プロローグ 住所特定
オッシャ、コラーー! にこたまブルームだぞォーー!?
おめえら見てっかーー!?
「見てる!」
「おはよう」
「うるさ」
「かわいい!」
今日は八月三十二日!
夏休みもいよいよ折り返しだね~、みんな宿題はもうやった?
……え、やってない? だよね~!
だってブルーム見てる人の六割は、三十台のオッサンだからさ、ボハハハ!
社会人はもっとスペチャしろ。
はい、じゃあ今日は大人気コーナー!
ブルームガチ恋勢が送ってきた、怪文書の朗読会やっていきたいと思います!
「きっつ」
「またか」
「草www」
「実はオタク相当好きでしょ」
あん、オタク好き? んなわけねーだろ!
べ、別に嫌いってわけでもないけどさっ……ただ死〇んで欲しいとは思うかなっ♪
――真っ暗な部屋に、煌々と光るディスプレイ。
二次元キャラクターの眩しい笑顔。
蒼い髪に天使の輪、背中にぴょこりと生える二対の翼。
ブイチューバー、にこたまブルーム。
自分の声で喋る、半年前に出会った親友。そしてもう一人の自分。
この収録は二週間前に行われたもの、それ以来ブルームチャンネルは更新されていない。
だって……もう来なくていいって言われてしまったのだから。
机に突っ伏し、働かない頭でぼうっとブルームのはしゃぐ姿を眺める。
……いいなあ。
わたしもこんな女の子に生まれたかった。
陰キャで、コミュ症で、外見も醜い、白なめくじなわたし。
学校と同じように、事務所でもお友達はできなかった。
もし、ブルームみたいに明るくなれたら、わたしも愛される存在になれたのかな。
部屋はずっと雨戸を閉めきったまま、いまが何時かもわからない。
最後にお風呂に入った日も覚えていない。
でもそんなのどうだっていい。
誰にも会わないんだったら、別にキレイでなくたってかまわない。
もう、このまま沈んでどこかに消えてしまいたい……
――不意にインターフォンの音が部屋全体に響き渡り、心臓が止まりそうになる。
「……ハァ、ハァッ」
玄関モニターに映るのは、息を荒げた男の人。
だ、誰?
「おい、いるんだろ? お前、ブルームの声優だよなぁっ!?」
背筋に虫が這うような悪寒。
ど、どうして。わたしのこと……まさか、住所特定されて……?
間髪開けず、玄関からガチャガチャと不快な音が聞こえる。
なに、この人。ドアを開けようとしてるの……? こわい……
そしてもっと恐ろしいことが起きる。ドアが開いたのだ。
え、ウソ?
なんで、カギ閉めてなかった――?
近づいて来る、足音。
「き、きゃあぁっ!」
自分の喉から迸る、金切り声。
身に迫る、明確な危険。
けれどわたしは恐怖のあまり、その場から一歩も動くことができなかった。
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