修羅場・第2ラウンド
僕たちはクロスロードに来ていた。今回もオーナーのご好意で大部屋を用意していただけた。僕は念のため、事前に宿泊料金を払っておいた。
『『乾杯!』』
「みなさんお疲れ様でした」
「多分、今日1番疲れたのはアルだよ?」
「私なら……あの状況は耐えられませんね」
「私だって無理だ」
「羞恥プレイ」
いや本当になかなかの羞恥プレイだった。
「案外アルって図太い?」
「そうかもしれないな」
「物腰は柔らかいですのにね」
「羊の皮を被ったウサギ」
それ意味ないよね!
「あれアンナ?」
「うわぁ……もう空けてるじゃないか」
「ペース早過ぎですね」
「区間記録ペース」
ジュリはなんでそんな言葉しってるんだろう?
「うん?
皆んな勘違いしてるわ……この子は図太いのじゃなくて、むっつりなのよ」
アンナ先生がほぼ出来上がっていた。
「「「「むっつり?」」」」
「そう!」
「基本エロいのよ『僕そんなつもりないです〜』みたいな顔してエロ展開に誘導しているのよ!ほんと嫌い!」
ガチで嫌われてるのか凄く不安だ。
「アンナ荒れてるね〜」
「大荒れ」
「大丈夫か?」
「今日はね……無理!大人しくなんてしてられない!」
「やっぱり荒れてますね……」
「教師ってストレス溜まりそうだしね」
「そうよ、たった1人…問題児がいるだけでストレスは倍増するのよ!」
「アンナ先生、お疲れ様です」
「何他人事のように言ってるの?」
「え…」
「あなたの事なのよ?」
「あ・な・た」
僕はやっぱ問題児のようだ。
「わかる気がしますね……」
「今日だって……自分で勝手に魔法作り出したりして」
「え、まじで?」
「ビックリ」
「概念とか、エレメントとか、わけのわかんない事ばっかり言ってくるし!
それを受け止めなきゃならない私の気持ちにもなれって言いたい!」
今しっかり言ってます。
「まぁまぁアンナも抑えて」
「無理よ!」
「相部屋だから仕方ないけど、裸見られたり、おっぱい触られたり本当に最低なんだから!」
仕方なくもないし事実と違う内容がまざってます。
「「「「え!?」」」」
「「「「相部屋」」」」
「それは……どういうことですか?、説明していただけますよね?」
「え、ええ、もちろん」
「アル…お前はアンナの…」
「違いますよ!誤解ですよ!」
「さすがトラブルメーカーね」
「さすがハーレム野郎」
「アンナ先生も誤解を招くような言い方は…」
「誤解をまねく?」
「事実じゃない、私の胸に顔埋めて寝てたじゃない!」
「「アル!」」
「ひぃ」
「なのに……責任を取らないばかりか……ベルダンディ様と……キス」
「みんなの前でキスなんかしちゃうしさ!」
「そうでしたね」「そうだったな」
「面白くなってきたね?」
「修羅場」
ユイリとレイラのペースも上がって来た。
「アル……ベルダンディ様の言ってた、激しかったはじめての夜って何の事だ?」
「お前はまさかもう、ベルダンディ様と……」
「違いますって!!」
「アルくん!ベルダンディ様がいながら何故、私に手をだしてきたの?」
「ええええ」
「アル……助けていただいたことには感謝しています。
でも、あなたは私の心を奪っておきながら、私の親友に手を出し、女神様にまで!
最低です!」
「誤解ですって」
「楽しイィぃぃぃぃぃ」
「泥沼」
「アル!」
「はい」
「そこに直りなさい」
「はい」
ユイリも出来上がってしまった。
「私はアンナと相部屋なんて許しません!
私も同じ部屋に住みます!」
「えええ…」
僕がユイリに絡まれている間に、アンナ先生とレイラが異様に盛り上がっていた。ジニーとジュリはどちらにもチャチャを入れて楽しんでいる。僕もそちら側になりたい……
「アル!」
「はい」
「私のことがお嫌いですか?」
「いえ、滅相もないです」
「じゃぁ好きですか?」
何故2択なんだろう……
「アル……」
「わ…私は……」
僕は、ユイリに抱きつかれてそして……
「あー!あー!あー!」
「ユイリがアルとキスしてる!!」
「「え!」」
「ユイリ!!お……お…お前」
「あーーユイリ!」
「わ…私は……アルのことが好きです!」
「なっ……」
「きゃー」
「ユイリ男前」
「えっ」
「私はベルダンディ様にも負けません!」
ユイリの宣戦布告だ、しかしユイリはその直後、崩れ落ちるように眠ってしまった。
酒の力は恐ろしい。
「ユイリ寝ちゃったね」
「お酒ってすごいですね」
「アル、私は酔ったからではないぞ!
私もお前のことが……」
「レイラ寝ながら告白してるじゃん、面白い」
「アルモテモテ」
「光栄なことですね……」
「アルくん」
アンナ先生はまだ粘っていた。
「あなたは……本当はウルド様が好きなの?」
アンナ先生が核心をついてきた。
「ウルドのことは好きです。
そして彼女のことは守ると決めています。
これは僕の本能がそうしろと言ってます」
「でも……恋愛においては、まだ何かブレーキがかかってるんです」
「「「なぜ?」」」
「はっきり何故とは言えませんが、恐らく失くしてしまった記憶がキーだと思います」
「なんかズルい!」
「ズルい」
「チキンな答えね」
「それ言われたら何も言えないもんね」
「…すみません…」
そして例のごとく最後はジニーと2人きりになった。
「ジニーはいつも大変ですね」
「もう慣れたよ、それに楽しいからいいの」
「あっそうだ!」
「今度ジニーと会ったら作ろうと思っていたんですよ」
「へ?」
僕はストレージから魔石ランクSを取り出した。
「Sランクの魔石?!」
「ジニーにMAG02を作りますよ」
「えーでもいいよ、そんな高価なもの受け取れないし」
「魔石はまだ600個以上持っているので気にしないでください」
「600個って……」
「パズズの取り巻きのミノタウロスを倒した時のやつです」
「…ねえ……そんな数を1人で倒しちゃったわけ……」
「まあ…一応…」
「そりゃアンナじゃなくてもアルの力には悩みそうね」
「あはは……」
「じゃぁ作りますよ」
『創造』
「今日の実習でかなりイメージできたので、きっとジニーに合いますよ」
「期待大だね!」
ジニーのエレメントバランスと、神威を加護で追加してジニーの魔力でも威力とスタミナ?を両立出来るようにカスタマイズした。
「できました!
ジニーの光魔法に合わせているので実質ジニー専用です」
「おおおおお!嬉しい!アル、ありがとう!」
いつもの様にジニーは抱きついてきて、僕を押し倒した。スキンシップで感謝を表す彼女のスタイルだ。でも今回は、いつもと違うキスがプラスアルファされていた。
「ジ…ジニー……?」
「私もこの祭りに参加するよ、まぁ…この国は一夫多妻制だし、そのときはよろしくね」
ジニーはそう言い放つと、もう一度キスしてきた。そのキスはベル様、ユイリよりも濃密なものだった。
「アルも泊まっていけば?」
「ぼ、僕は戻りま…!」
口付けで言葉を遮られた。
「帰るの?」
このゼロ距離の会話は理性が持たないかも知れない。
「それとも、する?」
そう言ってジニーは更に熱の入ったキスをしてきた。もう理性がもたない……いや、むしろこのセリフで理性が飛ばない男がいるなら見てみたい。しかもジニーは、かなり可愛い女の子だ。クラスや職場にいると大半の男子が好きになってしまうレベルの外見とノリの良さを兼ね備えている。いわば最強女子なのだから。
「するわけないでしょ!」
アンナ先生が覚醒した。
「アルくん……」
これが絶対零度かと錯覚してしまうほどの冷たい視線だ。
「帰りますよ?」
今日、絶対寝れないよな…
「は…はい……」
「アンナあんまり怒るとシワがふえるよ?」
「誰のせいよ!」
「あははは」
「楽しかったよ、また飲もうね」
「気が向いたらね!」
「あ、ジニーその銃、最終調整が必要なので、使う前は僕を尋ねてください」
「了解!あした寮に行くよ、アンナと同室でしょ」
「はい」
「「「またね」」」
僕とアンナ先生は会計を済ませ、クロスロードを後にした。
「アルくんとは昨日出会ったばかりなのに、もっと昔から知っている様な気がします」
先生がそんなふうに感じてくれていて嬉しかった。
「あ、それは僕も感じます。本当にもっと昔から知っていたのかもしれませんね」
「アルくんもそんなふうに感じていてくれたのね」
「はい」
「それはそれとして今日は眠れないから覚悟しておいてね」
「…はい……」
アンナ先生の説教は、宣言通り朝まで続いた。
連夜の眠れぬ夜だった。




