異世界に現れた希望の光
「おおっ!勇者様が降臨なされたぞ!」
「勇者様ぁ!」
寂れた街の昼下がり、広場で一人の老人が突然声を上げると、それまで近くにいて別々のことをしていた人間が、口々に叫びだした。
「あん?」
遊はいったい何があったのかと、広場の人間の方を見ていた。
「ついにあらわれたぞ!」
「勇者様が私たちを救ってくれる!」
「ちょ、おい!?」
遊はわけがわからないうちに広場の人間に取り囲まれて動けなくなってしまった。
当然、人違いだろうと思って辺りを見回した。しかし皆、遊の方を見ている。
「希望の光がついにぃ!」
「引っ張んなよ!服が破けるだろ!」
「神は見捨てなかったんだ!」
「わけわかんねーこといってシカトしてんじゃねーよ!」
遊が声を張り上げて、はらいのけようとしても多勢に無勢だった。広場の人間達は皆興奮しきっていて、しわくちゃにかれてしまう。
「逃げちゃおっと……」
「あなた様は勇者様なのですよ」
「はぁ?なんでだよ?」
「それについてはワシがご説明を」
最初に勇者だとか言い始めた老人が遊の前に出てきた。
仕方ないので遊は説明を聞く事にした。
「ワシがこの町長をしております」
「ふーん。それで勇者っていうのはなんなの?」
「少し長くなりますがいいですかな?」
「長くなるならいいや」
遊は眠そうな声を返す。
「簡単に言いますと四千年前にこの世界を救った勇者さまとあなた様は瓜二つなのです!」
「最初からそういえばいいじゃない。でも勇者とか興味ないんだよねー」
「お、お待ちを、どうかこの世界を救ってくだされ」
老人は慌てて遊の腕にしがみついて来た。
「なんで僕がそんな事しなくちゃならないんだよ?」
「魔術師を倒せば報酬は思いのまま!一日中眠っていても怒られませんぞ!」
「一日中眠っていても怒られない……」
気になるワードに遊は足を止めた。
「仕方がない、この僕がやってやろうじゃないか」