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毒吐

作者: 壱

いい時代になりました。おかげで反吐が出そうです。

名の知れない不快感は、その時分にもありましたが、これほど気持ちが悪いのは死んでもなお、生きている錯覚を起こすほどです。

みんなが迎えに来た時私は嬉しかったんです。これでもう頑張らなくていいんだと思うと。ただ少し欲が出ました。今思えばあのまま行けたらまだ良かったと思います。


少し長い言い訳をさせてください。私は決して傲慢ではないのです。剣も銃も人並み以上には出来たと思います。同年でも出世の早い方だとも思います。心も体も傷の治りは早かったです。それでも、それでも死は怖かった。

傷口に蛆がいました。私を養分に大きくなるんだろう、死にいく私よりこれから生きんとするこの命のために養分になるのが私の最後であっても良いと思いました。部下が死ぬのも、上司が死ぬのも、友が倒れゆくのもたくさん見てきました。それでも、自分は死ななかったですし、私がその分敵を同じ姿に変えてあげました。人の焼ける匂いは、肺を焦がし、感情を焼失させました。それでもどうしても、自分が死ぬ恐怖だけは腹の底の方にこびりついて離れませんでした。

手榴弾は不発でした。死は私を拒みました。成すべきことがあるかもしれないと、初めて生きようと思いました。それからは記録にある通りです。

本が好きでした。この国が、この国の仲間が好きでした。だから気になってしまいました。私が、私達が命を賭したこの国の人々はどうなっていくのかを。


悲しくはありません。憂いてもいません。ただ、おにぎりが食べたいです。この国のではないおにぎりが。お腹は空かないのになぜかそんなことばかり最近思います。不死身と言われた私も死んでから真に不死身となってみると、多少の虚しさはあります。せめて、アンガウルの地であればと思います。そうすれば。

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