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2日目

〔魔王の部下の御訪問〕


退屈だな。昨日魔王倒したけど、なんか微妙だったんだよな。

俺はこの世に転生し約2時間で魔王討伐を完了し世に本当の平和を取り戻した。そんなこんなで英雄になった俺は昨日借りた宿屋のベッドの上で怠惰たいだむさぼっていた。

でも暇と感じるぐらいがいいのかもしれない。暇=平和という訳では無いが何となく今、暇な状況が平和に感じる。まぁ実際平和なのだが、こいつがいる事を除けば


「ねぇねぇつよし吾輩暇〜」


うぜぇ、なんでここにいるんだこいつ。

この床で横になってなまけているのが俺が昨日倒した魔王(笑)である。一人称が吾輩なのでちょっと魔王感がある。でもかまってちゃんでうざい。蝋人形にしてやろうか!


「剛さぁ、吾輩討伐した金で一軒家買おうと思わないの?」


吾輩討伐した金ってなかなかのパワーワードだな。確かに一理ある。ずっと宿を借りるより一軒家を買った方が気楽だし、まぁ固定資産税とか取られるんだろうな。この世界に固定資産税があるか知らんけど。


「じゃあ、不動産屋にでも行くか」


ぶっちゃけもう10年はここにいてもいい気がするが時すでにお寿司。てかお寿司食いてぇ。

魔王は目を輝かせて勢いよく立ち上がる。全く威厳のクソも無いやつだ。


「よし、じゃあ行くとするか!道中色々見るとしようぞ!」


あーはいはい、とりま留守番させるか。

俺はそう思ったがこいつは俺の監視の下にいるという約束で引き取った事を思い出し仕方なくベッドから降りる。


「ぐへ!痛い痛い踏んでる!」


いっけねー!てへぺろ

俺は魔王の抗議を無視し足早に部屋の外に向かう。


「もう剛〜わざと踏んだでしょ〜も〜う」


気持ち悪。あー気持ち悪。こいつ実は俺の事好きなんじゃね?モテない男子特有の思考回路だな。やめようそんな訳ない、てかこいつには好かれたくないlikeでもloveでも。


「もうーそんな訳ないでしょ。さっさと行くよー」


俺は魔王の口調を真似した。なんだこの二人。俺はBLには興味無いぞ。強いて言うならOLにはあるな。

部屋を出ると長い廊下が続いていた。適当に借りたから分からなかったが結構お高めの宿なのか高級感溢れる内装だ。


「なぁ剛、吾輩外界に行ってみんな怖がらない?」


知らない。てか誰がお前を見て怖がるんだあとズボン履け。


「無視するなよ、てか今日少し肌寒いな」


うん。だからズボン履こうな。このまま行った方が面白いかもな。よしほっとこう。

パンイチで出た方が魔王感ゼロでみんな怖がらないだろう。


「そうか?そんなに寒くはないと思うが」


だって俺しっかり服きてるし。

俺は魔王にいつもと変わらない口調で簡単に答える。魔王は腕組みをしながら鼻をすする。


「吾輩風邪ひいたかな。それかちょっと服が薄かったか」


そりゃそうだよねズボン履いてないもんねズボン履こうね。

てか何でこいつ自分がズボン履いてないの気づかないの?魔界ではこれ普通なの?

長々と続く廊下を歩き、螺旋階段を下る。エレベーターとかない為全て歩きだ。高齢者の方々は大変そうだなと思いつつ一歩一歩踏み出す。

内心、魔王こいつが赤っ恥かいて泣くところを見たくてウキウキしていた。

でもいたって俺は冷静だ。でもウキウキウッキッキー。


「ようやく降りてきたな、長かったな」


特に疲労感は感じなかったが、長々しい階段で少し気分が下がる。帰りもこれは面倒臭い。

魔王は今だパンイチ、受付の女の人の笑い声が聞こえる。指さして「ちょっと見てよ」とか散々言われている。何故気づかんのだ。

宿の看板でもある受付の人が人を嘲笑うのはどうかと思うが魔王こいつだから全く気にしない。むしろ気分がいい。いいぞもっとやれ。


「今日もみんな笑顔を絶やさぬな!いやー平和は良いぞ剛!」


知ってるよ治安悪化の原因。それに笑いでは無く嘲笑わらいだ。


「何を言う。お前が人々の不安の対象だったんだぞ。平和を感じるな元凶」


なお俺は魔王こいつには辛辣だ。甘やかしても意味が無いし他の人と同じに接するのも違う。だが、決して差別している訳では無い。区別してるのだ、魔王こいつの復活が世の人々を怖がらせたのは事実だ。少し厳しくするのは当然である。


「剛。最近吾輩に冷たくね?」


最近も何も昨日出会ったのですが。

魔王は長年の友人のように俺に話しかけてくる。友達って勘違いされるから寄らないで。


「俺は愛を持ってお前に厳しくしてるんだ、変な解釈すんな」


愛があるとか言っとけば何とかなるでしょ。何とかならないなら力で分からせる。


「い、イケメンだ!さすが我が剛!」


「まぁな、あと俺はお前のものでは無い」


うん。俺イケメン。ありがとうございます。

いくら魔王とはいえ顔を褒められるのは嬉しい。


「もう〜剛のツンデレさん!」


べ、別にお前の為じゃ無いんだから!勘違いしないでよね!ほんとにするなよ。勘違いも甚だしいぞ。

てかこいつ時々オカマみたいになるな。キモイ。殺すか。


「ツンデレじゃない。殺すぞ?」


「剛よ。軽く殺すなんて言ってはならぬ」


確かに口が悪かったな。こいつ正論いいやがって


「まぁ今のは俺が悪い。半殺すぞ」


殺しちゃいかんからな、半殺しならセーフ。


「半殺しでもアウトだからな!」


え?心読まれた?怖い。キモイ。殺す。

よしこの3つを3Kと呼ぼう。

なんてくだらない事してる場合では無かった、さっさと要件だけ済まして帰りたい。

俺は足を早めた。また、魔王は絶賛パンイチ公開中。

少し空気が冷たく、吹く風が肌に当たると今すぐにでも帰りたくなる。

薄い青色をした空を見上げ、鳥のさえずりが聞こえる。この素晴らしい世界を俺が平和にしたと思うと喜ばしい事である。


「やっぱり寒くない?特に下の方が」


と、下を寒がっているのに肩を抱いて体を温めようとする。何で下の方を暖かくしようとしない。

太ももを見ると鳥肌が立っているのが妙に笑える。当然周りの人も魔王こいつを見て笑う。


「ママ〜!何でなのひとパンツ一丁なの?」


純粋無垢な子供が変質者(魔王)を見て大声で言う。それをみた母親が制止にかかる。


「見ちゃダメよ、変態よ変態。あんな風になっちゃダメよ」


ごめんなさいこんなの連れて来て。

何故かすごい罪悪感を感じる。悪いの魔王こいつなのに。俺も将来はこんな奴にならないでおこう。

子供を連れた母親は足早にその場から遠ざかる。子供の方は興味津々なのが心配になる。でも面白いから許す。


「確かに寒いな、じゃあとっとと要件済まして帰るとするか」


「そうだな、よし!我に続け!」


元気だなこいつ。何で先陣切ってるのかは謎だが、俺は魔王の後ろを追う。

なんかムカついたから蹴りを入れる。


「いぃ!」


凄まじい叫びが耳に響く。あ、そうだ俺のスキル忘れてた。てへぺろ。

俺は自分のスキルの【最強無敵】で一撃で倒す事が出来る事を忘れていた。魔王をHPはゼロだ。これは素直にごめん。


「仕方ない、担いで行くか。パンイチを」


そして俺は魔王a.k.aパンイチを担いで不動産屋に向かう。その道中、当然だがすごい注目を集めた。まだ俺が魔王を討伐した者と知らない人がほとんどの為、警備隊のような人に職質された。計10回。新記録だ。

だがしかし一つ問題があった。不動産屋に向かうはいいがどこにあるのか分からん。だから行き交う人に道を尋ねるが魔王こいつのせいで全く相手にされない。そしてまた警備隊みたいな奴に職質される。


「あ、そうでしたか。貴方様があの魔王を討伐した勇者様でしたか。これは失礼いたした」


こちらこそ色々と失礼しまくりました。

だが、なんの証拠も無いのに俺が魔王を討伐したと信じるのは美徳だな。ただ、騙されそうで心配だ。

でも今は人の心配より自分の心配だ。これじゃあご近所さんから噂されそう。変な趣味の2人組がいるとか。

魔王こいつがいると埒が明かないので適当にゴミ袋の山にほおり投げる。それが妙にジワる。やだ、性格悪いかもしれない。だが、そんな自分は嫌いじゃない。

それからというもの、道を尋ねるために声をかける。という過程も無く女性の集団が押し寄せる。イケメンというのはこんなに幸せだったのか。そして1番近くにいたポニーテールの女の人に不動産屋まで案内して貰うことにした。

女性は勝ち誇った顔をしていた。神様ありがとうございます。イケメンは最高です。


「この街は初めてですの?」


女性が上目遣いで聞いてくる。言葉遣いが綺麗でどっかの魔王とは大違いだ。


「ええ、昨日来たばかりでして」


少し微笑みながらも俺は答える。

女性は頬を染めながら、言葉を続ける。


「そうですの?ではどこ出身で?」


そう聞かれても困るな。適当に答えるか。

俺はそれっぽいことを言う。


「東にあるちいさな村です」


東経135°とか言っても通じないだろうな。

と当たり前の事を思いながら話を続ける女性の横を歩く。

沢山の人で少し歩くのが辛いが何とか前に進む。いい例としては新宿みたいな感じだろうか。

少しすると不動産屋に着いた、女性に簡単にお礼を言い『ゲルドの不動産屋』と書かれた看板が目立つギルドハウスより少し小さめな建物に入る。


「お、いらっしゃい。ハンサムな兄ちゃんなこった。さぁさぁこちらへ」


人柄も良さそうで髭を生やした40代ぐらいの男に言われるがままに導かれる。

至る所に地名であろう物と、値段が書かれている。どれも見覚えの無い地名ばかりだ。

するとオフィスにあるような簡素な壁に覆われたソファと机があった。


「ではお座りください」


「どうも」


適当に返事をし、早速要件を伝える。


「今日は物件を見に来たのですが、空きあります?」


「それならいいのがありますよ、こちらなんてどうでしょう」


男はそう言うと机上に数枚重なった紙を置く。

そこにはナリジアという場所にある、まあまあな値段のする物件だ。金銭的には問題は全く無いのであとは周囲の環境の確認をする。


「俺、この街に来るのは初めてなんでこの物件の周りの事を知りたいですが」


できれば外食店が近い方がいい。あと家具屋も服屋も、というか全部。


「この物件は新築でして耐震工事は勿論の事天井も高くて広く感じ、ゆったりとできる物となっています」


ほう…なかなかいいじゃないか。ゆったりしたいからな。新築なのもいい。


「で、周りの環境は結構よくてですね。馬車乗り場も近くて商店街もあってこの街の観光スポットの中の1つとなってるんですよ」


人通りの多い所の付近に住むのは嫌だが便利な環境にはそれなりに人は集まるのは当然だ。

全く問題は無い。


「その物件はここからどれくらいで行けます?」


あまりにも遠いといざという時に面倒臭いからな。この不動産屋がチェーン店なのかは知らないが出来るだけ近場の方がいい。


「ここから近いですよ。この店をでて2つ目の角を曲がったところです」


何か変だな。いい具合に話が進みすぎている。何か嫌な予感がする。

俺は何か忘れてないかと考えるが特に思い浮かばない。まぁいっか。


「じゃあ買います。一括で」


「おや、随分とお金持ちで。ご職業は?」


「勇者です。魔王討伐したんでお金はたっぷりん」


「は?」


握手をしながら他愛のない話をし、一括購入した物件へ向かう。特に説明も要らないので速やかに向かうことにした。

だが、何か重要な事を忘れている。確実に忘れている。やだ、醤油きれてたかしら。

そんな訳もなく歩きながら考える。


「あ」


思い出した時ってつい言っちゃうよね。

俺は魔王の事をすっかり忘れていた。あいつは俺の監視下に居ないといけないのに。うっかりしてたぜ!

そして俺は歩くよりも飛んだ方が楽だなと思いジャンプする。あれ?何で宙に浮いてるの?あー羽か。は、羽?


「あれま、なんだこのカッチョイイ羽」


俺の背中には黒い影でできたような羽があった。生えているというよりも生成されたという方が的確な感じだ。

まぁいっかさっきのゴミ捨て場に急ぐとしよう。てかこれも何かのスキルなのかな。今度ギルドハウスに行ってみよう。やる事がいっぱいだ。

俺はため息混じりの息を吐く。

ゴミ捨て場には10秒もかからなかった。

だが、ゴミ捨て場に着いたのはいいのだが肝心の魔王あいつが居ない。

まずいな。俺は本能でそう感じた。俺は少し上昇し街を一望しようと試みた。


「あ、あいつあんな所に」


この街の少し横にある草原にいた。あんな所に草原あったんだ。

俺は少し急ぎ気味で魔王の元へ向かう。

途中、魔王は1人では無いことに気づく。誰だアレ?友達か?でもちゃんとズボン履いてるし、違うか。

そして俺はほんの数秒で魔王の元に着いた。


「あ、おーい剛!こっちこっち!」


何であんなにお気楽なんだ?パンイチだし。

だが、魔王の近くにいる存在はお気楽では無いらしい。その瞳からはとてつもない殺気を感じる。なんかゲーム大会に勝った時に向けられた視線に似ているな。


「まったく、何やってんだ。もう家買ったから」


いち早く家に帰りたかった俺は面倒事になる前に魔王を呼びよせる。


「おけ、明日家具屋行く?」


何でこいつカラオケ行く?みたい口調なの?しかもおけって。別にいいけど。

俺は現代のJKのような魔王に呆れながら街へ向かう。


「お、おい!貴様!魔王様になんて御無礼を!」


さすがに俺も疲れが溜まってきたな。風呂入りてぇ。


「聞いてるのか人間!我は魔王幹部の1人だぞ!」


あれ?魔王まだ来ないな。仕方ない。


「魔王!そろそろお友達もお別れして、ご飯の時間だから」


「うん。じゃあ飯食うからバイバイ!」


「バイバ…じゃなくて何をされているのです!魔王様!どうなされたのですかこんな人間風情に」


ん?人間風情だ?全く最近の魔王幹部はこれだから。

あれ?魔王幹部?やばいじゃん。


「おい魔王。これはどういうこっちゃ」


魔王が帰ってこないから心配して来たのだろうか分からんがちょっとまずいのではないか。


「いやー吾輩トイレ行ってる時に剛にやられたじゃん?だから置き手紙も残さず来たんだよね」


あーなるほど。そういえばこいつあの時トイレいたな。だからか。


「てか、帰ってやれよ。心配してたんだろこいつ」


「ふむ、そうだな。だが、剛にも非があるのだぞ」


何を人に責任転嫁してんだこいつ。だから最近の魔王は。


「お前が威張るなよ」


俺は軽く肩パンした。だが、気づいた。まただ。だが時すでにお寿司。


「へぐぅ!」


本日2度目の瀕死状態。ごめんなさい。こんな軽く叩いても一撃とは恐ろしい。

しかし、今のが魔王幹部にはよく見えなかったようだ。当たり前か。

顔を真っ赤にして怒鳴る。うるせぇ。


「き、貴様!今のは魔王様に対する宣戦布告だぞ!」


その理屈でいえば魔王は倒された。なら俺の勝ちだろ。戦争は俺の勝ち。お前らの負け。簡単だ。


「でも俺昨日にこいつ倒したんだけど」


昨日倒したんだ。もう宣戦布告なんて無いし。てか少し前にもこいつ倒してゴミ捨て場に捨てたし。


「ふ、戯言を」


あ、こいつ今鼻で笑いやがったな。こういう奴は変にプライドが高くて倒したら泣き出すんだろうな。ゲーム大会にいた小学校みたいだ。あの時はごめんね、しょうご君。誰だよしょうご君。

顔を忘れた相手のことはほっておき、俺は今すべきことをする。


「第一、今のも魔王様の不意をついただけでは無いか。冒険者のプライドも無いようだnげふぅ!」


はい、魔王パンイチと愉快な仲間。いっちょ上がり。

さっさと帰ろ。

そして俺は2人を担いで先程と同様羽を用いて空を飛び新築の家へ向かう。



家にはものの数秒で着いた。まだ家具も買ってないからただ広いだけの部屋だ。なかなかオシャレで悪くない。部屋を照らす光が心を温める。

ベッドも無いから今夜は適当に床で寝るか。あまり体には良くないと聞いたが仕方がない。宿に金を使うのは勿体ないし。

しばらくすると、魔王が目を覚ます。


「あれ?剛ここは何処ぞ?」


当然見覚えのない所であろう新築の家に少し戸惑いつつも周りを見渡す魔王にいつもと変わらぬ声のトーンで声をかける。


「新しい家だ。1日5万なちゃんと払えよ」


「え?吾輩とシャアハウスとかじゃないの?吾輩泊まらせて貰ってる身なの?」


当たり前だろ。と言いかけたがそういえばこいつは俺の監視下に居ないといけないのだった事を思い出し冗談だとだけ伝える。


「お主も冗談を言うのな。面白かったぞ」


「調子乗んな殺すぞ」


「もう冗談が上手いのだから。冗談だよね?じゃないと吾輩死んじゃうよ!いいの!?」


一向に構わないのだが。答えるのも面倒なので無視する。


「吾輩が暴走してまた吾輩を討伐したらお金もらえるかもよ?だからねぇ!」


「お前すげぇクズだな。見損なったわ。見直した事無いけど」


ほんとにクズい。でもワンチャンあり。俺氏も悪よのぅ。

半泣きの魔王の顔を後ろにさげ今だ目を覚まさない魔王の幹部に目をやる。


「というかこいつどうすんの?」


こいつの処遇は俺が決めることでは無いと思い、保護者では無いが1番近いのは魔王こいつだ。全てこいつの判断に委ねる事にした。


「こいつも悪い奴では無いのだ。ただ魔王幹部というだけでな」


充分悪いと思いますがどう思いますか?まぁ悪事を働いてないのなら一概に悪とは言えないのだがな。


「ただ人界を恐怖に陥れたりしただけであってな」


「よし、処刑タイムだ。首をねるぞ」


なんてことしてくれてんだ幹部こいつ。普通なら罪を償わなければいけないだろこれ。

だが俺は魔王こいつが不可侵条約を結ぶ事を幹部共に伝えたら異議なしだった事を聞くとそんな気にはならなかった。


「こいつは幹部の誰よりも不可侵条約を重要視していたのだ。だから頼む。我に免じてこいつの首の皮1枚繋いではくれぬか?」


お前に免じられてもなんだが。だが、俺もそこまで鬼では無い。何かを守りたい気持ちは分かるからな。しかもこんな顔されて許せねぇ訳ねぇだろ。


「ああ、分かった。でもちゃんと面倒見るんだぞ。お世話してあげろよ」


ただし、人間と同じ扱いすると思ったら大間違いだ。こいつはしばらくは家のペットだ。それがこいつの罰だ。俺は鬼ではないが女神でもない。


「剛。お主。魔王にならぬか?」


流石さすがの俺もそこまでは…ん?ありじゃね?まぁそんな事は絶対しないがな。


「なる訳ねぇだろ」


毒を吐くような口調で返したが魔王は笑って


「礼を言う剛。主は我の恩人ぞ」


大袈裟おおげさだ。殺さなかっただけだろ」


「それに礼を言うとるのだ。他にも色々な」


水臭いことを言いやがる。だが、嫌いじゃない。俺は少し勘違いをしていたのかもしれないな。まだまだ信用するまでにはならんが少しは心を許す事を頭の端っこにでも入れておこうか。


気づくと朝になっていた。

床で寝ていたせいか所々が痛く寝覚めは最悪だった。特に最悪なのは起きたら魔王の顔が俺の5センチ以内の所にあった事だ。美少女相手ならよかったのにな。

魔王の幹部が起きたのは俺が起きてすぐの事、魔王とほぼ同時に目を覚ました。最初は敵対心むき出しだったが、咄嗟とっさに魔王が一昨日あった事と昨日の事を話してくれた。幹部のやつは渋々それを受け入れたがやはりに落ちてないようだ。


「魔王様の命なら仕方あるまい。了解だ」


てな感じでまだ俺には心を開いてくれそうにないが最初はそんなものだ。


「これからよろしくな、えーっと名前は?」


「何故お前なんかに名乗らなければならぬのだ」


じゃあこれからどう呼べばいいんだよ。ポチとでも名付けるか。


「名前知らないとこれから不便だろうが」


「ふむ、一理あるな」


なかなか聞き分けのいいやつだな。

俺は少し関心しつつ最初はこちらから名乗った方が良いと思い手短に名乗る。


「俺は剛だ。魔王こいつみたいに剛って呼んでくれ」


「ふむ、我が名はシュラだ。これから世話になる」


人懐っこいな。あ、そうだ。


「俺の魔王幹部ペット計画忘れてた」


「お主そんな事を考えていたのか!恐ろしい奴よ」


あれ?声に出してた?

魔王は俺と少し距離を置き、心做しか少し震えていた。いい気分だ。俺は少し優越感に浸る。


また変なのが1人増えて騒がしくなり面倒事が増えると考えると気が遠くなった。

魔王を倒しただけでまだ真の平和は取り戻していないのか不安になりつつ俺は気になる事を口にする。


「お前の他の幹部共はこの事知ってるのか?」


またこんな事が起きるのは面倒臭いからな。

俺は魔王本人もしくはシュラに今の状況を知らせて貰いたい。俺が行っても敵が攻めてきた様にしか見えないしな。


「案ずるな。シュラの奴に頼んで伝えてもらおう」


まぁ合理的な判断だな。ではお言葉に甘えさせてもらおうか。


「分かった。じゃ頼んで置いてくれ。俺は家具屋に行ってくる」


早くフカフカのベッドで快適で質の良い睡眠を取りたい。


「えーいいなー。吾輩も連れてってはくれぬか?」


「当たり前だろ」


「剛…やっと吾輩の事を…」


「お前は俺の監視下に居ないとダメだろうが思い上がんな」


何を勘違いしてるんだこいつ。身の程を知れ。全く。


「ですよね」


しょぼくれた魔王をゴミを見るような目で見た後に俺はふと気になった事を魔王に聞く。


「そういえばお前名前なんて言うの?パンイチ?」


あ、てか俺こいつゴミ捨て場に捨ててすぐに不動産屋行ったからこいつの馬鹿な格好のままで街を歩く所全然見れてねぇわ。しくじった。

しくじり先生だ。今度誰かにこの教訓を教えよう。


「吾輩の名か。長いぞ」


「じゃあいいですー」


長いならいい。聞きたくない。面倒臭い。てかこいつの息が臭い。


「えーねぇ聞いてよ」


たまにこいつ餓鬼がきみたいな口調で話しかけるから悪寒するんだよな。

俺は魔王とくだらない話をし、いつもと変わらぬ生活とは言えない異世界生活の3日目を始める。もう面倒事はりだ。シュラが他の幹部にも説明に行っているし、これで平和というのが実現できたのではないかと思う。

世一剛せかいちつよしの物語は最初で終わっているのにも関わらずこれから何をするのか、というか異世界生活感全く無い状況下で楽しむ事が出来るのか。てかまずこの世界での目的も達成していない。オアシス作り。魔王達こいつらがいたらいつまで経っても作れやしない。まずヒロイン的な存在も居ない。

魔王の事なんかより夢の実現の事で不安になる。これ以上男子校みたいになるのは嫌だ。

それでも俺は







現状を変えることを少しばかり嫌だと思ってしまった。






魔王とは?威厳をが全く無いから自分で書いてて魔王のセリフではなくどっかの少年Aとかじゃないかと思ってしまいました。

さて2日目です。若干3日目に入ってますが2日目です。これからも勇者と魔王の生活は続くのでぜひ時間のある時にでも読んでください。ではまた。

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