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シメオンは泉の水のおかげですっかり調子が良くなった。レジーヌとシメオンはブロン伯爵家に行って挨拶をし、結婚する許しを得た。こうして聖なる泉を守るブルーフォンセ家に、また一人陰気な者が加わったのである。


二人の結婚式は異例の早さで行われた。それは二人がすぐ結婚したかったというのもあるが、エスパス国王が二人の結婚を知って、迷惑をかけた詫びとして、盛大に祝いたいとの申し出があったためである。

そういう事で二人の結婚式は王都にある広場で行われる事になった。二人は盛大に祝われる事をとても嫌がったが、国王の申し出を無碍に出来ず、泣く泣く式の準備をしていた。


レジーヌは深緑色の衣装を着たがっていたが、ルノーと叔母が全力でそれを止めた。彼女は仕方なく叔母が勧める淡い紫の婚礼衣装を着ることになった。

妖精達は結婚式の当日に沢山花を贈ってくれたので、レジーヌはその中のいくつかを髪飾りとして付けていく事にした。

シメオンはレジーヌの美しい婚礼姿を見てしばらく言葉を失った。そして彼女の衣装と髪型が崩れないように、そっと抱きしめて口づけをしたのだった。


レジーヌとシメオンの結婚を祝うために人々は式場に集まり、美しい花嫁と端麗な花婿の姿を見て歓声を上げた。しかし彼らの不気味に笑い合う姿を見て、ブルーフォンセの人はそう言う人達だったなと再確認するのだった。



シメオンは結婚してからレジーヌの側を離れず、彼女を一人にさせる事はしなかった。稀に参加する社交の場には必ず一緒に参加して、他の男からレジーヌが話しかけられようものなら、すぐさま彼女を背に隠して自ら対応した。

レジーヌの日課であるガゼボでの読書や刺繍をする時も、シメオンは必ず付き添った。夜もレジーヌがちゃんと寝つくまで見守ってから自分も目を閉じ、日がな一日そばに居て離れようとしなかった。


シメオンはレジーヌの事が愛しくて仕方が無かった。彼女の隣で感じる温度や、彼女が発する声が心地良く、彼女を独り占めできる喜びを噛み締めていたのである。

初夜を経てからは、その気持ちは一層強くなり、彼女から少しの間でも離れる事を嫌がった。

泉とレジーヌを守るために、彼女から離れずにいる事が一番なのだと、シメオンは自分に言い聞かせて自分を正当化した。

ルノーからは少し小言を言われたが、シメオンは自分のしている事を全く悪く思わなかったので、周りの人から何を言われてもレジーヌの側に居続けた。


勿論、シメオンは泉と彼女達を守るために、次代当主の夫としての勉強は欠かさなかったし、宿街の人々との連携を図るために、苦手な人付き合いにも懸命に取り組んだ。

シメオンが頑張っている事をレジーヌは知っていたので、彼を一層愛おしく思い、彼女もずっと側に居たいと思うのだった。



「姉さんさあ、うざったくないの?」


「え?何がうざったいの?」


「兄さんだよ。四六時中ひっつかれてるでしょう?嫌なら嫌ってちゃんと言ったほうが良いよ」


「別に嫌ではないしうざったくもないわ。その、私は嬉しいのよ。いつも一緒にいられるって幸せじゃない?」


「姉さんがいいならいいけど。僕だったらちょっと気持ち悪いくらいだよ。というか気持ち悪いよ。ほら、そろそろ兄さん来る頃じゃない?はあー、僕もそろそろ結婚考えるかな」


「誰か良い人でも出来たの?」


「いっぱいいるからこれから絞るんだよ。僕は明るい人と結婚するからね。これ以上親族に暗くて変なのは増やしたくないよ」


そう言ってルノーは部屋を出ていった。そして入れ替わりでシメオンが入ってきた。シメオンは当然のようにレジーヌの隣に密着して座った。


「レジーヌ、私の母から手紙が届いた。その、顔が見たいから会いにくるようにと」


「まあ、是非私もお会いしたいです。・・・ですけど・・・」


レジーヌは王都の人の多さと賑わいを思い出して尻込みしてしまった。その様子を見たシメオンは顔を綻ばせて言った。


「私もレジーヌと同じ考えだ。母には子が生まれてからでも会いに行くと書いておくよ」


そう聞いてレジーヌは顔を赤らめた。シメオンはそんな彼女を見て静かに笑った。


「こうして君と一緒にいるのがとても幸せだ。きっと私たちは出会うべくして出会ったんだろう」


シメオンはレジーヌの肩を優しく抱きながら言った。


「シメオン、貴方がこの屋敷に初めて訪れた日の前日、妖精達が言ったんです。私の、運命が来るって。それはきっと貴方の事だったんでしょう」


「・・・本当に?もしそうなら、こんなに嬉しい事はない。私がレジーヌの運命なら、私にとっても君が運命の人だ。ずっと、ずっと共に過ごしてくれ。・・・勿論、君が嫌じゃなければの話だが。・・・いや、君が嫌でも側に居させてくれ。私を見たくないならマントを頭から被るし、君の邪魔は絶対しない。レジーヌが触れて欲しくないなら絶対に触れない。・・・いや、許してくれるならほんの少しだけでも触らせてくれると嬉しい・・・ああ、でもやっぱり」


「シメオン、ずっと一緒にいましょう。貴方の顔は毎日見たいし、私も貴方に毎日触りたいです。ずっと私の側に居てください。」


「・・・そうか。・・・ふふふ」


「うふふ」


こうして二人はいつもくっついては不気味に笑っていた。はたから見れば、シメオンは異常な程レジーヌに張り付いてにいるように見えたが、彼女にとってそれは決して嫌なことではなく、かえって嬉しそうな様子だった。

周りの者達はレジーヌの事を心配していたが、シメオンの勤勉さと、泉を守ろうとするひたむきな姿勢を知っているので、彼女がそれで良いなら仕方ないと、二人を放っておく事にした。



レジーヌはしばらくしてから懐妊し、無事に女の子を産んだ。その子供はシメオンの容姿にそっくりだったが、性格は彼に似ておらず活発な性格をしていた。ルノーと気が合うようでよく二人で遊んでいたが、彼以外のブルーフォンセ家の人達はその子には手を焼いた。


アルマンはブルーフォンセ家の健康状態が気になると言って屋敷をよく訪れ、レジーヌ達にしばしば説教をしては子供の面倒を見てくれた。レジーヌとシメオンは彼の大声に萎縮しながらも感謝していた。


それから数年後にレジーヌは双子の男の子を産んだ。その子達はブルーフォンセ家の気質を纏っていた。やはりブルーフォンセ家は暗い性格の比率が高いようだった。


あれから聖なる泉に害を為す者はおらず、ブルーフォンセ家は平穏な月日を送っている。少し賑やかになった彼らの屋敷には、今日もひっそりと不気味に笑い合う声が聞こえるという。

これで終わりです。ありがとうございました。

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