悪戯なふたり
僕はくぁ、と欠伸をして屋敷の中を歩き回っていた。
ただ散歩している?
まさか。
僕はニヤリと笑う。
これでも僕は警戒してトラップに引っかからないように歩いているのだ。
そう、あの子のしかけたトラップに…。
「……あぅ!」
気づいたトラップに僕はさっとかわして、後ろから飛んできて現れた少女のおでこに早業でデコピンしてやる。
「上出来。全然罠なんてわかんなかったな。」
「嘘つきだ!じゃなきゃ全部避けるわけない!」
赤髪を2つに下にくくりおさげ、緑色の大きな瞳、そして背中から生える大きなコウモリの翼に口元から覗く牙。
彼女、ドールは立派な吸血鬼の女の子。
「だってほら、僕にはこれがあるから。」
右手でくいっと上にあげると、隠れていた罠がごつ、とどこからか音がした。
僕の重力魔法。
「はぁ!?ノーラ、それずるだよ!」
ノーラ、僕の名前だ。
僕の髪色は灰色で、目の色はおつき様の色。
そして生えるのは猫耳にしっぽ。
そう、僕は化け猫だ。
しっぽにはお気に入りの鈴をつけている。
首に鈴なんて、飼われてるみたいでやでしょ?
「ずるかなぁ?重力魔法は僕意外使えないから大丈夫だよ。」
「……血ぃ吸っていい?」
「まってやめてごめん僕が悪かった。」
レラ様の屋敷にボク達は住んでいる。
そう、人になりたいから。
というのも拾われたようなものだ。
ドールはよく分からないが、どこからか逃げてきたのをレラ様が保護してあげたらしくそのまま居候させてくれたようだ。
僕は食べ物もろくに食べず死にかけで倒れていたところを助けてもらった。
昔は誰かの飼い猫だったのだけれど、とうの昔に忘れてしまった。
飼い主が誰だったのか、どうしてあんなに死にかけだったのかはほんとうに覚えていないのだ。
僕とドールは、この屋敷の者達にイタズラを仕掛けるイタズラコンビである。
そう、僕達2人が集まると屋敷の中はだいたいイタズラを誰かに仕掛けられている。
だって好きなのだ。
イタズラが。
「ねぇねえねえ、誰にイタズラする?」
「おっいいねぇ!うふふふふふ。」
お互いニヤリと意地の悪い笑顔を浮かべて見つめ合う。
この瞬間が楽しかったりする。
そして、一番待ち望むのはイタズラが成功した瞬間である。
「じゃあ……シン兄ちゃんにする?」
「おっ?いいねぇ!ついでにギラもやっとく?」
2人で悪い笑みがニヤニヤと出てくる。
性格が悪い?
まさか!
娯楽のひとつではあるが人を虐めて楽しむような下劣なものではない。
可愛い可愛いお遊びのようなものだし、本気で相手が嫌がればすぐにやめる。
僕達はちゃあんと限度の知った悪戯を皆に仕掛けるのである。
「よぉっし!張り切っちゃうぞー!血が飲みたくなるなぁー!!」
「張り切るのはいいけど僕の血は飲まないでね!!」
はっきり言っておけば大丈夫だろう!
よし。
悪戯作戦会議開始だ……!!