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日明リ国編:「国家元首と最高神」

 流されるままに辻本によって連れてこられた最高神。そのことについては不満など感じていない。


 日明リ国の国家元首が住む建物「国王殿」にやって来た最高神。


 入る前に最高神は身体検査を受ける。何人者、職員や護衛員の人たちが金属探知機やレントゲン機械のようなものを使って身体検査を行い、所持品の類も調べられるが、そもそも所持品など持っていない。


 すると一人の職員が前に出て両手を軽く前に出し手のひらをこちらに向けた。そしたらそこに魔法陣が現れた。しかも、無詠唱かつ一つだけではない。3段と4つの魔法陣が現れた。


 正確に言うとまず魔法陣が3段現れ、4つの小さい魔法陣は最高神にとって一番近い魔法陣になる4段目に現れ上下左右に広がっている。十字に見えなくもない。


 そして、魔法陣が効力を失い消滅する。


いわゆる調査型の魔法だ。持ち物検査と身体検査の魔法だ。魔導の道具は金属探知機や見た目や触覚ではわからない場合があるのだ。


「検査終了、どうぞお入りください」


 すべての検査が終わる。身元確認がないのはもともと最高神が誰なのか知っているからだろう。それに、あの調査型の魔法で同時に確認していたのだろう。


「やっと入れる。しかし、流石、国家中枢機関の一つですね」


国王殿に入り。廊下を歩く辻本と最高神。焦げ茶色フローリングと白い壁、床と同じ色をしている柱。和風に感じられるが構造的には洋風だろう。


辻本の案内で国家元首の執務室に向かう。そして、目当ての部屋にたどり着き扉をノックする。


「川光元首、辻本です。セウス様をお連れしました」コンコンコン


「入れ」


「失礼します」


 執務室に入り、川光の身体が明らかになる。


 男性で身長175cmほど。体は筋肉質でいかにも鍛えているような体つきをしている。しかし、年齢の割には青年の雰囲気と見た目をしている。それこそ20代なったばかりの男だ。


 国家元首は25歳以上であり今までの国家元首は、30代を超えていたためこの男も年齢はかなりあるはずだが、それを微塵も感じない。


「お初にお目にかかりますセウス様。私は日明リ国国家元首、川光信弘と申します」


「初めまして私の名はセウスと申します」


 互いに名乗り、握手を交わす両者。


「辻本君、後は任せてくれ戻って構わないぞ。お疲れさん」


「かしこまりました。それでは失礼します」


 辻本は川光の言う通りにして、一礼した後扉に向けて歩き出した。


「失礼しました」


 辻本は扉の前で再び一礼し退室した。


 静寂が辺りを支配する。


「さて、じゃそこに座りましょうか」


 元首の執務室の中央にある2つのソファー。そしてその間にある低い机。


 そのソファーに対になって座る川光と最高神。机の上には何もない。


「セウス様はここに迎え入れた理由からお話ししましょう」


「はい」


「セウス様の存在は暠皇陛下の天命占いによって明らかになりました。天命占いというのは未来予言のようなものでしてね、どのくらいの確立で当たるのかは知りませんがね」


 天命占いは運命の神によって告げられる予言なので99.9%の確率で当たる、というのを教えた方がいいのかと思ったがやめた。


「なるほど、で何を私に求めるのですか?」


「それは、もしかしたらあなたご自身がよくご存じなのでは」


「!!!・・・・・フッ」


 驚いた私のこともわかるのか、まぁでも小さい神でも妙に力がある神はたくさんいますからねぇ。


「フフッそれでは貴国の戦争を見せてもらえますかな」


「構いませんですが、お願いがございます」


「なんでしょう?」


 面白くなるのは良い、そのためにここに来たのだから。ついでに頼みを聞いても面白いかもしれない。


「我が国をどうか保護してくださらないでしょうか?」


 なるほど、しかし、その前に聞きたいことがある最高神。


「その前に聞きたいことがあります」


「どうぞ」


「あなた方は私を何だと思いますか?」


「え~と、天命占いではとても大きい神としか分かりませんでした」


「大きい神ですか?」


「はい」


「まぁ私自身大した神ではないのですが(大嘘)」


 今後の展開のためにわざとらしく嘘をつく最高神。それに対して川光は疑いの目を向ける。


「いや~私は完璧ではないので(大嘘)、できる限りは何とかしてみましょう」


「ありがとうございます」ペコリ


 深くお辞儀する川光。


「ではこれから会議室に行きます、ついて来てください」


 立ち上がり執務室を後にする2人。




 会議室


 会議室には各省大臣や国防省の面子が揃っている。


「川光元首その方は、もしや陛下が仰っていたセウス様ですか?」


「そうだ、それと待たせたな。会議を始めよう」


 最高神は川光元首の隣に座る。


 会議が始まる。


「我が国は天本国とダーチュース法国の連合国に援軍を送ることを1ヶ月前から決めていました。そして、つい昨日我が軍と今回の敵国である元王帝国に間に初めての交戦がありました」


 軍大元帥が説明を始める。


「む、ついにぶつかったか」


 外務大臣が呟く。


「今回の交戦は、艦対空と空対空の交戦でした。敵艦隊の空父から発艦した航空機を我が海軍と空軍が迎撃しました」


「我が軍には一切の損害はありません」


「素晴らしい」


 財務大臣が声を出す。


「これから元王帝国に対して本格的に攻撃をしますが、川光元首あの件については本当に実行してよろしいのでしょうか?特に元王帝国への本土攻撃で」


「十分に安定したし制圧力、攻撃力には申し分ない。少しばかり残虐なことになるかもしれんが今更だ」


 川光元首が机をバンッと叩く


「命軍の初陣だ!」


「!!!」


 大臣たちや秘書、職員たちも驚く。いや聞いてはいたが本当にやるとは思っていなかったのだ。


「やっと戦場に投入できる。随分と長い時間がかかったな」


 川光元首がにやける。


「それでは、それは、こちらに任せてもらいますがよろしいでしょうか?」


 大元帥が許可を求める姿勢になる。


「ああ許可は出す遠慮なく使ってくれ。それと今回、核兵器は使用しない・・・というのは前々から決めていたな」


 その後も会議は続いた。


 そして、最高神の扱いをどうするかという議題になった。


「基本的自由に行動させる」


 川光元首は即決する。


「そして、もしもこの国が真の危機に瀕した時は助力お願いできるように先ほど交渉した」


「え!問題や金銭はどうするのですか!?」


 環境大臣が問いかける。


「ある程度の金銭なら俺の自腹でいい、どうせこの5年で億万長者の仲間入りになったのだから」


 億万長者になった理由は川光元首が魔素主となり、それを理由に様々な事業を行って、稼ぎまくっているからなのだろう。


「それと、この方には俺の幻影をつけておく。それで問題はあるまい」


 全員顔を見合わせる、その後全員「分かりました」と言い頷いた。


「軍やその他の組織や機関に顔を通しておけよ」


 最高神が一言も話さないままに会議は終了した。




 執務室に戻る川光と最高神。道中一言も話さずに歩いていた。執務室に入ると最高神は先ほどのソファーに座ったが川光は元首専用の執務椅子に座ってリラックスした。


「国家元首というのも楽じゃないな、本当に」


 最高神に話しかける川光。


「そもそもなぜあなたは国家元首になろうと思ったんですか?」


 最高神が問いかける。


「私は、前の世界の破天球で星を救った現代の救世主です。世界や国は私の存在を知った。だからなれると思ったんです。そして政治家になって元首候補選挙に出て代表をつかみ、国家元首投票で勝ち取り、国家元首になった。ちなみに私の所属政党は“共和党”です」


 川光は簡単に自分が国家元首になった経緯を話した。そして、さらに話をつづけた。


「私は、魔導を成長させるために、魔導会を作りました。しかし、政府に目をつけられた」


「政府は魔導庁を作り、連邦議会は法律を整備した。そして魔素は国内のみに広がるようにした」


「魔素主は雄一、魔素を与えることができる。しかし、魔素を与える場合は、お金を払わなければならないようにした。要は、パスポートや書類の発行費用を国民から巻き上げるのと同じです。私は無料にしようと考えていたのですが、止められてしまいました」


「さらに、魔素によって生じる魔力は危険であるため普段は使えないようにするため魔素を抑える魔導が施されることになりました。私の魔導でね」


「その魔導のことを“魔鎖”と言います」


 続いて魔素と魔導の経緯を話した。


「今は魔力による魔導の行使は魔鎖を解放する、一部の場所でしか解放されなくなりました」


 川光は天井を見上げる。


「魔導を好き勝手使えないとなると魔素を購入しても利点がそこまでないように感じますね」


 最高神は問題について考えた。


そして、川光はあらかた言い終えるとしばらく考えこみこちらを見た。


「では、セウス様あなたはこれからこの国を自由に散策して構いませんが、私の幻影をつけることはご了承ください」


 川光はそう言うと椅子から立ち上がりスタスタと歩いて出て行ってしまった。


 そして、すぐに再び扉が開いた。しかも勢いよく「バーン」と。


「さぁ!外に行きましょうかセウス様!」


 川光が再びやって来た。


「なんか楽しそうですねあなた。それにあなた、幻影の方ですね」


 すぐに見抜く最高神。


「よくわかりましね、セウス様。そう、私は幻影の1体です!」シャキーン


 ポーズをとる川光の幻影。


「魔力が先ほどと比べ圧倒的に少ない。バレバレですよ」


 幻影は姿の写しに過ぎないため魔力が限りなく少なくなってしまう。それでも30Mはある。


「本体の10Tには遠く及ばないのはしょうがないんですよ。まぁ幻影と言っても実体化しているので幻影というよりは分身の方が近いかもしれませんがね」


 2人は国王殿を出て最高神は川光によって導かれる。


「ところでセウス様どこか行きたいところはありますか?」


 川光が聞いてきた。そう言われても目的というのはほとんどないため、返答に困る。それにまだ戦争は始まったばかりだし。


「じゃあ、ここら一帯をまずは散策しますか」


「了解しました!」


 駐車場に向かう2人。


「それではまずは、この国の中枢である“皇域”へ行きましょう」


 皇域とは暠皇と皇族の住居であり庭園でもある場所だ。


 白い車に乗り込む2人ふと気になったことがあった。


「聞きたいことがありますよろしいですか?」


 車が走り出した後川光は応答した。


「どうぞ」


「国家元首が護衛もなしに外歩いていいのでしょうか?いくら幻影とはいえ」


 世間的に大丈夫なのだろうかという素朴な疑問だ。


「問題ありません。私はただの幻影なので死んでも本体には何の影響もないので問題はないです」


「それに私が消えたら私の経験は全て本体に受け継がれるので、人生を生きる上でとても効率がいい」


 幻影の持っている経験は消滅の際に本体に受け継がれる。それを利用すれば多数の経緯を積むことができる。ということは


「つまり、幻影はあなた1体だけではありませんね」


「そう、私の他に2体います。合計3体の幻影というわけです」


 今の自分に似ていている。


「1体は魔導会の本社に、もう1体は戦争の前線の方に赴いています」


 効率がいい人生というのはものすごく珍しいと言える。目的があるのもいい。目的があると輝けるから。


「もう着きますよ。皇域に」


「もう?早いですね」


「国王殿から近いですからね。なんせ皇域は国王殿のすぐ後ろにありますからね」


 見えてきたのは和風の門。城塞の門という雰囲気が漂う。そして、門に通じる橋の下には水の堀。もちろん堀は左右に広がり皇域を囲っている。


 関所の人間と話をつけて中に入る。橋の上を通り、門をくぐり、少し進んだ後、皇域内の駐車場に停まる。そこから降りて皇域の地面に足をつける2人。


「ここが皇域ですどうでしょうか?」


 川光が感想を求めてきた。


「どうと言われても広い駐車場とその周りの林しか見えませんね」


 皇域に入ると道中には松林しかなかった。


「少し歩くとすぐに開けたところに出ますよ」


 川光はそう言うと入口と反対にある中央の道に歩き出し最高神はその後をついて行った。その中央の道には車が侵入できないようするための杭が出ている。


「皇域の中には7つの機関があります。それらは、全て暠皇陛下の住まわれる日明リ城を取り囲むように配置されています」


 川光が唐突にまるでガイドのように説明を始めた。


「その機関は、東に皇宮庁、北に日明リ中央銀行、西に国家公安省。そして残る4つは宮殿警察署になっています」


 4つの宮殿警察署は北東、北西、南東、南西にあると川光は言った。しかし、そうなると。


「南は空っぽですか?」


 皇域では南が開いているのだろうかと疑問に思った最高神。


「皇域内では南は空いていますが、皇域の南から外に出ると先ほどの国王殿があります」


 配置にも何か意味があるようだ。


「これらは元々、日明リ城を守るための大名の城だった歴史があります」


 説明を聞いていると、林が途切れ一面芝生しかない広い場所に出た。


そして、白い建物が見えてきた。その建物は壁も瓦も真っ白で大きな屋敷に見える。しかも、屋根の中心にドーム型の屋根が生えているように伸びている。ドームの上には日明リ国の国旗にもある太陽が乗っかっている。


「これが、日明リ城ですか?」


「いえ、これは“光宮殿”です。皇室の方々が執務、公務を行われ、さらにこの建物の後ろにある日明リ城の整備や掃除をしている召使いや職員の自室がある建物です」


「一般参賀などもこの建物で行われます」


 読み方は同じだが、城ではないようだ。


「後ろにある日明リ城を見に行きましょう」


 光宮殿の右側を進む川光。最高神は光宮殿を観ながらついていく。


そして、日明リ城はすぐに見えた。


「あの黄金の城が“日明リ城”です」


 日明リ城は和式の城そのままだが、屋根も壁も全てが黄金に包まれている。まさに建物その物が巨大な宝だ。


 その黄金の城は湖の真ん中に建っており白いレンガのような石垣の上にある。そして、壁も屋根も白くて長い光宮殿の一部が日明リ城に向けて伸びている。その光宮殿の一部も白い石垣の上にある。


 日明リ城の一番上の屋根の上には、光宮殿と同じような太陽が乗っている。しかし、先ほどの太陽は真っ白だったが、この太陽は城一緒に黄金に輝いている。


「これは、これは、随分と光輝いていますね」


 最高神は素直に驚く。


「暠皇陛下と皇族である皇室の方々しか住めない建物です。皇室の方々以外で入れる者は光宮殿の職員と召使いだけです」


「まぁその職員や召使いは皇宮庁の職員なんですけどね」


「これだけの金の量はそう易々と手に入るとは思いませんね」


 これだけ大きい城を覆いつくすほどの金はどのくらい必要なのだろうか。


「日明リ城の金のみならず国内に流通している金は全て国内だけで賄っています。なぜなら日明リ国は破天球では金の保有量がぶっちぎりの第1位でしたから」


 川光は自慢げに話す。


「なぜ、我が国はこんなに金を保有しているのかと言うと、売り手がないのです。先進国は自国か植民地で賄っているし、我が国が元々持っていた保護国や植民地は経済復旧や整備で手一杯。その際に発生する材料としての金以外に当てがない」


 念を押すようにしゃべり、頭を抱える川光。


「なので沢山あるんです。しかも、公式に配布している資料では、金は2万t以上となっていますが本当は30万t以上あります」


 川光は言い切ったようにうなだれ疲れているように見える。


「その金があるのは中央銀行ということになると思いますが、なぜそんなに多いでしょうか?金鉱山じゃあるまいし」


「ご名答!日明リ中央銀行は金鉱山だったんです。しかし、金は公式上、掘りつくしてあるとのことです」


「皇域があるのに掘っちゃっていいのかよ」


 ツッコミを入れる最高神。


「地盤はかなり頑丈なので先祖の皆さんは大丈夫だと判断したのでしょう」


 川光自身もよくは知らないらしい。


「何なら見に行きますか?日明リ中央銀行」


 川光が聞いてくる。


「いいんですか、そんな重要なところに連れて行って」


 少しばかり笑みを浮かべながら尋ねる最高神。


「実は最近、魔導警備機器を導入しまして、ついで何か意見をもらえると嬉しいというのが本音です」


 満月の明るい月が黄金に輝く日明リ城を照らし一層輝いていている。




用語集


 天本国:日明リ国の東にある国

 ダーチュース法国:天本国の東にある国

 元王帝国:日明リ国の今回の敵国。日明リ国から15000km以上東にある。

 魔素主:魔素の主。魔素を与えることができる存在

 元首候補選挙:国家元首の候補者を各州から出す選挙。

 魔導会:川光が建てた会社。魔導で様々な事業をしている。

 魔導庁:国民魔素の管理、魔導の開示、規制などをしている。国王殿の下位組織

 連邦議会:日明リ国の立法府で法律を作る。州議会よりも上位にある。

 魔素:魔力を生み出す源。生物のみにあり魔素がないと魔力の補充ができない。

 魔鎖:魔素を縛り魔力が外に出ないようにするもの。魔導が使えなくなる。

 皇宮庁:皇室の国家事務や国事行為。それに関する事務、儀式を司る国王殿の下位組織。

 日明リ中央銀行:日明リ国の中央銀行。お札を発行している。元々金鉱山。

 国家公安省:日明リ国警察機関の最上位組織。宮殿警察署本部でもある。

 宮殿警察署:皇域を守る警察や暠皇・皇族を護衛する、護衛員の住まいであり事務所。

 光宮殿:皇宮庁の管轄する建物。皇室の執務、公務の場。

 日明リ城:皇室の住まい。


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