あなたと違ってヒマじゃありませんの」

「三次と話す機会も貴重だろ? もしかしてパートナーでもいるのか?」


「そんなこと応える義理はありませんわ」

 答えはしないが、否定はされず。


 大体の二次存在はいない場合はいないと答える。

 とするとパートナーがいる確率は高そうだ。


「あなたですのね。パートナーでなくても会話ができる男と言うのは」

「知ってたのか」


「わたくしたちにもそういうネットワークがありますので」

 あれだけホライゾンのブイチューバーに聞きまわったのだ。

 横の繋がりがあるなら知っていてもおかしくはない。


「なんでもブルームを助けようと悪あがきをしてるらしいですわね」

「ああ、ホライゾンのボスには迷惑してるよ」


「わたくしにとっては願ったりかなったりですわ」

「やっぱりお前もブルームは嫌いなのか?」


「好きになれると思ってるんですの? ブルームのおかげでわたくしの人生めちゃくちゃですわ」


 まあ仕方ないか。

 ホムラの演者はブルームの登場から調子を崩し始めた。嫌われてしまっても無理はない。


「このままブルームにはご退場願いたいですわね。でも生まれ変わるようなことがあれば、話は変わって来るかもしれませんが」


「性格悪いな、お前」

「それは敵に対してだけですわ。温厚なわたくしも攻撃を仕掛けた相手には上品ではいられませんもの」


「ブルームは攻撃なんてしてない、それは逆恨みっていうんだ」

「なんとでも仰りなさい。敵陣営にいるあなたの言葉に耳なんて貸しませんわ」


 そういってぷいとソッポを向いてしまった。



 ……その後も大した話にはならず、適当に会話を切り上げた。


 そもそもブルームを嫌う筆頭格だ。

 よくよく考えればこちらに得する情報を言うはずもない。



 窓の外に目を向ける。

 そこに広がるのは雲一つない晴天。


 紗々を迎えに行くにも、夕飯を作るにも早すぎる。

 ふと俺は気楽な話し相手を求めて――天ノ川サクラを画面に表示させる。


「あらら、まさか神からご指名を頂けるなんて~!」

「だから神はお前だろ」


 いつものくだらない挨拶をし、俺は中々進まない現状をサクラに愚痴る。


「みんな仲良くできればいいのにね~」

「ホントにな」


 誰かが成功したから失敗すればいいとか、味方が傷つけられたら報復するとか……くだらない。そんな行為がなにを生み出すはずもないって言うのに。


「そういえば夢見さん、あの作品どうなったの~? イセカイに行く女の子の話~」

「なんだそりゃ。あと俺は夢見じゃねえ」


「そうだった、ごめ~ん。で、イセカイの話ってどうなったの~?」

 本当にこいつは話を聞いているのだろうか。


 というかイセカイの話ってなんだ?

 夢見が書いていたDSは異能バトル物だから異世界は関係ないはずだ。


「ほら~前に聞かせてくれたじゃない。夢見さんのシナリオがゲームになるって話だったけど、白鳥のせいで突然打ち切りになったって。カンカンに怒ってたじゃない?」

「なんだ、その話?」


「夢見さんは絶対ゲームにしたい。だからハヤミって人と一緒にコシミズに頼むと……上手くいくとかいかないとか?」


ハヤミ、コシミズ……って、小清水!?


「その話、詳しく教えてくれっ!」

 俺はスマホを握りしめ、食い入るようにサクラに詰め寄る。


「わお、なんか急に情熱的!」


 コシミズという苗字はめずらしい。

 ゲームとか異世界って話はさっぱりわからないが、もしかすると降魔と小清水の間になにか接点があったのかもしれない。


 ブルームに繋がる情報かは不明だ。

 けれど打開策が打てない以上、些細な情報にでも縋らずにはいられなかった。


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