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魔王討伐完了



我、最強。めちゃ強。万事の勝負は必ず勝つ。今まで何度も1位を手に入れてきた。模試、定期テスト、ゲーム大会などなど。そして各界隈から俺は【最強無敵の非リア】と呼ばれた。


は?なんで?非リアの部分いらないでしょ。


俺は、勉学は優秀、運動もまあまあできるが顔は最悪に終わってる。自分で言うのもなんだが最強のブスだ。恋愛では確実に負ける。顔で。この顔でも好んでくれるやつはいるんじゃないか、中身を重視する人もいるんじゃないかと期待したが、そう甘くは無かった。第一印象が最悪らしい。

人生は不平等。女子が「私、見た目より中身重視なんだよね」とか言ってると殴りたくなる。そんなの綺麗事だ。見た目が生理的に無理だったりすると中身を理解する気すら失せるだろ。

故に非リアのオタクからは絶大な人気を集める俺、世一剛せかいちつよしは友人は腐るほどいる。


「おい、剛!昨日発売のフィギュア買ったかよ?クオリティやばくね?デュフ」


漫画とかによくいるデブ眼鏡だ。なんで「デュフ」っていうの?

こんなふうに俺はよく話しかけられる。なぜなら、


「当然。飾る用、保管用、保険用の3つを買ったぜ」


このように俺はオタクの鏡のような男なのだ。もちろんブログも書いている。数年前に始めたが今ではもう立派なブロガーだ。


「おい、剛!今日帰ってからゲームしようぜ!」


俺みたいな奴は陽キャに話しかけられないようなイメージがあるだろう。だが違う。ゲームに関しちゃ誰よりも詳しく強い。大会でも優勝するぐらいだ。名は広まってるし、顔も広い。面積の話ではなく。


「お前がいたら千人力なんだよ!頼む」


このように勝てないクエストや相手の攻略やアドバイスはしばしばする。本当はただ利用されてるだけかもしれないが、助けになってるなら全く気にしない。


「当然だ、俺に任せとけ!」


胸の前で拳を握り、頼みを承諾する。

なんでこんなに人望も友人もいるのに彼女が出来ない。顔がブスだから。


「さすが非リア!」

「よ!我らが非リア!」

「おい、非リア!俺はリア充」


陽キャと呼ばれる集団からの声。なぜに剛と呼ばず非リアと呼ぶ?てか最後のやつ何、ぶっ殺すぞ。


「じゃあ放課後いつもの場所で」


いつもの場所とはこの陽キャ軍団の核のような存在のやつの家だ。あそこはストレスでしかない、インスタのストーリーとか更新しやがるからな、リア充感があって良いが彼女はいない。

そこからはいつもと変わらず授業を受ける。予習、復習を欠かさずする俺からすると授業が復習みたいなものでぼーっとしてても答えられる。

特に何も起きず普通に授業を終え、帰宅。では無く嫌々陽キャ軍団の家に行く。嫌々な。ここ重要。

するとどこからかボールが飛んできて右肩に当たる。肩にずっしりとした重みのある痛みを感じたながらボールの飛んできた方を見る。


「ごめんなさい!とってよ、ねぇ早く」


なんだ子供か…仕方ないな、ぶち殺すか。人に当てておいてなんつう口の利き方してんだこいつ。心底湧き上がってくる怒りをなんとか抑え、ボールを広い餓鬼に返す。

俺は自分で言うのもなんだが心が広い、あと感情の起伏はほぼない。俺は産まれて此方冷静さを欠いた事が無い。

そしてまた嫌々目的地に向かう。少しして交差点に差し掛かる。遠いな、俺の家は真反対なんだが。


「危ない!避けろ!」


急にどこからが男の声が聞こえる。なんだ次はサッカーボールでも後頭部に当たるのか?てかここは交差点だ、サッカーすんな。


「おい!轢かれるぞ!」


そうだな、こんな所でサッカーしてると轢かれるかもしれないな……は?轢かれる?

すると何も聞こえなくなった、少し遅くなった世界で目前には大型のトラック。不思議と恐怖は無かった。ただ、


「ジャンプ買うの忘れた」


ガシャーン!


俺は轢かれた。悪くない人生だった気がする。なんか死ぬ前とかは人生の記憶とか見るみたいなのを聞いたことがあるが、特に何も無く死んだな。でもやけに感覚がしっかりしてるなそういうものなのか。





「お、起きてください」


もう五分死なせてろ。もう生まれ変わったりしたのか。でも死ぬ前の記憶は普通にあるし、あとトイレ行きたい。


「あのぅ…起きてください」


はぁうるさいな…あれ?てか誰の声よこれ。そう思うと俺は目を開ける。俺の目に映ったのは白の世界。上も下も右も左も真っ白だ。なんか杏仁豆腐の中みたい。


「ようやく起きましたね」


大人びた声だな。神様だったりして。なんて思いながら振り返る。


「まぁ、とても残酷な死に方をしたのですね」


いたのはとても美人な女の人。俺の死を悲しんでくれているのか悲しそうな顔をしている。え?嬉し。


「いや、車に轢かれただけでそこまで残酷ではなかったのですが」


そう、車に轢かれただけ。確かに人から見れば残酷かもしれない。でもそれは大袈裟だ。だが、俺の死を悲しんでくれてる感じからすると悪いやつではない。


「だってその顔ぐちゃぐちゃですよ」


訂正こいつ嫌い。

人の印象は一瞬で変わる。いい例がこれだ。しかも顔は元からだ。なんか自分で元からこの顔というのは辛かったので言わず気になっていたことを聞く。


「というか、ここはどこです?天国的なやつですか?やったね」


俺はここでも冷静を欠かない。そんな俺超クールとか思っちゃった。


「なんというか私の存在する空間なのです。ここでは残酷に命を落とし方、生前に辛いことばかりで良いことが無かった人、そして人を助ける事を優先し人望がある優しい方の願いを叶える事ができるのです」


へーそりゃたまげた。俺は顔色ひとつ変えないが実はけっこう驚いている。

俺は願いを一瞬で決めた。そんなの決まってる俺みたいなやつはみんなこういうはずだ。


「異世界転生したいんだけど。あと転生したらイケメンにしてね」


異世界転生はしたいでしょ、そこで色々して美少女達とウハウハはオアシスを作りたい。ただしこう事ができるのはイケメンに限るのでイケメンにしてもらうのは重要である。


「うーん、異世界転生か…」


何かを悩んでいる風に少し眉間に皺を寄せ、いかにも悩んでますみたいな声をだす。


「何か問題でもあるんですか?」


やはり気になる。俺は楽したい、だから大変な思いはしたくない。


「なんというか…魔王がね?復活しちゃって…」


後半部分は消えそうな声だった。魔王か異世界転生とかにはよくあるやつだなぁ、でもめんどくせえな。


「別にいいですよ、ついでに倒してきます」


別にいつ倒すかは言っていない、魔王が攻めてくるとは限らないし普通にオアシスは作れるはずだ。


「ほ、本当ですか!?」


と言うと俺の近くにすごい勢いで寄ってくる。近い近いいい匂いするしおっぱいが近い。ありがとうございます。


「いいですよ、その代わりに何かスキル的な物をください」


このままだとただ死に行くようなものだ。死ぬのはもう懲り懲り。


「はい、勿論です。本当にありがとうございます」


というとまたもやさっきより近くに来る。こちらこそありがとうございます。


「では、あなたを精霊様が守ってくださる事をお祈りします」


へー精霊なんているのかさすが異世界。実際にいるのかは分からないがもしかしたら架空の存在かもしれないしな。仏や神のように。

すると視界が真っ暗になる。


「!?」


方がビクッってなった。こういうのって魔法陣的なやつで召喚されるみたいなのじゃないのか。そんなことを思いながら黙って仁王立ち。


「はーいでは行ってらっしゃい!」


アトラクションかな?どっかのネズミを崇拝するテーマパークのキャストみたいだな。てか、まだ行ってなかったのかよ。

すると体が浮くような感覚を感じる。こういう時って股間が変な感じするよね。


「向こうに着いたらギルドハウスに行ってスキルの確認をしてくださいね、あと少しですがお金も渡しておきますね」


天使かな?天使だよ。天使に触れたよ。触れてはないか。しかしこのアフターケアは最高だな。また死んでもいい気がする。

少しして視界が真っ白になる。


「う、うーん。着いたのか?」


地に着いた足の感覚はまるでアスファルトの上を立っているようだ。閉じた目をゆっくり開ける。


「すげぇ…」


口をパカーンとあけ唖然した。みっともないと思いすぐさま口を閉じ周りを見渡す。


「異世界、か」


いたのは中世ヨーロッパのような街並みでなかなかに賑わっていた。秋葉にいるオタクの数を2で割ったぐらいか。それまあまあいるな。

まずはギルドハウスに向かうようにと助言されたので言われるがまま向かおうとするが、どこだここ?

自分の勘で探すのは無理だと思ったので近くの人に聞くことにした。コミュ障だから辛いんだが。


「あ、あの。ギルドハウスってどこにありますか?」


俺は髭の生えたまあまあ厳ついおっさんに話しかけた。こういう人って案外優しかったりするよね。見た目に反して優しいとかギャップ萌えだよね。


「おう、ハンサムなあんちゃんギルドハウスに行きたいのか」


やっぱり優しい人だった。俺このおっさん好き。いつか迎えに来るよ。何言ってんの。


「ええ、この街には初めて来たもので分からなくて」


「この道を真っ直ぐ行って3つ目の角を右に曲がった所にあるぜ」


ニッコリと歯を見せ笑いながら丁寧に教えてくれる。実は天使説。


「あんがとなおっちゃん」


おっさん呼ばわりしてごめんなおっさん。これからはおっちゃんって呼ぶわ。

簡素にお礼をいい、ギルドハウスへ向かう。


「おう!またいつか会えるといいな!」


いい人か!かっこよすぎだろ。

冷静に礼を言ったから素っ気ないと思ったかな。悪いことしたな。そう思いながら俺は人にぶつからないように小走りで走る。

えーっと3つ目の角を右にっと。案外近かったのか。でもやはりこの街は美しい、人々の笑い声や子供の楽しそうな声が聞こえてくる。本当に魔王の復活なんてあったのか疑わしくなってくる。


「やっぱすげぇわこの街」


言われたとおりに行くとそこには『冒険者ギルドハウス』と書かれた看板と大きな建物があった。パッと見酒場のような感じだ。

ここで自分のスキルを確認するようにと言われたな。てか名前聞いてないな。今度死んだら聞くか。


「ようこそ!冒険者ギルドへ!」


俺を出迎えたのは整った服装をした綺麗な女性達だ。最高っす。


「今日は何用で?」


1人の女性が聞いてくる。あなたを奪いに。


「えっと、スキルの確認に」


当然奪いなどしない。すぐさまスキルの確認をして宿にでも泊まりたい。とりあえず寝たいし。


「はい。スキルの確認ですね。こちらへどうぞ」


俺は少し離れて後を追う。思った通り内装もしっかりしていて広く、カウンターや掲示板のようなものもある。いかにも冒険者ギルドって感じだ。


「ではこちらの水晶に触れて、見つめてください」


占い師が持ってるような水晶に両手で挟むように触れ、一点を見つめる。

すると薄い水色のような色の光が発光する。眩しくて目をそらすと水晶の上に黒い文字が浮かび上がる。見た事がない文字だ。全く読めない。

なんと読むのかと聞くのも変だと思うが仕方ない。そして、俺を導いてくれた女性の方を見る。何故か口を開け呆然としている。

何かおかしな事があったのかと思いもう一度空中に記された文字を見る。読めねんだよ…あれ?読める。

先程まで読めなかった文字が読めるようになっている。これがスキルなのかと思いながら文字を読む。


「「固有スキル【最強無敵】!?」」


俺が言う前に前に周りの人達が一斉に声を上げる。てか部外者が多いな。

俺はこのスキルの意味が分からなかったのでスキル名の下に書いてある説明を読む。


「【最強無敵】は、全ての物理または魔法攻撃も通じず。また、こちらの攻撃は全て当たり一撃で倒す…か」


なるほど。なんだこれ?ただのチートスキルじゃねぇか。俺はここでも冷静さを保つがさすがに危なかった。

え?ちょ待てよこれ魔王倒せるんじゃね?もうめんどいしさっさと倒すか。


「す、すごい。こんなのは初めてです」


みなが黙ってる中で先程の女性が口を開ける。そんなに凄いのか。そりゃそうか。


「これで魔王を倒す事が出来ますよ!」


「やったぜ!これでこの街も平和だ!」


「どうなるかと思ってたけどようやくだな!」


女性に続くように周りのギャラリー共が喜びに浸る。こんな平和な街でもやはり魔王への恐怖はあったのだろう。涙を流す者までいる。


「とりあえず、勇者さんよ。まずは技とか色々決めようぜ」


ツルッパゲの厳つい男が俺の肩に手を置き話しかけてくる。おう、勇者か、まぁ悪くは無いな。うん。


「てか、魔王ってどこにいるんです?」


近くにいるなら早めに取りかかった方がいいと思い場所を聞く。


「ん?冷静だな。あーこっから西にずーっと行った所に魔界と人間界の境界線があるんだがそこからまた西に少し行くと魔王の城があるぜ」


なるほどまあまあ遠いのな。よし、もう倒すか疲れたしもう特訓とかしたくないし。


「了解」


場所だけ聞くと俺は出口に向かう。


「ちょっと待てよどこに行くんだよ!おい!」


後ろでおれを呼び止める声がしたが幻聴だ。俺が幻聴と言えばそれは幻聴だ。





2時間後………






「はい、魔王いっちょ上がり。お疲れっした」


まさか100歩で行けるとはこのスキルまだまだ分からんことばかりだな。昼寝も挟んでスッキリしたしさっさと宿借りて寝よ。


「「「………え?」」」


あ、そうか魔王討伐したんだ報酬を貰わないと。


「あのぅ報酬ください」


これで一生遊んで暮らせれるかな…これでオアシスが作れるはずだ。


「魔王…討伐?…え?…」


何がそんな戸惑う事があるんだ。魔王の1匹や2匹ぐらい倒すだろ。倒さんか。冒険者や女性達は未だ口を開けっ放しで喜びもしない。

なんだ嬉しくないのか?魔王だぞ魔王。


「「「えぇぇぇ!?」」」


よし、俺の冒険者人生終了っと。ようやく声を出したと思ったら歓喜かんきの声より先に驚きが先に出たか。そりゃそうだ。


「やりやがったこいつ!たまげたぜ!」


「今夜は宴だ!」


男どもは肩を組み合い大笑い、女性陣は涙を流す者がほとんど。

俺もこんなに嬉しがってくれると嬉しくなる。平和って美しい。さて帰ろう。

そう思っていた、


「おい!どういう事だ!」


魔王が急に口を開く。俺以外の奴らがビクッってなっている。おもろい。


「トイレで用を足してる時に急にこいつが攻撃してきやがったんだ!ふざけんな!この残尿感どうしてくれるんだよ!」


魔王がネチネチうるせぇな。魔王っ気ゼロだな。

縄で縛られた魔王が足をバタバタされ大声で怒鳴る。残尿感があるのか、嫌だよなあれ。めちゃ気持ち悪いもんな。ごめんな。


「俺さぁ今から国王の所行って不可侵条約結ぼうと思ってたのにさぁ!」


と言うと魔王(笑)は、不可侵条約と書かれた紙を出す。ほんとだ書かれてる、でも知らねぇよ。復活する方が悪い。


「そんなの知らねぇよ、魔王がネチネチ言ってんじゃねえよ」


そろそろ帰りたいし、とにかく今日は色んな事が多すぎた。つまり帰りたい。


「で、でも俺…あ、吾輩フル装備じゃないし…」


今更一人称変えるなよ。あれか、家で呼ばれてるあだ名を一人称にしてて学校でもその一人称を使っちゃったみたいなやつか。俺もあったな。


「吾輩が完全になったら最強だぞ」


へー聞いてなかった。雑魚が何かほざいてるな。ここでこれを言うのはどうかと思うがまあ仕方ないか。


「強いやつが勝つんじゃない、勝ったやつが強いんでもない。ただ俺が最強だっただけ」


そう、俺は最強。だから勝ったんだ。俺だから勝ったのだ。

すると魔王は顔を真っ赤にした。


「ふざけんな!何が最強だ!この傲慢お化け!魔王!」


魔王はお前だろ。これは傲慢でも何でもないただの事実を告げただけであって決しておごってる訳じゃない。


「さて、こいつどうしよっかな?るか」


選択肢は3つ?殺るか殺るか殺る。あ、1つか。まあ1つも3つも変わらん。


「ちょ、ちょっと待って下さいよ〜。えっと、お名前をうかがってもよろしくて?」


ちっ仕方ないな。そう思うと俺は急に敬語を使う魔王(笑)に言う。


「剛だ」


「剛様!お願いします!吾輩をお仲間に入れてくだされ!」


「無理です〜ざ〜んね〜ん」


俺、煽る。小学生のような口調で魔王(笑)を煽る。だが、以外にも怒ることなく魔王(笑)は言葉を続ける。


「吾輩、不可侵条約を締結ていけつするつもりだったのだ。敵対心はない。頼む!」


というと魔王は頭を下げる。しかも縛られたまま。俺は自分の精神年齢が低い発言に恥ずかしくなった。

その償いでは無いが、仕方ない。攻撃しようものなら殺っちまえばいいんだしな。


「はぁ、分かったよ。よろしくな」


悪くない奴にこれ以上何かを言う気は無い。魔王というだけでこういう扱いは確かに良くは無かった。しっかり人の話を聞くのは大事だな。


「ありがとうござい…」


「黙れ」


「…はい」


人の話を聞くのは大切だな〜。こいつは魔王で人では無いので関係は無い。

そして俺は縛っていた魔王を解いた。


「おい、ちょっと待てよ。勇者の兄ちゃん、こいつは魔王だぜ!いいのかよ?」


ツルッパゲが心配そうな顔で聞いてくる。なんだコイツ。おっさんの困り顔なんて見たくねぇぞ。


「大丈夫。俺は最強ですよ。俺が監視しとくので安心してください」


俺さえいれば大丈夫だ。なんせ攻撃が絶対喰らわないからな。なんつうチートスキル。


「で、でも吾輩も本気出せば勝てちゃうかも…なんてな……」


魔王……自称魔王が消えかけの火のように弱々しい声で何かほざく。ほぅ、いい度胸だな。


「ふーん。あっっっそ」


自称魔王が肩を揺らす。こいつほんとに魔王か?怖がりすぎだろ。


「俺の固有スキル知ってる?」


「し、知らない…です」


「俺、物理攻撃と魔法攻撃は絶対喰らわないからな。でも俺は絶対攻撃を当てる事が出来るし、一撃で倒す事が出来る」


改めて考えるとほんとにやばいスキルだな。勝ち組。

自称魔王が口をパクパクしている。なんだ?ミシンごっこか?


「えー…じゃあもう無理じゃん…」





てことで俺の冒険者としての人生は終わり第2の人生を元魔王と過ごすことになった。これからどうしようか。金は入るし、これから暇だな。


「所で報酬は?」


そう、世の中金だからな。友達も金で買えるしな。魔王を倒したんだそれなりの報酬はあるだろ。


「はい、報酬は5兆ギルです」


おー多分5兆円と同じ感覚でいいのかな。それなら凄いな。


「こりゃすげぇや、奢ってくれよ!勇者様!」


「酒奢ってくれよ!勇者様」


金を持ってるやつに奢らせるのはどの世界も同じなんだな。まぁ別にいいのだが。


「ええ、今夜は宴ですね」


「「「いえーーい!」」」


魔王討伐の時よりも歓喜の声が出てる気がするのは気のせいだろうか。気のせいだよな。じゃなかったら俺が新魔王だ。


「イケメンで、最強で、気前がいいとか完璧かよ!」


おいおい寄せやい。イケメンとかはっはっは…イケメン?おい待て、そうだお願いしたんだった。


「ちょっと失礼して、お手洗いに」


「おうよ!早く帰ってこいよ英雄!」


勇者じゃないの?まず誰も剛って呼んでくれないよね。

そんなことどうでもいい、急いでトイレに向かう。そして鏡を見る。そこに居たのは少し青に近い黒色の髪をしたイケメンだった。


「………………」


フォーーー!俺は心の中で全力で喜びを謳歌する。態度には出てないし、精神的にも俺は冷静だ。

だが、なんだこの今まで感じたことの無い胸のドキドキは、まさかテンションが上がって脈が早くなったとか。いや、これは恋だ。恋なのか?恋でした。


「ふーーー……」


俺は脈を落ち着けるのと同時に大きなため息をこぼす。ようやくだ、待ち望んだイケメン。最高だな。



その夜は俺達は盛大に盛り上がった。何故か魔王討伐を祝う会に魔王が参加し盛り上げていた。


「おい、その辺にしとけよ。飲みすぎだぞ」


何でこいつ自分討伐を祝してんだ。しかも酒癖悪。


「いいじゃないですか〜魔王も消えて平和になって大バンザーイ!」


うーん、ちょ。めんどくさ。こいつ元魔王の自覚あるのか。これ以上飲ませるとめんどそうなので強制的に抱えてギルドハウスを出る。

ギルドハウスを出ても、魔王討伐を祝した宴会はしていた。人々は本当の平和と恐怖が全く無い、本当の笑顔を取り戻していた。今日来た時よりいい街になっている。それには俺も嬉しさを感じる。


「ちょ、剛さ〜ん。…待って吐く」


何で急に普通のトーンで話すの?てかこいつ俺の事馴れ馴れしく剛って呼んだな。でもちょっと嬉しい。


「待てここで吐くな、そこの路地裏で」


吐きそうな元魔王を抱えて、路地裏に向かう。


「おぼろろろろ、おぅえぇ!」


あー気持ち悪。もらいゲロっちまいそう。やだな。俺はゲロを吐き散らかす魔王の背中を擦りながら自分も吐かないように気を張る。ここら辺も最強にして欲しかったな。ゲロには勝てねぇ無理だ。ゲロが最強だ。


さて、これからこいつと二人でやっていけるだろうか。不安は増すばかりだ。まぁ呑気にいこう。冷静さを欠いてはいけない。常に冷静な判断と考えをすることが必要だ。だから俺は冷静でいる。焦りを見せると相手に下に見られる。無鉄砲さは自分を殺す。焦りは禁物なのだ。

俺の新たな人生。新生、世一剛せかいちつよしの物語が始まる。ただ、一つ


「ジャンプの続き気になるな」


煌めく星々が泳ぐ空を見上げながら、買い忘れた漫画の続きを気にした。


皆様は冷静ですか?冷静さを欠くとろくな事がありません。事故とかね。

さて、魔王が討伐されましたね。ありがとうございました。もうこれ勝手に暮らしておいていいんじゃね?と思う方もいるのでは?まぁそない事言わんと勇者と魔王の生活を見ましょうよ。

『勇者と魔王の共同生活始めました』これからもちょくちょく更新していくつもりなので是非読んでくださいね。

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