晩餐会
とりあえず僕とレイラは迎賓館に戻った。気分は晩餐会どことではないが、今騒いで混乱を大きくするのも得策じゃない、そんなわけでお互い予定通り行動する事にした。晩餐会まで、まだしばらく時間はあるのだけれども、部屋は例のごとく落ち着かないので、僕は大広間に向かっている。
「あれ?……」
朝と同じく先客が居た。
「どうしたのですか?」
「もしかして……ユイリ?」
「え?」
「い、いや……あまりにも…そ、その綺麗だったもので……」
「失礼ね!それじゃ普段がダメみたいじゃないですか!」
「そ、そそそそ、そんなことないよ!普段も綺麗ですよ!……まあ普段は可愛い系?だから」
「いいですよ、褒めてくれてありがとう」
僕は、その後もしばらくユイリに見惚れてしまった。普段からユイリはもちろん可愛いのだが、ドレスアップすると別人のように美しく、その姿を見ているだけでドキドキしてしまう。
「アル?どうかしましたか?」
「い、いえ……」
「ユイリに見惚れてたのよ」
やって来たのはジニーだ。
僕はジニーにもしばらく見惚れてしまった。僕の中での最強女子、ジニーのドレスアップした姿を見ていると挙動不審になってしまいそうだ。
「あれ?私にも見惚れちゃった?」
「あ、ああ……」
「本当に見惚れていたのですね……」
「だ、だってユイリもジニーもメチャクチャ綺麗じゃないですか!」
「あら、ありがとう」
「面と向かって言われると照れ臭いですね」
「僕は心臓ばくばくです」
「面白いこと言うね」
「こっちが恥ずかしくなってきました」
「お二人とも早いですね」
「アルとユイリは落ち着かなかったんでしょ?」
「「はい」」
「やぱりね」
「ジニーは?」
「もちろんそれを見越してのお邪魔作戦よ!」
「「え」」
「朝も2人でイチャイチャしてたみたいだしねー」
「イチャイチャの邪魔手伝う」
「また、アルくんイチャイチャしてるの?」
「お前と言うやつは、今日あんな事があったも言うのに……」
「チキンにユイリ様もったいない」
「アル……節操はもってくださいね」
「何だアルお前ばかりいい思いしやがって」
全員集合したようだ。
「気になるセリフが混ざってたわね……」
アンナ先生鋭い……
「アルくん、レイラと何があったの?」
「えーと……」
「言えない事なの?」
「言えますし、きちんと機会を設けて話しますが、今は聞かない方が良いと思います」
「ふ……2人の仲は……そこまで進んでいるのですね……」
「え」
盛大に勘違いされた。
「チキンの癖に生意気」
「アルお前!いとしのレイラ様と……」
「そ……そう……聞かない方が良いのね……」
「皆んな違いますよ?」
「レイラに先を越されたか……」
「2人で抜け出した怪しい……」
「レイラも何とか言ってください」
「そうだ、わたわた私はまだ彼女じゃない!」
「何フラッシュバックしてるんですか!」
収集がつかなくなってきたので仕方なく話す事にした。
「魔王と会いました」
『『え!』』
「今日レイラと一緒の時に魔王と会ったんです」
「……ま……魔王……やはりパズズの他にもいたのですね……」
「はい」
「ついでに言うと、テレキャスを襲撃したのも別の魔王で、奈落の魔王アバドンです」
「アバドン……神話で聞いたことがあります」
「人間の各国に王がいるのと同様に、魔王も多数存在するみたいです」
「そうなんだ」
「今日、僕達が会った魔王は、恐らくそれらを束ねる魔王サタン。彼の目的は人類への侵略ではなく『全てを無に帰すこと』だそうです」
『『全てを無に帰す!?』』
「全てを無に帰すってどう言う意味でしょうか」
「言葉通りです。世界を消滅させる事です」
「世界が消滅すると結果的に魔王も消滅するのよね?魔王は何故そんな事を?」
「役目だと言ってました。消滅させる事に何か意味があるのかも知れません」
「それが本当なら……晩餐会どころではありませんね」
「僕にも考えはあります。今は普通に過ごしましょう、後日もっと詳細にお話ししますので」
「でも……」
「僕達の行動は世間に注目されています。そんな僕達が軽率な行動をとれば……色々と問題があると思います。だから晩餐会も普通に出席しましょう」
「誰に言われても、アルくんにだけは言われたくないけど、確かに普段通り過ごすのが良さそうね」
「え」
「アルは軽率の塊」
「すぐにフラフラっといなくなるしね」
「止めても聞かねーしな」
「人の気持ちも知らないで」
客観視って大切だと思った。
「……そう言う事なんです!」
「分かったわ、その代わり勝手な行動は無しよ」
「はい」
晩餐会には国の要人に加え王都学園の生徒も参加していた。昼食会と同じく入れ替わり立ち替わりの挨拶合戦で、会話も食事もそんなに楽しむ余裕はなかった。
貴族って大変だなぁと思っているとライリさんがこちらにやってきた。
「こんばんはライリさん、あれからゆっくり話せませんでしたね」
「こんばんはアル、あんたは人が悪いわね」
「え」
「英雄だって事を隠してるなんてルール違反よ」
「流れ的に言いにくかったもので……」
「まあいいわ、で、答えは出たの?」
「あ」
「まさか忘れてんじゃないでしょうね?」
「すみません……」
「私がそっちに行ってあげてもいいわよ?」
「ほ、本当ですか?」
「どうしてもって言うのなら、考えてあげてもいいわ」
僕は彼女の手を取りお願いした。
「ライリさん是非お願いします!」
「ラ……ライリでいいわよ」
「ライリ是非よろしくお願いします」
「考えるだけだからね!」
「はい!」
「アル……あんたって変なやつね」
「え」
「英雄なんて呼ばれてるのに……」
「……そうですね…ライリが言いたい事は何となく分かります。でも英雄なんて呼ばれたのは、ただの結果であって、目指したわけでも、なりたいと思ったけでも、そう思われたいわけでもありません。だからですよ」
「そうなの?」
「そうですよ、僕は成り行きでそうなっただけなんです」
「成り行きで英雄って……誰かに仕組まれたって言われた方が現実的ね」
「…………」
その可能性は考えていなかった。その視点で考えると、確かに一連の出来事は誰かに導かれてるようでもある。
「どうしちゃったの?」
「ライリ……」
「うん?」
「ありがとうライリ!その通りかもしれませんよ!」
「え?」
僕を導く可能性のある人物……舞台に登場している、学園長、アンナ先生、ウルド。舞台に登場していないスクルド。
魔王復活について調べる必要はもう無い。スクルドに会う必要があると強く感じていた。




