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日明リ国編:「最高神の船旅」


 最高神が空を飛んでいる。


 この最高神は先ほど別れた3人のうちの1人だ。この最高神は「リズ港」という港に向かっている。


 人間の魔導探知に引っかかる前に地面に降りる最高神。そこからまた歩き始める。ここら一帯の魔物は駆逐してしまったので、とても静かだ。それにこの大陸については違う最高神が物語を遊ぶのでこの大陸にはもう用はない。



 リズ港



 ローパール大陸で一番大きい港についた。この港は、世界の中心国家である、神聖ルーアドーク帝国が収めている港である。そのため、港町は王都以上に栄えている。さらに、世界の大国、超大国からの商船や軍艦などが唯一まともに寄港できる港でもある。


 夜だというのに港町は明るくとても賑わっている。魔物の軍がいるという話が来ているはずだが、それでもお構いなしに騒がしい。騒がしい理由はつい最近この港にやってきたとある国使者と軍艦である。


 人工的な光が街を包んでいる中、最高神は寄港している一つの軍艦に向かった。そして、その軍艦のある場所には人だかりができている。


 顔がある赤い太陽の旗を掲げているその軍艦こそ日明リ国の軍艦である。


主砲は小さく船体も大きくはない、ルーアドークや天本などの人たちはその軍艦のことを「軽巡洋艦」と言っていた。


 どう見ても現代艦である。


 その軍艦は、艦首を港に向けて、何かを待っている。


 最高神が人を押しのけ低い柵で遮られている場所に出た。一番前なので軍艦がよく見える。


 すると、軍艦から1人の男がおりてきた。


「セウス様ですね」


 そいつは、地球と同じ敬礼を最高神に向けて行った後、教えていない最高神の名前を言った。


「なぜ?私の名を」


 疑問を持つフリをする最高神。


「詰まる話は艦内で、どうぞこちらに来てください」


 その兵士は右にそれて軍艦を右腕で刺す。


「いいでしょう」


 無表情だった顔に少し笑みが出る。面白くなってきた。




 最高神と兵士は艦内に入った。すると、突然、軍艦が動き出しリズ港を離れる。


 最高神は今座っている。その部屋は幹部専用の部屋でかなり豪華なつくりをしている。その部屋にあるソファーに腰掛け、背もたれ寄りかかり、ひじ掛けに腕をのせてリラックスしている最高神。


 しかも、最高神は上座に座っている。


 下座に座る艦長と副長の男二人が少し冷や汗をかき気まずい雰囲気を出している。話を切り出す前に最高神は背もたれから背中を離し聞く姿勢をとった。そして、艦長が話を始める。


「私は、“巡防艦 村上”の艦長、小野寺 一郎と申します」


「同じく副長の磯山 博と申します」


「小野寺さんと磯山さんですね、それで先ほど私を案内した、今外に立っている彼は?」


「彼は山川 亮介と言います」


 小野寺艦長がこの部屋にはいないが外で待っている、山川について答える。


「はい、わかりました。それで、あの群衆の中から私だけを選んで呼んだ理由が聞きたいです」


 最高神は疑問を作る。


「日明リ国の象徴であられる暠皇陛下による天命占いによって貴方様の存在が明らかにされました。そして、日明リ国の現国家元首である、川光元首の命令を受け貴方様をお迎えに上がりました」


 小野寺艦長は淡々と話す。


「なるほど、よくわかりました。しかし、私を迎えに行って何か意味があるのでしょうか?」


「それは、我々にはわかりません、我々はただ貴方様をお迎えに上がっただけです」


 小野寺艦長は少し下を向いた。そして川光元首が言ったことを思い出す。「占いによれば自由奔放に行動するし、敵にも見方にもならないだろう。だが、行動には絶対に制限を設けるな」と忠告されている。


「ところで、山川さんとお話をしたいのですが構わないでしょうか?」


 その言葉に小野寺艦長と副長が少し驚く。少し間をおいて答える。


「はい、どうぞ」


 小野寺艦長が力を薄めた声で答える。


 最高神はソファーから立ち上がり、自分で扉を開けて外に出た。


「あ、セウス様」


 部屋の外に出ると、先ほどこの軍艦に連れて来た山川がいた。


「私は広々とした場所が好きでね、風にでもあたりながら話でもしましょうか」


「はい!」


 背筋を伸ばして答える山川。


 山川に案内され外に出てきた最高神。そして、質問してみようと思い声を出した。


「これは?」


「これは、垂直発射装置の一つ、垂発です」


巡防艦 村上の前甲板垂直発射装置を興味深そうにと見る最高神。


「となるとミサイルが入っているでしょうね」


「はい、前部の垂発は16セルあります。詳しいことは教えられませんが、対空ミサイルである空矢と対潜ミサイルである潜雷が入っています」


 気分よさそうに紹介していく山川。兵器が好きなのだろう。


「対艦ミサイルは、ないんですか?」


「対艦ミサイルである天銛は後部にあります。まぁこれは、8本だけですが」


 聞けば聞くほど興味深い、似たような作りなるのは並行世界の特徴の一つだ。


 そして、聞くところによると、金意志社で作られた軍艦だそうだ。さらに、この軍艦の正式名称がわかった、弘仁級 巡防艦 7番艦 村上だそうだ。船体には「0182」と記してある。


 説明を聞いた後、主砲に目をやる最高神。そして、山川が説明を再開する。


「これは、雷槍破社製62口径76mm単装速射砲です」


 その小型の主砲は、対空向きの主砲だ。


「国の軍備が気になりますが、それはさておき」


 最高神は思っていた日明リ国の文化は、とある日の本の国に似ている。流石、似たような星にあった国だ。


「山川さん質問です。日明リ国では、2次元文化はありますか?」


 そもそも、これが2次元だが気にしない。


 文化が似ているのであれば国の象徴、限らず他にも似ているところがあるはずだ。


「はい、あります。特に“物にも命は宿る”という見方から擬人化ものが特に多いですね。もう、何でもかんでも擬人化ばかりでよくネタが尽きないなと思います。かぶっているネタもあるくらいですから」


 日明リ国でも擬人化もの他2次元作品はあるようだ。


「地球のあの国でも擬人化がありましたね。自然崇拝やアニミズムが発展するとあのような形になるのでしょうか」


 小さい声で言ったので聞こえてはいないが不思議そうな顔を山川は浮かべている。


「日明リ国では、擬人化文化があるようですがやはり男性に人気があるのでしょうね」


 最高神はごく当然だろうと思うこと話した。


「まぁ、男性よりも女性に人気がありますね。もちろん男性がいないわけではありませんが」


 山川が言った後、少し引っかかった。


「ん?男性ではなく女性?ちょっと待ってください。え~と」


「?」


 キョトンとする山川。


「聞きたいことがあります、似たような仕組みの艦船のことを同型艦や同型船と言いますね」


「はい」


「では、その他にも言い方がありますか?例えば家族のように例えたりとか」


「あぁ~、兄弟艦や兄弟船のことですね」


 思わずキョトンとしてしまう最高神。


「じゃあ、似たような店のことは」


「兄弟店」


「似たような学校」


「兄弟校」


「都市」


「兄弟都市」


 どうやらあらゆるものが男に例えられている。少しばかりカルチャーショックを受ける最高神。


「それに、擬人化のほとんどは男ですね」


「それならば、航空機を運用する広い甲板を持つ軍艦のことを何というのですか?」


 発送や考え方が違うなら、女性名詞は使われないはず。


「航空父艦のことでしょうか?それとも、強襲揚陸艦?」


 考え方が若干異なれば、名前にも影響する。というのは、明らかだと改めて思った最高神だった。


「う~ん、なるほど、よくわかりました。ではなぜ、男として例えているのですか」


 地球では男性名詞と女性名詞がある国がある。その影響を受けて姉妹とよく聞いていた。もしかしたら、この国の場合は逆かもしれない


「私自身よく知るわけではないのですが、昔から、男神が宿っているとか聞いたことがあります。まぁ性別なんてどうでもいいんですけどね」


 違ったようだ。


 そもそも、物に宿る魂には本来性別などない。しかし、星、国、地域で性別が考えられているのなら宿った魂もまた性別が与えられる。女として考えられているなら女の姿をするし、男として考えられているなら男の姿をする。そう、そこの文化や考え方に合わせている。


 だから、何らおかしいことではない。


「ふぅ、ま、よく知れて良かったです」




 一方、艦橋では、奇妙な魚群を目視で見つけていた。


 「艦橋が妙な空気になっていますね」


 最高神が異変に気がつく。


「あ~私は持ち場に戻ってもよろしいでしょうか」


 山川もそろそろ戻りたいようだ。そして、少し疲れが見える。最高神は自分が邪魔してしまったのかと思った。柄にもなく、申し訳ない気持ちになってしまった。


 最高神は山川の前に右手を差し出し、指をパチンと鳴らした。これにより山川の疲れは消え去った。最高神なりのお礼である。


「これで良し」


「何だかよくわかりませんが、体が軽くなったような・・・」


「気のせいです」


「そうですか。では、私はこれで」


 山川はお辞儀をして艦内に戻っていった。


 艦橋に視線を移すと、そこにいる人たちは、右の遠くを見ている。


 最高神も同じ方向を見ると、そこにはイルカ?ジュゴン?違うね!


「お~、あれは、人魚ですね」


 カルマに昔から住んでいる生物で、エルフと同じく長寿の動物。しかし、エルフとは違い人としては見られておらず、魔物の扱いを受けている。それもそのはず、彼女らは繁殖期になると人間の男を襲い生殖器を奪った後、食ってしまう。交尾すら行わない一方的な繁殖行動。男なら基本誰でもいいので船を見かけたら構わず襲ってくる。


 彼女らは、海洋に住んでいるため普段なら髪は白く、肌も灰色である。しかし、繁殖期では人間と同じ色になる。髪の色は個体差があるが、肌は普通に白っぽい肌色になる。


それによって、ろくに知識が無い船乗りや漁師が襲われて命を落とし、海賊船、軍艦でも平気で襲う。繁殖期なら海岸や浅瀬も危険だ。


 それぐらい人魚といのは恐ろしい生き物だ。


「あの人魚たちは、肌が人間そのもの。ということは繁殖期真っ盛りですね」


「このままだと襲われますが、問題はないでしょう」


「セウス様、艦内に退避してください」


 乗員からの放送が聞こえる。彼らは人魚の上半身が見えた時点でかなり警戒し、艦内に籠っている。小銃で応戦してもいいが半分人間の姿をしているため様子見のため籠っている。


そして、その答えにはテレパシーで答える。


「安心してください。私のことはお気になさらずに、あなた方こそ顔を出さない方がいいですよ、それと、この艦を止めてください。動いているとしつこく追ってきます」


「火器を使う場合があるので退避してください」


 再び放送が入る。それに最高神は


「大丈夫です、無問題です」


 と答えた。その後は何の放送もなかった。



 艦橋



「あの人を束縛するようなことはマネするな。面倒な事にはしたくないからな」


 艦橋にやって来た小野寺艦長が乗員に警告する。彼らはセウスがどういう人物か知らない。だが、国家元首自ら制限を設けてはいけない、ということを教えられていたので、「これ以上のこれ以上は警告するな」ということだ。


 さらに、セウスから何かアドバイスがあった場合は聞き逃すなという命令も受けている。


「それと、機関停止!総員!身を隠せ!」


「機関停止!」


 乗員はその指示に従い「村上」の機関を停止させ身を引くし、外から確認できないようにする。


「何がくるんです?」


 小野寺艦長に質問する乗員。


「分からん、俺が知りたいわ」


 これにより誰も状況を理解していないことがわかった。


「本艦から右に見えた魚群が関係しているのだろうか?」


 各々疑問を口にするが、すぐに静かになった。




 しばらくして、最高神は右舷の海面を見下ろした。するとそこには、やたら多く人魚たちが集まってきた。見たこともない船を見て興味深そうに触ったり、叩いたりしている。


そうしていたら最高神に気づいて、深く潜り始めた。そして、勢いよく1体の人魚が水面に飛び出した。まるでイルカのように数mジャンプした。


 縄のような海藻を振りかぶり、落下し始めたら、投げ縄のように最高神に向かって投げてきた。


この海藻で出来た縄は、人魚が作る魔法の道具で、生き物に絡みつく性質がある。この魔法具は動物に巻き付き、さらに肉眼では確認できない小さい棘を、触れている部分に生やし獲物を逃がさないようになっている。そして、海中に連れ込んだ獲物を血が出ない方法で息の根を止める。


 その縄を左腕で受け止める。魔法が使われている海藻の縄は、まるでヘビのように巻き付いてきた。


「ほう、これが人魚の作る魔法の道具。ものすごい力で絡みついてきますね」


 人魚が海面に自由落下した後、最高神を引っ張る。かなり強い力だ。成人男性の1人や2人程度なら簡単に引きずり込むことができるだろう。


「すごい力だ。500kgはあるでしょうか?」


 人魚は海中であれば、とんでもない力を持つ。


 だがしかし、いくら引っ張っても動じない最高神。そして、しびれを切らした仲間たちが獲物を奪おうと飛び出す。今度は右腕、首、胴、胸、両足、両腿、顔に縄が絡みつく。縄を投げた人魚たちが海に入ると同時にものすごい力で引っ張られる。最低でも5tの力が最高神を襲う。


「人魚とは言え魔物に変わりはないようですね」


「甲板に人間がいなくて良かったです。この力なら確実にさらわれていますね。さてと、では帰ってもらいましょう」


「艦長」


 テレパシーで艦橋にいる小野寺艦長に話しかける。


「はい?」


 艦長が頭の中で答える。


「ソナー出力最大で発信してください」


 最高神が指示する。


「了解」


「水中発信ソナー起動。出力最大」


 水中にソナーの音波が駆け巡る。その音波は人魚たちに響き縄を手放して頭を苦しそうに抱える。やがて人魚の群れのボスが片手で頭を抱えながら逃げる方向を左腕で指さし、群れは巡防艦から勢いよく離れていった。


 そして、人魚の手から離れた縄は、魔力の供給が止まり、棘が消滅。ぬめりと落ちる。


 乗員は艦内に籠ったままで待機している。そして、放送で最高神に話しかける。


「セウス様、先程の襲撃は何なのですか?」


「人魚の襲撃です。外にあなた方が出てこなくて正解でした」


 先ほどと同じようにテレパシーで答える。


「人魚がいるとは流石異世界ですね。報告しておかないと」


「そうですね、海水浴を楽しんでいたら連れ去られたなんてシャレになりませんから」


「因みに、我々が外にいたらどうなっていました?」


「縄につかまって海に連れ去られ、捕食されていたでしょう」


 その言葉を聞いて乗員たちは冷や汗をかき、そして同時に安堵する。「外にいなくてよかった」と。




 人魚の襲撃の後、何事もなかったかのように航行し、数日後、日明リ国の領海に入った。


 リズ港とは打って変わって現代的な港が見えた。


 民間の船も多数停泊しているが、この軍艦が入る場所はただの港ではなく軍港。他の軍艦が多数停泊している。


「これは、これは、とんでもない数の軍艦ですね。何隻いるのやら」


 おびただしい数の軍艦を目にする最高神。


「文明力の圧倒的な差。これだから転移国家は面白い」


 最高神はこれから起こる出来事が楽しみで仕方がない。





 最高神降臨:日明リ国編、開始





用語集


 弘仁級 巡防艦 7番艦 村上:日明リ国の巡防艦(フリゲート艦)、全長137m、全幅16.2m、基準排水量3500t、満載排水量4325t

 垂発(すいはつ):Mk 41 VLS(垂直発射システム)に類似、村上には計16セル、中部に違う空矢だけ入っている垂発72セルが存在する。

 空矢(くうし):個艦防衛用近接防御ミサイル。ESSMに類似

 潜雷(せんらい):対潜ミサイル。ASROCに類似

 天銛(てんせん):対地対艦巡航ミサイル。Harpoonに類似

 雷槍破社(らいそうは社):兵器を研究開発している会社。金意志社の子会社。

 金意志社(かないし社):造船産業、自動車産業、航空機産業を束ねる巨大な会社。日明リ国の軍艦、軍用車両、軍用航空機を研究開発している。


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