鏡合わせ
こんばんは。こんにちは。
翡翠 白亞です。
やっと第二段の公開です。
よろしくお願いします。
*鏡合わせ*
魔鏡ディオにより、人間界は滅んだ。
しかし、1人の神格を持つ人間(現:白翠・アダイヴァ)が、己が過去・今の世界の醜さをしかと理解していたため、ディオを封印することが出来た。そして、目を覚ますと、守られた人間社会と異世界が融合していた。それは、神格を持つ白翠の強い力が呼び寄せて創造したものだった。白翠は、神格から神へ。創造と縁の神へ。
そして、この世界を[幽幻界]と言い、どこにでも存在し存在しない世界に。
白翠は、その世界の主となった。
そして、この世界の第二の力。3つの月。
3人のはずが4人になっていたのだ。
俺と我は二人で一人。でも、違う。
+鏡合わせ+
白翠の言葉に驚き、その場が静まり返る。
「私の記憶では人間を呼んだはずなのに何故、魔神が? そして、一人で二人の個体を感じる」
白翠は紅き月の誕生にそう驚いた。
「白翠様。僕の蒼の月とは違い、紅は情を司る。つまりは白翠様もご想像通りに異性が誕生するわけでしたよね? 恐らく、二人で生まれるはずが一人が生まれ、二人の力が一人になったから魔神となって生まれたのでしょう。 僕は蒼の女神ですけどね・・・」と蒼の月の女神。
「説明ありがとう。蒼の月」
「これは、紅き月に対する力と言えよう。しかし、姉さんには適わない」と導きの月の魔人(男)。
「これは、白翠様の望んだ結果でございますわ。だから、なんの支障もございませんわ」
「そうだな。白翠様、貴方は貴方の望んだまま・・・だから、なにも支障はない」
白翠は記憶を巡らせ、自分が何を願ったか考えた。
【導くための光=導きの月。
何もかもを癒し、平等に物を見る天秤の月=蒼の月。
そして、強さと欲と情を得た存在=紅き月を】
白翠は我に返り戸惑いなく三人に視線を向けた。
「この世界はを頼むわ、三人とも」
「ええ、勿論」
「言うまでもなかろう」
「ありがとう」
アルゥナと蒼の月の女神と導きの月の魔人が残った。
「さて、お名前ですが・・・私は、蒼の月の女神、ラヴィエ・アヌータ」
「私は、導きの月。光の魔人、エルヴァ・リリィナ」
そして、アルゥナだった。
「我は・・・まだ・・・あ? アルゥナ?
貴様ばかかっ・・・」
「アルゥナ・・・か。闇の意味をも持つ・・・」
「なるほど」
「・・・我はアルゥナ・グレイ」とそっぽ向く。
「ええ、よろしく、お姉様」
「姉上」
二人は二人の神殿へと消えた。
「・・・何勝手に貴様は喋っているんだ」
『アルゥの名前はそうだって心が言っていたからそう言っただけだ』
「そうかい」
『アルゥ、俺を受け入れきれてないな?』
「そらそうだろ、自分の中に別の自分がいるんだからな」
『なにも・・・拒否しなくていいさ・・・』
「なッ!?」
幻影となり、もう一人のアルゥナが現れた。それは、男の姿だった。そして、女のアルゥナにキスをした。
「んっ・・・」
「アルゥ、俺を受け入れろ。さすればその力もうまく扱える。君はそれを望んでいるから不安なんだよ」
「何を勝手なことを・・・」
幻影を振り払うと男のアルゥナは消えた。
『今一度、よく考えろ。おばかさん』
「くそ・・・くそおおおおおッ!」
アルゥナの悲痛な叫びは雨となり、幽幻界を静かな空気に包み込んだ。
「アルゥナの雨か」
神社の縁側から下たる雫を掴んで儚く空を見上げた。
「あとは本人次第しなんし。放置が一番なんし」
と九狐の窮柳。
「そうだな」
「おい、白翠殿」
そこへ、ぬらりひょんがやってきた。
「お茶?」
「違う。妖姫が古界で人が突然、暴れたり刺したりして、後に意識不明になるという不可解な事件が起きていると言う事じゃ。まあ、陰陽師が出る程の豹変でも怪異でもないから公安が暴動を抑えているらしいが、何か嫌な予感がすると・・・鵺からも聞いたのだが」
「どういうこと?」
「分からぬ。あ、狗神だ。どうした?」
そこへ巫女装束の妖界の守り人とされている狗神の咲がやってきた。
「がしゃどくろが人に憑依した」
「は?」
「ん?」
「え・・・・」
白翠はまだ妖怪の事が分かっていないためにぽかーんとした。
「白翠殿、がしゃどくろとは妖界の禁忌妖怪での、人の怨念を吸い取り力を得る存在でありんす」と窮柳が説明する。
「それは、妖界にあったのでは?」
「いや、封印は必ずしもそこにあるわけじゃない。あちらこちらに施されていて管理している。古界の場合は陰陽師と橋姫を使って狗神が管理しているでありんすが・・・陰陽師がといたのか?いや、それはありえんじゃろ」
「あの子達はしてない。見たもの」
「じゃあ誰かが?」
「それか、がしゃどくろを呼び起こす何かしらの怨念でありんすな」
「まずは、陰陽師たちに探させましょう」
「その必要はない」
そこへまた、女性がやってきた。知恵の杜のエルフのキリュウ・ヒイラギだ。
「最近、古界から昼間に変なシスターがやってきてなエルフたちの懺悔を聞いては夜になると古界に戻り、行方をくらます。その繰り返し。そして、エルフたちも人間のように狂う。明らか黒だろ」
「じゃあ、シスターをマークしておけばいいじゃろ」
「案ずるな。もうしてある」とヒイラギはニヤっと笑う。そして、一冊の本を出して開く。
「知恵の杜よ、清らかなる水鏡にてうつしだせ」
そうすると本に泉が生まれ映し出される。そこに映るものに白翠は顔面蒼白する。
「ディオ・・・の鏡・・・。だめ! 行かなくちゃ! 窮柳、この場所に案内して!」
「落ち着きなんし、白翠様」
「どうしたんだい?ディオの鏡は怨念じゃ封印はとけない。
あ・・・もしかして、無垢で純粋なエルフの血と人間の怨念を合わせて封印を解くとでも言うのか?」
「そう。まさに陰と陽」
「わっちは妖界に戻って見物しておくよ」
「悪趣味め」
ぬらりひょんは、そう言い消える。白翠は慌てるが窮柳に腕を掴まれたままだ。
「かつて、この世界が生まれる前、私の世界はディオによって滅ぼされた」
「ああ、知っている」
「二度と繰り返してなるものですか」
「慌てるな。そこまでの規模となれば、月の力がいるでありんす」
「紅き月が一番のトリガーだが、今はそれは出来ない。二人と私と窮柳と狗神で行く」
「はいはい。古界は・・・、まあ、腕の立つ陰陽師しかいないから大丈夫か」と狗神。
「繰り返させない。繰り返しても戻して見せる」
強い言葉にヒイラギは微笑む。
「今は皆がいるさ。一応、アンタは創造と縁のカミサマなんだ。信じろ」
「そうでありんすな。最初はびっくりしたが、その力強さは信じるに値するもの以上だ。数多の世界を繋げる縁と維持する能力は、さぞ驚いたことよ。だから安心しなんし」
「な?」
「ありがとう・・・」
白翠はポタっと涙をこぼした。それを窮柳はぬぐい、しばらく月を待った。
紅き月は来ず、エルヴァとアヌータだけがやってきた。
「予想通りこなかった」
「予想もなにもないでしょうに」
「さあ、行くか。知恵の杜に」と神社の縁側に座っていたヒイラギが本を閉じて立ち上がった。そして、白翠・エルヴァ・アヌータ・狗神と死神ディフェンが呼ばれて、知恵の杜へ向かった。
「エルフの結界は頑丈だから私じゃないと入れないし迷う。私を見失うなよ」
と柊が先導する。
*古界
古界では陰陽師三人が結界をはり、見守っていたが既に時遅く・・・
「古界に亀裂が入ってきている」と灯月の陰陽師、鏡華が言う。
「怨念が集まりすぎて、幽幻界とこっちの世界が繋がろうとしている」と総司(式神使い)のルリエが言う。
「向こうで誰か、残っていてくれ」と願い、桜の花びらの封印具で亀裂を少しでも防ぎ始める星柳。
アルゥナは、神殿に籠っている。一度、外に出てみたが力がうまく扱えなくて周りをすぐに火の海にしてしまった。
幾月が経ってもアルゥナはもう一人を受け入れられなかった。
『アルゥ・・・』
「なんだ?」
『いい加減、認めたらどうなんだい?』
「・・・」
『君の悲しげな姿はこれ以上は見たくない』
「だったら消えろ」
『できない』
「だろうな」
いくら、声をかけても受け入れず、神殿でぼーとしていた。
そんな幾月過ぎた今、幽幻界の空が割れはじめていることにエルゥナが気付く。
『アルゥ、外』
「ん?」
『悪い奴・・・いっぱいいるよ』
「ああ・・・」
エルゥナの声かけでアルゥナは立ち上がり、外を見ようと出てみた。やはり、まだ魔力回路がうまくバランスとれずに辺りの物が燃えて、消し炭になっていく。
「うっ・・・」
「あ、アルゥナ!?」
ゴオオオオオオと音を立てて炎は燃え、メネシスや式は断末魔をあげながら消し炭になる。
「いろんな意味で助かった・・・じゃない・・・炎が消えない」
一瞬にしてメネシス・式は消えたが炎は消えなかった。
「あ、ああああ・・・消えない。火が消えない・・・・いやあああ!」
その現実にアルゥナは虚ろな瞳をいっぱい開かせ叫ぶ。
「ああああああああああああああああああああああああああッ」
『アルゥナ!』
思念体となり、エルゥナが現れた。
「落ち着け、大丈夫だ。俺がいるから」
「エルゥナ・・・」
「怖いんだな・・・ああ、怖いんだな・・・分かるさ。
ただ、受け入ればこの痛みは二人で分かち合える」
「あ・・・ああ・・・」
「静かに目を閉じて」
「・・・ん・・・・」
二人は長い長いキスをした。
実際は僅かな時間だった。
しかし、二人にしたらとても長いキスだった。
「・・・あ・・・」
気が付けばエルゥナはいなかった。
「エルゥナ!?」
『いつも通り、アルゥの中にいるよ』
「あ・・・でも・・・炎が消えて・・・魔力も落ち着いているぞ」
『受け入れたんだよ。それが二人の結果だ』
*知恵の杜
「ん?」とエルヴァが足を止める。
「どうも古界とこっちに境界の亀裂が入り、式やメネシスが侵入だけどお姉様が燃やし尽くしたみたい」
「そして、二人1つになった」
「あとは、古界の陰陽師が亀裂を治すことと私達の出番」
「・・・だな」とヒイラギは先を急ぐ。
*古界
「亀裂が・・・とまった」
ルリエは言う。
「よし。鏡華、頼む」
「ええ。 月は夜の灯なり、夜闇を照らし、夜明けを越え、日を導く。
夜闇の灯篭よ、星々のよう散らばりし欠片よ、集まり、また夜の灯となろう」
そう鏡華が言うと欠けていた月が、徐々に元に戻っていく。
*紅き神殿
「・・・すまない、エルゥナ・・・」。
後に二人は仲良くなっていた。そして、分身をしても力も分身出来るようになり、気持ち面も魔力も落になった。
「アルゥ」
「なんだ? ・・・ッ!」
エルゥナは分身してアルゥナにキスをした。
「君の愛人は永遠に俺で、俺も君を愛する」
「・・・ああ・・・そうかい」
「まあ、そうしないと生きられないって言うのもあるけど、こうやってみる分身に愛着わいてさー。愛しているよ」
「ッ! ほざけ!」
「はいはい」
エルゥナはアルゥナを抱き寄せた。
*知恵の杜
知恵の杜の迷宮をうまく潜り抜けて入ると時は既に時遅し。がしゃどくろによって死んだエルフの残骸と聖檀に鏡と姫シルエィを人質にし、王であるハドレーが剣を構えている。
「お客さんか・・・。良いものだろ、この光景」
がしゃどくろのシスターは微笑む。
「残念だが、エルフ達は全員、手遅れだ」と死神ディフェンは言う。
「・・・ディフェン、骸を頼む。こちらは鏡の封印が解ける前になんとかしよう」とヒイラギ。
「我が可愛い子、ヒイラギよ・・・」
「なんです?姫様」
震えた声でシルエィが言う。
「わたくしと、シスターを一緒に殺してください。貴方がその銃を向ける時、わたくしは聖域魔力を全て解放します。同時に撃ってください。さすれば、封印出来るでしょう」
震え声で言う。
「姫様!」とハドレーは嘆く。
「・・・わたくしが気付かぬばかりにこうなってしまった罪滅ぼしです」
ヒイラギは俯く。
「何をゴタゴタと!」
シスターが手をバッと前に出すと亡霊が襲い掛かってくる。白翠に向かってくる亡霊をアヌータとエルヴァは攻撃を止めて亡霊を切り伏せる。
「白翠様は」
「俺らが守る」
エルヴァとアヌータは亡霊を切り伏せていく。狗神は一体一体に陰陽札をはり、浄化術を使う。
「ハドレー、それが姫様の望みならば利かないとならないだろ。狗神、姫様に封印の力を分けてくれ。そして、鏡に閉じ込めるんだ」
「分かった」
ヒイラギは静かに銃二丁を取り出して、永久封印の錬金弾丸を詰める。
「いくぞ。 白翠様はハドレーを頼む。あとの二人は残骸を頼む」
「分かりました」と白翠。こくっとエルヴァとアヌータは合図して残骸を切り伏せていく。
「シルエィ!!」
聖檀に登ろうとするハドレーを白翠が走って腕を掴んで止める。
「ハドレー! 私も過去に全てを犠牲にしてしまった。時に犠牲はあります。だから、私はここにいる」
「あんたのせいでこうなったのか!?」
「どうとも言い切れません。 だけど、守りたいからこそ、この幽幻界が生まれ、守るべきものは守らなければいけないという宿命に出会った。この世界の中心者として」
「それはシルエィもだろ! ここを、知恵の杜を守りたいと」
「それがこの形なんです。 彼女と共にディオを消すことを。それが知恵の杜の中心者の望みならば仕方ない! 受け入れなさい!!」
「・・・くッ」
同じ種族であるヒイラギに情けをかけるように目線を向けた。ヒイラギは「恨まれても構わない」と言い、静かにトリガーを引いた。
ドギューーーン! ドギューーーーン!
「人を惑わせ、死へと導く惑わしの鏡よ、永久の鎖に繋がり候」
狗神の呪文とともにシルエィとシスターの急所に当たる。そして、狗神の呪文が文字の羅列となり二人を縛り上げ、シルエィが解き放った聖域魔力が輝く。シルエィはすぐに息を引き取り、シスターは悲鳴を上げて息を引き取る。そして、一つの石板になる。
「これで二度と現れないでしょう」
「ああ」
ハドレーは「あああああああああああ!!!」と叫び、腰の皮袋に仕舞っていたレイピアを取り出して自分の胸を刺す。
「なッ! バカな事を!」
白翠は倒れるハドレーを支える。
「シルエィ・・・・」
手を伸ばして彼女を求めて、そして、その手は地に落ちる。
「死んでしまった・・・・・」
「・・・安らかな場所で眠らせてやろう」ディフェンが戻ってきてハドレーを抱えて消える。そして、知恵の杜はどんどん枯れていく。
「なんだ?これは?」とエルヴァ。
「中心の姫様がいなくなったから知恵の杜は廃れるのだ。さあ、神社に戻ろうか」とヒイラギは少し儚げに知恵の杜を見て、背を向けた。そこへ白梟が飛んでくる。
「うん。分かった。古界も無事済んだって」
「それはよかった」
「意識不明者もそのうち目覚めるでしょう」
「問題は神社と神殿だ」
知恵の杜を出ると窮柳がいて笑っていた。
「こっちも大丈夫でありんす。アルゥナが紅月の炎でメネシスや式を燃やした後にエルゥナを受け入れたからなんもないでありんす」
その言葉に全員笑顔になる。そして、鳥居を抜けて神社で行くと二人が立っていた。
「おおー! よく、受け入れたね・・・アルゥナ」
「ああ、白翠様」
言葉はまだ足らずだった。
「そして感謝するよ、姉さん」とエルヴァ。
「ありがとうね。ここを守ってくれて」とアヌータ。
「知らない間に終わっていた」
「そうかい」とヒイラギ。
「ヒイラギ、どうする?これから?知恵の杜はなくなったぞ?」とエルヴァ。
「ああ、古界で裏始末屋するさ。メネシスや式の。今回ので古界でもきっかけが生まれると分かったからな」
「そうか。 で、なんで石板がここにある?」
とエルヴァが面倒そうにアヌータを見る。
「白翠様の神殿に置いて管理しておこうと」
「なるほど。それはいい」
「結界水ははっておきますよ。ささ、お茶がはいりましたよ」
白翠は奥からお茶を持ってくる。
ディフェンは冥府で死体の片付けに行ったが、残った者は神社の縁側で一息つく。
「アルゥ、俺もいるから」
「ああ」
まだ慣れず、エルゥナの後ろにいるが『大丈夫』と言われると従って、ちょこんと縁側の端っこに座った。
その姿に全員安堵した。
ー二人は生涯離れられないー
ーだからこそ分かち合えるものがあるー
ー哀しみも苦しみも楽しいことも全て、二人でー
ー二人でー
「まさかこんな形で丸く収まるとはな~」
「でも、よかったです」
と、エルヴァと白翠がアルゥナとエルゥナを見て言う。
「私は、これからを築かないとならない。三度もそれ以上もディオを呼び寄せてしまうような荒んだ世界にならないよう、闇は闇の正義、光は光の正義を導き、守り、時に戦わないとならない」
「この世界も荒んでいるさ」
「そう言う意味じゃないよ、エルヴァ。表しか見ず本当のこの世を見ず生きていること。かつて、薄っぺらい理想郷の中で生きていた。だから人は荒んでいくばかりで理不尽もそのまま通してしまったり欲を受け入れなかったり、分かり合おうとも聞こうともせず闇しか生まれない。だから、きっと、私がいた世界のディオは目覚めた」
「理不尽から生まれる闇、欲から生まれる闇、この世界の人間もありうることだ」
「だね。古界ではヒイラギや陰陽師が見守っているけど私達も見守らなくては。そして、こちらの世界も。皆で」
「そうですわね」とアヌータが入ってくる。
「人間が一番怖いの。妖や精霊や神よりも」と窮柳も入ってくる。
「ええ、私も元人間だからこそ恐れている。人間は無限の可能性があり、また、闇も欲も全て無限ですから。なのに、なぜか、光は少ない。だから、怖いのです」
「それを正しい方法で導きたいと、導きの月だからこそ思うな。それは皆も同じだろ?」
「そうだよ、エルヴァ」
「ああ、エルヴァ」とエルゥナ。アルゥナもコクコクと首を縦にふる。窮柳もうんうんと頷く。
「この世界の神様の言う望みならば我々は全力で応えますよ」とアヌータ。
「我々もな」と窮柳。「私もだ」とヒイラギ。
「白翠様の時代が犠牲になったのは残念だが、こうして新たな世界が開いた白翠様との運命で出会いだから大事にしたいと思う」とエルヴァ。
「ありがとう、皆。見て、分かり合えば、あの二人のように正しくあれる」
「ええ、そうね」
アヌータは、にこっと笑って和んでいるアルゥナ・エルゥナを見つめた。そして、全員の視線は二人に向く。二人も全員と見つめった。
「ごめん。ありがとう」
とアルゥナは言う。
「いいのよ」
「ああ」
「これからは皆一緒よ」
「そうだな」
アルゥナは不器用にふっと微笑んだ。
それからしばらく、この余韻を過ごした。
ーエルゥナー
ーアルゥナー
ー愛している。二人が死ぬ、その時までー
〔終〕
そして、広がる。
幽幻世界の物語が。
お疲れ様です。
最後まで読んでいただきありがとうございます。