プロローグ
「これより避難訓練を始める!放送が始まったら机の下に速やかに隠れるように」
がたいのいい体育教師が大きな声で注意した。
しかし、生徒たちは体育教師の注意を聞かずにガヤガヤと騒いでる。そんな喧騒の中一人惰眠をむさぼっている生徒がいた。和泉遊だ。寝癖だらけの黒髪に、まったくやる気というものに欠ける眠たそうな顔をしている。緊張感ゼロなことこのうえない。
それどころか避難訓練が始まるという緊迫した状況にもかかわらず、
「あと五分....」
なんて寝言を言って幸せそうに寝ている。こんな危機的状況でも寝れるからには彼はとてつもない
大物なのだろう。
そう。
どんな状況下でも生き残れるような...
直後、避難訓練が始まり一人の生徒が体育教師に報告をした。
「先生、和泉君がついてきてません」
体育教師はしかめっ面をして生徒の方を振り向いた
「またあいつか。学級委員は和泉のこと連れてこい」
......あらためて言いなおそう。
彼はそんな能力を持っているようには見えない...
教室から戻って来た学級委員は体育教師に慌てて報告した。
「先生、和泉君が教室に居なかったです」
「なにぃ!?」
和泉遊は寝ている間に現実世界から姿を消してしまったのだ。