王都魔法学園
皆んなにたっぷり絞られた後、昼食会に参加すべく、僕たちは王都魔法学園に来ていた。巻きで謁見が終わり、早めの到着となったので、王都学園の授業を見学している。
ユイリ達は王都でも顔が売れているので、早速学生達につかまった。一方僕は英雄の名ばかりが先行していて、顔バレしていないので、単独行動をしている。というかはぐれてしまった。ぶっちゃけ迷子だ。最悪誰かの近くにテレポートすれば良いので、そんなに焦ってはいない。
実習を見学していた僕は1人の女生徒に目を奪われた。
(エレメントが綺麗だ……)
その女生徒のエレメントバランスは、とても美しく調和の取れたものだった。属性は火、水、風の3属性。魔力量も中々の物だ。
魔法に才能が関係あるとすれば、ダントツの才能だと僕は感じた。
僕が彼女の魔法に見惚れていると、向こうから近付いてきた。
「あんた、さっきから何をジロジロ見てるの?もしかして変質者?」
美しいのはエレメントだけじゃなかった。透き通るような白い肌にブロンドの長い髪、まだあどけなさを残しているが、少しきつく見える琥珀色の瞳が全てを見透かされているようで、何か気恥ずかしさすら感じてしまう。
「ごめなさい、そう言うつもりで見てたんじゃなくて」
「じゃあどう言うつもりで見てたの?」
「その……」
(エレメントの事を話しても分からないだろうな……)
「なに?」
「その、エレメントがとても綺麗だなぁと思って!」
「ん?」
「あんた、エレメントが見えるの!?」
「あ、はい」
意外な反応だった。
「ふーん、ちょっと試してみてもいい?」
「ど、どうぞ」
彼女は火の玉を作った。
「本当にエレメントが見えてるなら、どのエレメントが多いのか当ててみなさい」
「燃焼です」
「ふーん、じゃあこれは」
彼女は火の玉のエレメント比率をかえてきた。
「ほんの少し空気が多いです」
「正解よ」
「あんたもエレメントをコントロールできるの?」
「一応は……」
「見せてみなさい」
「は…はい」
僕も火の玉を作ってみた。
「空気が1番少ないです」
「一応理解出来てるみたいね」
「私はライリよあんたは?」
「え、あっ……アルです」
「そう、あんた見かけない顔ね」
「僕はテレキャス校の生徒なんです」
「ああ、例の昼食会ね」
「はい」
「で、そのテレキャス校の生徒が何故ここにいるの?」
「その……皆んなとはぐれてしまって」
「いい歳して迷子ってわけね」
「ま……まあその通りです」
「いいわ、私が連れて行ってあげる」
「ありがとうございます」
「その代わり、時間まで少し付き合ってくれるかしら」
「分かりました、何をすればいいんですか?」
「全ての出力を上げるからバランスを見てて欲しいの」
彼女のエレメントバランスは素晴らしいものだったが、彼女的に出力が気に入らないらしい、無理に上げようとするとバランスが崩れバランスを整えると、出力がイマイチ。負のスパイラルに陥っていた。
「あの……」
「なによ」
「その……」
「ハッキリ言いなさい、イライラするから」
「それ以上はバランスだけでは無理です」
「どういうこと?」
「最終的にバランスは整えますが、過程に工夫が必要です」
「過程?」
「例えば……見ててくださいね」
僕は出力を上げた炎を作った。ただしバランスよく上げたのではなく空気を遅らせた。
「あ……青い炎…」
「はい、これが過程を操作して炎の出力を上げた状態です」
「なるほど……あなたの言いたいことはわかったわ」
「アル」
「はい」
「あんたコッチに編入しなさい」
「ええええ」
「嫌なの?」
「嫌なのとかじゃなくて色々すっ飛ばしてませんか?」
「私は面倒な手順は嫌いなの」
「でも僕はすっ飛ばせませんよ……」
「まあいいわ、帰るまでに考えておいて」
「ええええ」
「いちいち反応しないの!行くわよ」
「どこに?」
「昼食会でしょ」
「ああ、すみません……」
「あんた勇者様と英雄様のこと知ってるわよね?」
「えっまあ一応」
「どんな人なの?」
「えーとですね、ユイリは、ライリに負けず劣らず可愛らしい女性ですよ」
「ちょっと待って、何故ユイリ様を呼び捨てにしてるの?本人が居ないからってそう言うのはダメよ、ちゃんとユイリ様って呼びなさい」
「え、あっ……はい」
僕は押しに弱い。
「ユイリ様も来ているんで今日会えますよ」
「え!」
「何故もっと早くそれを言わないの!」
(ユイリはサプライズだったのか……)
「だって、聞かれなかったものですから……」
「気が利かないわね」
「…すみません…」
「も……もしかして英雄様も?」
「来てますよ」
むしろ、ここに居ます。
「何処からともなく現れた英雄様……魔王パズズを倒し、2人の女神様からの加護を受け、魔神率いる10万の魔族軍をたった1人で壊滅させ、強さだけならユイリ様以上と言われる謎多きお方……」
(そんな伝わり方してたのか……)
「素敵な方なのかしら?」
「僕の口からは何とも……」
「そう、でも楽しみね」
僕はそのままライリさんに連れられ、昼食会が模様される会場に向かった。
会場の外でユイリが待っていてくれた。
「アル遅いですよ、何処ほっつき歩いていたのですか?」
「いや、迷子になっちゃって……彼女に送ってもらったんです」
「ユイリ、こちら王都校のライリさんです」
「はじめましてユイリです。アルがお世話になりました」
「あれ?ライリさん?」
ライリは固まっていた。
「ライリさん?」
「わ、わわわわたくしは、ライリ・バリオともう申します!!!」
ライリも例に漏れずユイリに憧れていたようだ。
「よろしくねライリさん」
「よろ、よろ、よろしくお願いします!」
2人はガッチリ握手を交わした。
「ライリさんありがとうね、アルを連れて来てくれて」
「い、いえ」
「アル、あなたは色々自覚を持つべきです。英雄が迷子で遅刻とか笑えませんよ?」
「面目ないです…」
「へ……
あ、あ、アル?あなたが英雄様?」
「一応世間ではそうなってます……」
「ライリさん?」
「ライリさん?」
その後しばらく彼女はフリーズしたままだった。




